患者さんのベランダから
今迄、癌末期患者さんの治療に携わったり、接してきましたが、
初診時に、「私、あと3ヶ月の命なんです!」と元気な声で溌剌と言われた方は初めてです。
医者の宣告から、今、倍の6ヶ月が過ぎました。癌は、子宮癌、悪性肉腫、肺癌との事。
ホスピスから自宅に戻り、往診に行かせて頂いてます。
腹水は酷い状態ですが、痛みは無く、相変わらず声は元気、酸素吸入機も必要無くなり、自分の事は自分でされてます。
それにしても、彼女の持っている生命力…恐るべしです。鍼の効果もその生命力のせいでしょう。
いつ死んでもいいように洋服着て寝るのよ~と、楽しそうに笑われます。
患者さんから、死に方、生き様、さまざま教えられています。
豊岡への往診も間もなく10年目を迎えます。
毎月一回ですが、診療所としてお借りしているNさんには感謝してもしきれません。
豊岡は、盆地で、夏は暑く冬は寒いという土地。ですから、いわゆるリュウマチ症状の人が多いです。
先週、片手が赤く腫れ上がり、激痛で動かせない患者さんが、来院されました。
何と言ってもたった月一回の治療です。
さて、どうしよう。
皮内鍼を2箇所に使ってみました。皮内鍼は、文字通り、皮膚の表面に1ミリ程の鍼を刺したまま置いておくものです。
勿論、腫れている場所には使いません。炎症箇所を触ると悪化します。
次の日、「今日は昨日の痛みと腫れがうそのように引き 食事のしたくも出来ました!」と連絡がありました。
先代が昔よく使っていましたが、今日は祥月命日。懐かしいですね。
僧帽弁狭窄症、肺気腫、腰椎分離症、胃潰瘍、副鼻腔炎、前立腺肥大…たくさん病名の付いた患者さん。
この患者さんは、コツコツ10年前から鍼を受けて下さっています。
昨年言われた前立腺肥大も、手術を拒否して導尿にしましたが、今では導尿も不要に。
先日、お医者さんに、「あれ、不思議だなぁ。肥大が小さくなってるぞ~」といわれたらしく。奥様が喜んで報告下さいました。肺気腫も酸素無しです。
病名が何であれ、東洋医学では、整体の「ひずみ」を探っていきます。病をバラバラに考えません。
整体のひずみは、全てツボが教えてくれます。ツボは臓腑とも繋がってますので、臓腑の調整も合わせて出来るのです。
繋がってま~す。全てが。
帰りに、親御さんが、「先生、(子どもは)どうですか?」と聞かれますが、
同じ言葉でも、そこに含まれるニュアンスは微妙で、「先生、いつ治るんですか?」と、やや人任せに聞こえる事があります。
そういった「先生どうですか?」には、「まだまだかかります」とお応えしています。
子どもと自分は、根底で繋がってる事に気付いて欲しいです。どんな病も、単独では発症しません。
特にデリケートで純粋な子どもは、家庭や社会の影響大でしょう。
子どもは、最善の方に向かわすために、色々な姿で「何か」を教えてくれてます。
昨日は、久々の研修でした。師匠はホントに凄い臨床家です。いつもいつも。
人間をキャッチする達人です。人の身体は勿論、人の無意識層の魂までも⁇
魂と言えば怪しく聞こえますが、意識層を心とすれば、無意識層は魂と表現できますし、
東洋医学での「気」という概念で表現しきれないのは「魂」と言いたくなります。
「魂」は、もっとダイナミックな、もっと根底で繋がっているもの…でしょう。
師匠は、身体から魂までも動かせるとしたら、ありのままの人間が映ってるからでしょうか。魂と魂の共鳴でしょうか。
「人間を信じる力」の成せる技。そう感じました。