鍼灸のバイブル「素問」の上古天真論第一に「恬淡虚無(てんたんきょむ)」という言葉が出てきます。心がさっぱりしていて物事に対する執着が無いという意味です。
この様な精神の人は、心が安らかで病気をしないと昔から言われています。
何千年も前から、心と身体の問題に焦点を当てた大切な言葉です。
ところで、鍼を持つ人も「恬淡虚無」であれば、鍼の力をより引き出す事ができるのではと思います。
以前師匠から、鍼を刺す事と自分の生き様とは同じなんだ、と言われた事があります。
今、その言葉の意味が少し分かるようになってきました。
こちらが、どの様な心持ちで一本の鍼を持つのかこそ問うべきです。心持ちとは、その人の生き方そのものですから正直に出てしまいます。
微塵の疑いも迷いも無く、私心や執着といった気負いも無く持ってこそ…鍼は信じられないような効果を発揮してくれます。
その上、患者さんも鍼で治すと腹を決めて下されば、実際、奇跡のような事がおきるのです。
立場は違いますが、臨床心理士の河合隼雄先生もよく、心を動かさず待っていれば奇跡が起こって治癒していくと言われてます。
恬淡虚無の鏡に照らして、自分を映し出し、心の汚れを日々磨いていきたいです。