「鍼は魂に響く」とは尊敬する師の言葉。
何という素晴らしい一言か。
今連載してくださっている産経関西の「蓮風の玉手箱」では、九州大学大学院医学研究院教授の外先生との対談が掲載されている。
素晴らしい内容、一言一言に重みを感じる。
ひとりでも多くの人に読んで頂きたい。
今月18日付けには、前立腺癌から骨転移した患者さんの激痛を取られた事が紹介されてた。
実は師の所に研修に行かせて頂いた時、お会いした患者さんだった。
たまたま、その患者さんとブースで2人になった時、彼は私に忘れられない一言を言ってくださった。
「鍼一本で痛みがなくなったんですよ。信じられますか。」と。あの時の声は今も耳から離れない。
歓喜と優しさが魂(心の深い部分)から出たとしか言いようのない一言だった。
師匠が鍼を通じて患者さんの魂の領域まで動かされたのだと感じた瞬間だった。
外先生は西洋医、麻酔・蘇生学分野の第一人者でいらっしゃる。そんな先生が、東洋医学の真髄を極めておられる我が師匠の言葉に唸っておられる。
御二人の対談に大いなる希望の光が見えて私の魂が震えた。
医療に携わる者が一番大切にしないといけない事は何か。
それは、相手の立場に立てるかどうかではないか。
今、癌末期の方の往診治療に行かせて頂いている。
9月から自宅に戻り現在に至るまで、見違える程お元気になられた。
真っ白だった髪と眉は黒くなり、顔色も良く、眼に光が出てきた。
「強い抗癌剤で一気に10年老けたんです」との奥様の言葉が「15年程若返りました」に変わった。
そんな中、訪問医は来る度に、病状をご夫婦に懇切丁寧に説明して帰る。病状をそのまま伝えるのが医者の仕事なのか!
医者の一言一言に生きる気力を失いかけるお二人。
容赦なく追い討ちをかける医者の言葉に怒りが湧いてくる。
私の鍼灸の師匠、藤本蓮風先生は今、ブログの中で「身体と心と魂」について書いて下さっている。
「心」、そしてもっと心の深い部分の「魂」の領域まで、身体はつながっている。
身体しか見ていない医者の何と増えたことか。
身体と心、魂はつながっているとはっきり自覚してこそ、患者さんの前に立つ資格があるのではないかと感じる。