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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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院長のブログ 実千代院長の最新ブログ

2011年6月27日(月)

Vol.72心筋梗塞と東洋医学

(患者さんの訴えと異常なしの診断)
先日、患者さんでもある友人から電話があり急遽自宅へ向かった。見ると81歳になる彼女のお父さんが横たわっている。物を言うのもしんどいらしい。その上お父さんは耳が遠く補聴器を付けておられた。ご本人から話は聞けない。

友人曰く、2週間前から、食事も入浴も殆ど出来ない程しんどく様子がおかしい、眠れずにドンドン痩せてきたとのこと。
数箇所の病院に連れて行き、血液検査、エコー、心電図、CTなど検査するも何処も異常はありませんと言われたらしい。最後に行った病院では、肺気腫かもしれないといわれ酸素吸入器を使用した。気管拡張の薬や眠剤も出され服用。それでも、苦しさはおさまらず、彼女の会社に何度も苦しい、しんどいと電話があるというのだ。

早速、お父さんに「どこが苦しいですか?」と尋ねたら、「ここ・・」と左胸をさすられた。心臓かなと思いつつ、それを確認するために、まず顔面診、脈診、舌診、重要穴を触った。完全に心筋梗塞を疑った。検査機器は私自身の五感だ。慎重に治療を施し寝ていただいた。

後に友人から、様々な病院の検査結果などを見せてもらった。異常なしどころか検査結果にもCPK値が異常に高く出ていた。これは、クレアチンフォスフォキナーゼというらしいが、心臓をはじめ骨格筋、平滑筋などの筋肉の中にある酵素で、筋肉を破壊していくらしい。いずれにしてもこの値が高いとまずは心筋梗塞を疑ってもいいとのこと。
しかし、心電図に出ない・・・・医者が迷うのも無理はないが、こんなに苦しんでいるのに異常なしで本当にいいのだろうか?
食生活を聞けば、油物大好き、お酒、タバコなど半世紀以上にわたる。そして奥さんの看護をしながら数ヶ月前に自宅を引越したという。日常生活に非常にストレスのかかっている。

(患者さんの笑顔)
往診して帰宅すると同時に友人から連絡があり、あれからお父さんの調子が良くなりお腹が空いたと今、食事をしていると驚いていた。ご飯2口しか食べれないと言っていたのに・・・
まだまだ油断大敵だが、鍼の効果恐るべしだ。

次の日、再度往診へ。横になっておられたお父さんが私に気づき飛び起きられた。
その行動、お顔の艶から気の充実を感じた。かなり調子が良くなっていると直感した。
実際、この日の気色(顏色)、脈、舌、ツボの状態、共に昨日より良くなっていた。
その上、治療が終わると、色んなお話をして下さった。今回の病気の事で6回も同じ検査をされて次に何が出てくるかすぐに分かったという話。昔仕事場で活躍し70歳を超えても残って欲しいと社長から頼られていた話。本当に嬉しそうに話してくださった。
この笑顔を見るために私は頑張っているのだと嬉しさが広がった。
お父さんは、帰りまた起き上がってくださり、手を振って笑顔で見送って下さった。

(四診(望・聞・問・切)合参による診断)
三回目の治療には、好きなお酒も飲み、ゲートボールに行けるまでに。
この事実を知れば、いかに北辰会の鍼灸治療が優れているか疑う余地は無い。

顏色を見て、脈、舌、ツボの状態を診る。数分もあれば出来る。実際に患者さんに触れて診断する事の重要さを声を大にして訴えたい。
この鍼の効果は、ただ師匠、藤本蓮風先生の教えのままにすればこその結果なのだ。
先生が何十年もかけて何十万人という患者さんの臨床と膨大な学問から編み出された北辰会の鍼灸方法。感謝しない日は一日もない。
検査結果のみではどうしても患者さんの訴えに応えることはできないと感じる。

2011年6月18日(土)

Vol.71「気」って何?パート②

東洋医学の「黄帝内経」では「七情」と「気の動き」について興味深いことが書かれてある。
七情とは人間の精神状態のことで、喜、怒、憂、思、悲、恐、驚の七つを指す。これらは、誰もが持っている感情で正常な状態では発病には至らない。
しかし、突然の激しい精神的なショックや、悩みなどが長期にわたると、それらは、生理活動で調節する範囲を超えてしまい病を引き起こす原因となってしまう。特にその悩みの解消方法をもたない人にとっては、益々悩みが深刻になり体に影響を与えることになる。

(「気」の動き)
気が全身をまんべんなくスムーズに流れていると気分は爽快といえる。
しかし、七情(精神)の乱れにより「気」の動きが偏れば、身体に不調が現れてしまう。

「怒り」が過ぎれば「気」は上昇する。気が上に偏る。先日の、怒った猫の毛が逆立つようなもので、カッとなって気が逆上するとも表現される。
怒りは「緊張」にも通じるため多忙過ぎて緩みがないことも同様に怒りに入る。

