先月6月28日に、鍼灸の師匠、藤本蓮風先生が鍼灸業界初のブログ本を出版された。タイトルは「鍼狂人の独り言」。(ホームページトップ画面に掲載)
銀文字のタイトル、表紙を飾る先生の凄みのある後ろ姿、そして黒のハードカバー。少々驚かれる方もおられるが、まさに先生は「鍼狂人」の名に誰よりもふさわしく、鍼が好きで好きでたまらない。
よく我々に「恋人を追いかけるようなものだぞ」と言われる。鍼の追求は楽しくて楽しくて仕方ないとの表現だ。
研修会に行くと、先生が日々のブログにどれほど精魂を注がれておられるかを目の当たりにする。
先生の情熱が、鍼のすごさを多くの人に知ってもらいたいとの思いが、溢れ出し、文字となったもの。だからこそ感動できるし、元気になれる。
ひとつひとつの文字に先生の大生命力を感じるのは私ひとりではないはず。ある哲人が、「シビレエイは自分がしびれているから人をしびれさす」と言われた通りだ。
鍼医14代目として生を受けられ、60万人を超す患者さんの治療に徹してこられた先生の言葉には真の説得力がある。
先生を代表とする鍼灸学術団体「北辰会」の理念には、東洋医学は真に医学であり、それは体と心そして魂の救済を目指すとある。魂の救済、決して大げさでは無く可能にできる。それ程の哲学性が東洋医学の中にあるからだ。
この本の帯に小さく書かれている「藤本蓮風の魂のつぶやき」の一文字は的を得ている。
ブログの中の最後の章の「道」。私が一番好きな章でもある。
そのはじめに「魂の救済」と題して、「・・・・(前略)怒り人、悲しみ人、落ち込み人。鍼を用いて身体の転化と魂浄化につなぐ。(略)・・・」とある。病をも形成してしまう自分でも気づいていない生命の深層に渦巻く業の嵐。しかし、先生はそのもっと奥にある清浄な世界を示し、気づかせてくださる。鍼灸を媒介として。
技術は勿論のこと、結句は、医療者の信念と人間を愛し信じる力を、患者さんから大丈夫かと、問われているのだと感じる。
「道」の章の写真に、毎週火曜日の勉強会のあと、先生と仲間と共に歩く散歩道が掲載されている。先生が撮られた私の大好きな写真の1枚だ。
生ある限り使命あるこの道を感謝と歓喜の生命で歩み続けていきたい。
縁ある患者さんのために、恩ある師のために、そして未来ある後進のために。
ひとりでも多くの人がこの「鍼狂人の独り言」を手に取られることを心から願って・・・・・。