「日々の心いろいろ」より (初雁)
鍼灸師の治療の武器は「手掌」です。
検査機器は有りませんので、患者さんのツボに手掌を接触させて診断していきます。
よく治す術者の手掌は本当に温かくてホワンホワンしてますね。もっと触っていて(笑)と思わせる手掌です。私の師匠も素晴らしい掌です。
北辰会方式は体表観察に重きを置いてますので尚の事、手掌大切です。
先日の日曜日は朝から夕方まで体表観察の勉強会でした。
ベテランの先生方とお互いに体表観察をしましたが、体表を手掌で触られてる間にツボがドンドン変化して顔色は良くなっていきます。
鍼をする前に様々なアンバランスが整ってしまう事が多々あります。
私もベテランの先生に掌を当てて頂いただけで下半身がポカポカ。驚く程に。
整体に触れる事で気の交流がダイナミックに起こりますが、どんな気持ちで肌に触れるかが問われます。
その心持ち次第でドンドン優しい手掌になりますね。いい手掌を作りたいです。
「日々の心いろいろ」より (ギンバイ花)
当然ながら、この様な仕事に携わっていると、「病」について考える事が多いです。
中村雄二郎さんが著書『臨床の知とは何か』の中で、トマス・マンの『魔の山』を引用されてこんなお話をされてます。
「魔の山」とはスイスの高原にある結核療養所の事で、青年ハンスが従兄弟のお見舞いに訪れた際、彼も結核になり入院生活を送るようになります。
ところがハンスは、病気の世界に魅せられてしまいます。これまで平凡で健康な市民として生きてきた彼でしたが、病による解放感を味わったのです。
作中人物の一人は、《人間の尊厳性と高貴性は精神に、病気にあるのであって、一言でいうと、人間は病気であればあるほど人間であるのである》と引用されてます。
中々示唆に富んだお話です。
バランスが崩れたら病が発症する訳ですが、もっと根底の無意識のところでは、自ら望んで病になり、自分を解放して本来の自我に目覚めたり、
時には病によって家族全体の心や魂の問題を解決に導いたりと、
病と言っても、中村雄二郎さんが言われてるように、「深い生命の目覚め」である場合があります。
この仕事の奥深さを考えさせられます。
「日々の心いろいろ」より(ろうばい)
昨日、私の大親友のご主人の訃報を聞き急遽上京しました。癌末期ですと言われ一年半、最期まで自宅でご家族と共に過ごされました。
末期癌の患者さんを24時間毎日診る事の御辛労は計り知れない程大きいです。
この大変さ経験しないと分かりません。
亡くなる直前まで家族と会話もでき、数日前までおトイレも家族に支えられながらも行け、浮腫みも痛みもなく、驚く程の生命力でした。
紹介させて頂いた関東支部支部長の尾崎真哉先生に心から感謝されてました。鍼のお陰で天寿を全うさせてもらったと何度も御礼を言われてました。
というのも、毎週くる訪問医の言葉が本当に残酷この上なく、友人もご主人も呆れ返ってた中での闘病でしたので。。。
私も以前その医者に会った事がありますが…居るだけで暗くなる人(笑)でしたね。
誰もが経験する人生の最期…生老病死ですから病の次に死は必然です。人生の一大事に関わる医者の存在は限りなく大きいです。
尾崎先生は、このご家族にしっかり寄り添って真心込めて鍼をして下さいました。この当たり前の様な事が出来ない現実が多々あります。改めて尾崎先生の鍼灸に対する真摯な魂に合掌する思いです。
ご主人若々しく晴れやかな相で微笑んでおられました。病と闘い切った見事なお顔でした。
ご家族をこれから益々見守ってあげて下さいね。約束。
「日々の心いろいろ」より (胡蝶蘭)
患者さんはじめ皆さん何らかのストレスを抱えて生きてます。
適度なストレスは成長の為に必要ですが、過剰ストレスはバランスを崩して様々な病を引き起こしますね。
今は亡き、免疫学大家の安保徹先生は、「ストレスで起こる病気、特に心の悩みで起こる病気の特徴として、
その人の性格ゆえにストレスを心の深層(無意識の世界)に閉じ込めてしまうために発症することが多い」と言われています。
よく患者さんの中にも、精神が安定したら体痛が起こるようになり、またその逆もみられるケースが多々あります。そんな場合は、痛みを徐々にとっていかなければいけません。長期戦も大切です。
また、安保先生は「ストレスというのは自分でも気づかないまま影響を及ぼすもので、自己申告できるほど意識化されていない場合が多い…」とも言われてます。そうなんでしょうね。
鍼で沈んだツボを浮かせて巡らせる事で、意識化されてないものが夢になって出てきたりする事も多いです。
体から心へ、心から魂へ働きかける鍼治療は本当に不思議で魅力的です。
「日々の心いろいろ」より (古金欄)
3月5日から半ば頃までは、24節気では「啓蟄」にあたります。
24節気をもう少し細かく分けると72候になります。1年を72等分したものですね。
72候によれば、3月5日から9日頃は、「蟄虫啓戸」「すごもり むし とをひらく」と読むそうです。読めない(笑)でも絵が浮かんできそうな可愛い表現ですね。
この72候は日本の気候風土に合わせて改定されたものですので、とてもマッチングしてますね。
土の中で冬ごもりしていた虫たちが、暖かい春の日差しの中で活動を始める頃という意味です。
患者さん達も症状が一気に出てます。高音の耳鳴り、フラつき、イライラ、胸痛、鼻炎、麦粒腫、咳嗽、頭痛等上半身の症状が圧倒的です。また胃腸の調子が悪くうつうつしてる人も多いです。
とにかく賑やかです。衛気も乱れてます。
乱れた気に振り回されてる人も多々おられます。
こんな時は落ち着いてゆったり行動することです。ガサツは事故の元。優雅に楽しく。無理かな(笑)心掛けて下さい。
「春には苦味を盛れ」という格言もありますので、ふきのとう、クレソン、せり等を食べるのもいいですよ。大好きなものばかり!