「恐れ」が過ぎれば「気」は下降する。気が下に偏る。地震などの恐怖で腰を抜かしたりするのは気が下降するためといえる。まさに恐ろしくて気が抜けると表現される。

「驚き」が過ぎれば「気」は乱れる。驚いて気が動転する、というように。

「悲しみ」が過ぎれば気は消える。悲しくて生きる気力が無くなった。と言うように、悲しむと抵抗力が無くなり、よく風邪を引いたりする。

「思い」が過ぎれば「気」は固まる。気が腹部などを中心に偏る傾向がある。気がふさぐ程考える、との表現が当てはまる。

「憂い」過ぎれば「気」は縮む。「気を揉む」の表現に通じる。

(怒り過ぎれば気は上がる)
では、それらがどのような病気を引き起こす原因となるのか、実際の症例で考えていきたい。
先日、患者さん宅へ往診にいった。ぎっくり腰で全く動けなくなり、おトイレに行くのもご主人に抱えられて2時間もかかるという重傷だった。きっかけは大きな机を持ち上げた時とのこと。
しかし、きっかけはそうでも、なぜそのように酷いぎっくり腰になってしまったのか。色々問診をしていくと、ぎっくり腰になる前、多忙の上、イライラすることが続いていた。つまり怒りの精神状態のまま生活していたのだ。
この患者さんは元来、腎の蔵が弱く(腎の蔵と腰は密接な関係がある)昔から腰痛持ちだった。
更に、この6月は北西から涼しい風が吹いているため足元が非常に冷えやすい状態にあった。
つまり、怒りで気が上へ上がり、足が冷えることによって熱が更に上に上昇する。体全体のバランスは、上に気が非常に傾いている状態となった。
その上、患者さんは、下にある腰が弱いため、腰に関係のある気(腎の気)が弱っている。上に気が偏り、下の気が不足する。つまり、上下のバランスが大きく崩れ、突然の腰痛になったと考える。

突然のぎっくり腰の患者さんに最近のイライラ度合いを問診すれば大概「怒り」「緊張」が過ぎている事が判明する。

つまり、簡単に言えば「酷い怒り(緊張)」+ 腎が弱い(腰弱い)=ぎっくり腰という方程式といえる。

その患者さんには、上に偏った気を下に下ろす治療ととに、下を温める治療を少し加えた。1回の治療で15分でおトイレに行けるようになった。

2011年6月15日(水)

Vol.70「気」って何?パート①

(「気」のつく言葉)
日本語には「気」の付く言葉が多数ある。「元気」「病気」「気楽」「気分」「気が短い(長い)」「勇気」「気が滅入る」「気が晴れる」「強気」「弱気」「やる気」「内気」「根気」など切りがないほど、心の状態に関する言葉が殆どを占める。
東洋医学で重要な概念、「気」の付く言葉を当たり前のように日常で使っていることに気づく。

(精神状態を表す「気」)
「病気」も実際、単なる気の病ではなく、性格や生活習慣の中から生まれる精神状態などが密接に関わっていると東洋医学では考える。
よって、体と心を切り離して東洋医学は成り立たない。
例えば、精神的ショックを受けると、胃に潰瘍が出来たり、嫌なことがあると下痢をしたり、ひどく緊張したら咳が出たり等々、人によって様々な症状がでる事からも推測できる。

患者さんに問診すると、それらの事が更に明らかになる。長年の解消できないストレス、突然のショックな出来事、多忙な仕事、ストレスから来る過食などから身体に不調をきたしている人がかなり多く見られる。

(「気」ってあるの?見えるの?)
「気」には実体が無い。陰陽でいえば陽に分類されるため軽く、変調をおこすと上昇し過ぎてしまう。よく足元が冷えるとか、頭がカッカする等と表現するように、熱は「陽」で気とともに上昇しやすく、冷は「陰」で気とともに下降しやすい。
身近な例でいえば、猫を怒らせたら、背中が山形に持ち上がり、毛が逆立つ。これを「気」が上がっていると表現する。
四つ足の百会というツボは、丁度背中の中央にあり、それは人間の頭のてっぺんにある百会に相当する。人間を怒らせても毛は逆立つことは無いが、よく見れば産毛などは実際立ってたりしている。また、怒ると目がつり上がったり、血走ったり、頭がピリピリしたり痒くなったりもする。
これらも「気」が「熱」とともに上がっている証拠であり、「気」が上がっているのが見える状態といえる。

「気」は現実に存在し、すべてのものを形づくっている。そして、誰もが気が張ってるな、気が抜けてるな、気が緩んでるな等と自分や人の気を大雑把ではあっても実際に感じて生きてるのである。
それを東洋医学では、気の有る無し、気の偏りなど気の状態を体表観察から察知して調えていく治療として確立した。

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