実千代鍼灸院TOP > Michiyo Cafe(第2回:突発性難聴)
■司:副島さんの突発性の難聴っていうのを東洋医学的にはどう考えるんですか?
■実:まず、(東洋医学では)難聴は耳聾(じろう)で、耳鳴りは、耳鳴(じめい)って言います。耳鳴りのひどいのが耳聾で、耳聾の軽いのが耳鳴りという風に書かれてます。だから、それを別々じゃなく、まぁ一緒に考えましょうってことで一応、本の中には「耳聾・耳鳴」っていう風に言われてます。(※)その原因となるようなことは大きく10個くらいあります。詳しいことは置いといて、大事なことはまず、虚か実かをつかむ事です。治り方が違いますので。
■副:そうなんですね。
■実:副島さんの様に、突然起こって症状が激しいのは、実型です。実型のものは、風(注:1)・熱(注:2)・湿(注:3)っていう、3つの邪が関わってるんじゃないかっていうふうに言われてます。何となく耳鳴りしてきてずーっと長く続いてる慢性的なものは虚が大きく関与します。実型でも、何処かに弱りが有るから起こるんですが、相対的に何か過剰な邪が関与してるのが実型です。
■副:私実型だったんですね。
■実:勿論(笑)そうですね。東洋医学では実証の方が圧倒的に治りやすい。虚証は治りにくいですね。だからうちにもたくさん耳鳴りの人が来られてますけど、年齢いった方の耳鳴りはちょっと治りにくいですね。師匠が、酒飲みの耳鳴りで、ある程度年齢いった人、これはすっごい治しにくいぞということを前から言われてましたが、確かに治りにくいです。
■副:ふ~ん~。そうなんですね。
■実:だからこの突然なったもの。経過的には一ヶ月?
■副:2か月弱くらいだったと思います。
■実:うん、そのぐらいなら。ま、ちょっと経っちゃってるけど、西洋医学的には約2週間限界?ですか。
■副:はい。
■実:他にツボとか舌とか色々みて判断しますが、突発性難聴って言われてるものは鍼では、どちらかと言えば治しやすいですね。
■副:そうなんですね~
■実:ところで、西洋医学的にはその慢性的な難聴っていうのは同じ治療をするのですか?
■副:いいえ、多分ステロイドはそんなに使わないと思うし、まぁ内服がメインになってくるでしょうね。耳の周りの血流を良くしたり、あとビタミン剤みたいな神経の伝達を良くするとか、そういう方がメインになってきます。だからと言ってそれはスッキリ治っていくかというと、何て言うんですか…難聴とか耳鳴りって年齢のものだからっていう言葉でちょっとくくられてしまうことが多くて。
■実:うん、確かに。
■副:ま、仕方がないんじゃないという部分もありますよね。
■実:年齢的なものは、「腎の臓」(注:4)が大きく関わってきます。腎の臓が弱るってことは老化の一つなので、まぁ確かに難しいと言えば難しいのは東洋医学でもそうなんですけど。でも根気良くすればかなりマシにはなりますね。
■副:そうなんですね。
■実:だから、若くて突然っていうのは腎の臓というよりも、もっと違う部分、「肝の臓」(注:5)とかね。そういう肝気の高ぶり過ぎなどがメインになってくる場合が多いでしょうね。あるいはさっきの邪で言ったら、熱邪と風邪(ふうじゃ)とか。
■副:肝の臓なんですね。
■司:副島さんのその症状は、東洋医学的見解では、実型だということですね。 でも、実際は疲れておられたんですよね?
■副:疲れてるのがね、もうね、何だろう…
■実:分からないでしょう。実はその疲れこそ大敵。師匠が常に言われてます。
■副:きっと夜勤もしてたので疲れてたとは思うんですけど、ちょっと麻痺してましたね、はい。
■実:突然の激しい症状は、結構、急激に怒ったりショックな事があった後に起こる場合が多いんですが、疲れてるのが当たり前になって気づかないっていう人も本当に多いですね。
■副:うん、気づいて無かったですね。
■実:そういう人の、体表観察したり舌を診るとね、あぁ…。っていうね。
■副:あぁ…って、先生どんなんなんですか(笑)
■実:もう気血の滞り過ぎが慢性化してるんです。耳鳴り慢性化じゃなくて、疲労困憊が当たり前になってしまってね、気血の流れが悪くなってるのが長く続いてる状態かな。それは 気滞や瘀血(おけつ)(注:6)っていうんですが。出てましたね。色んなところに。特に舌に瘀血の所見が。
■副:ほぉ~(笑)
■実:肝気が高ぶると、舌の先に赤い点々が出来るんですが、赤じゃなくてもう黒点(笑)。舌自体も暗い紫になってたし…所謂、うっ血状態です。これはよっぽど長きにわたって神経を使われてるんだなぁって思いましたね。
■副:はい。その通りで(笑)あの、先生にね、体表観察して頂いたときに、「いや~、これ、ここの鍼灸院で三本の指に入る悪さっ!」って言われて(笑)。
■実:あっはっはっ(笑)。 瘀血の度合いがね。
■副:「こんな症状になるのも当然よこの身体は」って言われたんですよ。
■実:そんな事言った?(笑)。
■副:で、私は自分はまぁまぁ疲れてはいても基本健康だと思ってたんで、え?そうなの?って(笑)。
■実:あなたは根性があり過ぎて我慢強過ぎるから…気が停滞し易いのでしょうね。
■副:はい。そうですね。
■実:責任感だけで身体を無視しながら、気合いだけで働いてた状態。それがもうピークに達してやっと身体に出てきてもらって、ある面良かったかなって思いますよ。
■副:そうです。それは思います。多分なってなかったらもっと重い何か病気になってたんじゃないかなと感じます。
※・・・参考文献『症状による中医診断と治療 下巻』
注1)風邪:自然界の「風」と似ており、発病と消退が速い事が特徴。
注2)熱邪:勢いが激しく、(体内の)水分を蒸発させる邪。
注3)湿邪:ジメジメして除去しにくく停滞しやすい邪。
注4)腎の臓:腎臓を含む腎の機能で、発育・成長・生殖・水分代謝になどに関わる臓。
注5)肝の臓:肝臓を含む肝の機能の事で、気血をめぐらせる大元、情緒活動、目・涙などに関する。
注6)瘀血:気血が滞ってできる病理産物。
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