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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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院長のブログ 実千代院長の最新ブログ

2011年1月31日(月)

Vol.64師匠の鍼治療を受けて

(頻尿は冷えから?)
先日、奈良にある鍼灸の師匠の鍼を受けさせて頂いた。
治療を自ら受ける事が何よりの勉強になっている。とはいっても、先日の私の症状は、「頻尿」だった。何と20回もおトイレに行った日があった。自分でも驚く程の頻尿(残尿感無し、水分量普段通り)・・・・。

先生に正直に伝えると、手を口にあて、何とも嬉しそうな顏で笑われる。
まるで少年のような悪戯な顏だった。
東洋医学では一般に頻尿は腎虚と言って、老化現象のひとつ。
しかし、すぐに真顔になって「どこからこの頻尿がきてるか診てみよう」と言われた。いつもよりじっくりと脈を診られ、「右の尺位が弱いな」と先生。
右の尺位は腎臓の陽気に関する脈で、冷えが有るかどうかを確かめる時の判断のひとつにもなっている。
やはり、冷えたために頻尿になったのだと思った。

(上下のバランスの乱れ)
その後、背中(背候診)、腹部(腹診)、主要なツボ(切診)を診られ、ここだなと「天枢(てんすう)」というツボ(左側)に鍼をされた。そして、「最近、忙しかっただろう?」と聞かれた。
実際、頻尿が始まった週の直前、現在挑戦している通信教育の授業を朝から晩まで2日間、缶詰になって受講していた上、仕事もかなりハードになっていた。

私は、鍼を受けるとすぐ熟睡した。緊張がほぐれるからこそ眠れる。分かり易く例えれば、緊張によって身体の中に「交通渋滞」を引き起こし、気血の流れを悪くする。
その緊張を取ることで、渋滞を解消し気血の流れがスムーズになり身体全体のバランスがとれる。芯からリラックスできるから眠れるのだ。

この頻尿は、勿論、老化も否定できないが、多忙などストレスがかかり過ぎたため、肝気の上昇が過多になり(上実)、下部にある腎臓が弱る(下虚)という、上下のバランスが大きく乱れた姿だった。これを東洋医学では、上実下虚と表現する。(実際、腎(下)が弱っているから、余計に肝気が揚がる(上)という事も更年期辺りにはよく診られる)

(自分を許して)
天枢というツボには色々な意味があるが、先生の著書「経穴解説」の中には、「天枢はまさしく天の枢であって、上下を分ける中間であります。―略― 天枢は魂魄の宿るところ、肝の大きく関わる場所であることから、ここを下手に触ると悪化すると言う事を申し上げます。」とも言われている。

治療の最後に、先生は「自分を許して気を緩める事も時には大事だよ」と言われた。今年はかなり気合が入ってダッシュで走っていただけに本当に驚いた。たった頻尿と言っただけで、身体を見れば色々見抜かれてしまう本当にすごい師匠だ。感謝しかない。更に、治療が終わって再度先生の治療見学をさせていただいた時、先生は私の前を通り過ぎ、小声で「今日、便が少し緩むからな」と言われた。
鍼で身体の交通渋滞をスムーズにして頂いたのだから当然だが、日々バタバタして最近便秘だっただけに驚いた。
先生の言葉とおり、頻尿もピタッと治まった。

(人間を丸ごと見つめる医学)
私は、先生がよく言われる「この医学は人間を丸ごと診るんだよ」との言葉が大好きだ。
痛い部分だけではなく、その人の生活習慣、その習慣を引き起こしている性格、その性格を形成した生い立ち、更には、祖父母、それ以上にまでさかのぼった過去までも含む因果、をも見つめ(なかなか凡人には出来ない)、現在の病気の原因や未来に起こるだろう病まで予測してしまう。
それが、藤本蓮風先生率いる北辰会の東洋医学の素晴らしいところだ。

2011年1月5日(水)

Vol.63「人の善性に触れて」

(感動のピアノ演奏)
お正月、海外から帰国した友人と一緒に聞いたピアノ演奏が忘れられない。
曲目は昨年大ヒットした「ありがとう」を始め、3、4曲。
その上、演奏して下さった人は全く無名の20代の男性だった。彼は、昨年、関西から東京に転勤し、現在、仕事上音楽とは無縁のようだった。
ピアノが始まった瞬間、なんて美しく、逞しい音色なのかと本当に驚いた。友人も感動で涙が止まらない様子だった。
見ると、演奏している彼も涙を流しながら演奏している。
美しい心が幾重にも広がり温かい空気が会場一杯に広がった。心の美しさが音色となって、こんなに人の心に響くものかと驚いた。私の友人もその彼も、きっと人には言えないような苦労を日々重ねているからこそ、響き合ったのだと胸が熱くなった。
心の美しさが、人の心の中の善性を引き出す。
医療の原点を感じた。

(人間を信じて)
私の師匠も鍼を持つときの心得を常に指導される。
あまりにも正直にこちらの心根が鍼を通じて伝わってしまうからだ。本当に恐いほどだ。
ましてや、ほとんど1本の鍼で勝負する北辰会の治療においては尚のこと。
理論・技術は勿論大事、しかし最も重要な事は、こちらの「心持ち」―心根なのかもしれない。

藤本蓮風先生は、著書「弁釈鍼道秘訣集」の中で、「我々にとって最も大事なことは、常に自性が輝き出るように訓練する事である。」―その自性を「本来的自我」と呼ばれている。
更に、著書の中で、「本来的自我に従う事は、自分と一切万物を生かす道である。常に本来的自我が輝き出るように祈ろう。」と述べられている。
どんな人の生命の中にも、輝く自性―善性がある。
それをいかに引き出すか。
自分の善性―本来的自我が真に輝いてこそ成せる業だ。

(患者さんから学ぶ)
感謝にたえない事に、毎日、患者さんが感動を与えて下さっている。玄関のドアが開き、患者さんのお顔を見た瞬間、どのような身体の状態なのか、かなり察知できる。
人間は本当に正直なものだと感じる。
全身から発する「気」、その眼の輝きから、心身の状態が如実に現れるからだ。
毎日の患者さんの喜びの声、安心されたお顔を見て、この鍼の素晴らしさをもっと多くの悩める人に伝えたい思いに駆られる。今年は、昨年にも増して、患者さんの承諾のもと、多くの症例を出来る限り平易な言葉で書き、アップしていく事を新年の決意としたい。

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