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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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院長のブログ 実千代院長の最新ブログ

2010年3月1日(月)

Vol.51女子フィギュアと精神のバネ

(同じ人間)
冬季五輪の花形、日本をはじめ世界中の人々を魅了した女子フィギュアスケートの浅田真央とキムヨナ両選手。皆が二人の姿に両手を合わせ、我が事のように成功を祈り胸を高鳴らせた。
キム選手が浅田選手のすごさを認識し、「なぜ真央と同じ年に生まれてきたのか」と語っているほど、二人の縁は深く強い。
19歳とは思えない精神力と身体能力の高さは両選手とも天晴れだ。

私は、特に表彰式台でお互いを称えあい抱擁している姿に感動した。
演技の時以上に二人の顔が輝いて見えた。
キムヨナ選手の自叙伝に、この輝きの理由の一端を見つけた。
彼女は「よい競技が出来た時と、そうでない時の気持ちは誰より自分自身が知っている。人々は私たちにライバルという名を付けたが、私たちは同じフィギュアスケーターという同じ道を進む人間である」と述べている。
キム選手は誰より浅田選手の気持ちを理解し、その気持ちを全身全霊で抱擁したからこそ19歳とは思えない心の豊かさが輝きとなって表れたのだと感じた。
「同じ人間」・・・なんて謙虚で優しさが溢れた言葉だろう。

(精神のバネ)
我々も医療を施す側、そして、患者さんはそれを受ける側。
ともすれば、弱者に対して何かを施すというイメージだが、しかし、実際医療現場に立っていると患者さんは弱者どころか、その逞しい精神に尊敬の念をもって手を合わせたくなる事のほうが遥かに多い。

調子のいい時は、誰もが自分に自信と希望を持って進んでいける。
しかし、思っても見なかった悪いこと(病気も含めて)に遭遇したとき、自信と希望を失わずにいけるか否か。
ここに私は“精神のバネ”とも言うべき、その強弱の大切さを感じる。
倒れてもまた立ち上がっていける柔軟性のあるバネ。
身体は蝕まれていても、精神のバネがしっかりしている人は、病にさえ意味を見出し、同じ病で悩んでいる人の為にも頑張ろう、と希望の方向へ立ち上がっていける。
精神のバネが伸びきってしまっては、もうだめだ、もう無理だ、と立ち上がる意欲が出てこない。

(最年長の患者さん)
今月で101歳になる患者さんのSさん。先月転倒して左手首と左大腿骨を骨折され、現在リハビリ真っ只中だ。
車椅子に座って黙々と食事をされていたSさんに「美味しいですか?」と声をかけた。
「美味しいですよ」とにっこり。甘えも弱気も入り込む隙間の無いその言葉に、病院の食事ではもの足りないだろうと持参したお寿司を思わず引っ込めてしまった。
「お元気そうですね!」と言うと、「ありがとう、ありがとう、空元気よ~」かっかっかっと大笑。
「人には絶対迷惑をかけたくない、元気に退院する」との強い心を短い言葉から感じた。
101歳でもSさんは精神のバネがしっかりしている。
まったく愚痴が無いのだ。

(励ましは万の力)
では、そんな精神のバネを強くするにはどうすればいいのか?
患者さんから学んだ私の浅い考えでは、津波のように押し寄せる苦しいこと、つらいことを乗り越えた分、精神のバネは強くなるのでは・・・
「鉄(くろがね)は鍛え打てば剣(つるぎ)となる」との名言の如く。

そしてその波を乗り越えるために、絶対といっていいほど「励まし」が必要だと感じる。
励ましは、相手が病という大波に立ち向かっている姿を称え、尊敬していく精神からほとばしる言葉だとも感じる。
医療現場に立させてもらう人間は、病と闘う患者さんを尊敬し、励ましを送っていける存在であってこそ、「先生」と呼ばれるにふさわしいのかもしれない。

ともあれ、浅田選手は、「銀は次へのステップ!」と言っていた。
まさに強靭な精神のバネをもって既に大きく飛翔している一言だと感動を持って聞いた。

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