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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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2009年11月26日(木)

Vol.47母の命日に思う

(荘厳な夕日)
11月26日、母が亡くなってまる5年。褒められた記憶がほとんど無い程厳しい母だったが、最期に「あなたはどんな患者さんを診るのか楽しみね」「お母さん以上の名医になれるよ」と最大の励ましをくれた。

丁度、母を見送った後、17階の自宅から見た六甲山に沈む夕日は、今も尚、目に焼きついてはなれない。
この日の夕日は、母の鍼灸師50年の人生の総決算とも言うべき大勝利の姿をほめたたえてくれているかのように、厳かであまりにも雄大なものだった。
生前、常に「人は生きたようにしか死ねない」と語っていた母。
夕日と母の人生が重なり、母の見事な最期に拍手を送らずにはいられなかった。

(死は一時の休息)
母亡き後も、何人もの人の最期を見させていただいた。皆、夕日が沈むように今世の使命を終え、人生の幕を閉じ休息に入っていかれる。
何のための休息か。
それは次の生のためにエネルギーを充電しているのだと聞いたことがある。
次の生を今度は、はつらつと昇りゆく朝日の如く、若々しく力強く出発するために。

(科学が突き止めた真実)
先日、某新聞に、「最初は1つだった生物の命がいくつもの枝に別れ連綿と繋がって今に至る。だが、不老不死の生物はない。それが科学が突き止めたひとつの真実です」と分子生物学者の福岡先生の言葉があった。「科学は地球に壮大な輪廻があることも証明したのです」と。
全てが関わり合いながら、互いに助けをかりながら、今存在するこの事実。
そしてその存在は、必ず限りがあって生死生死を繰り返している。
なんというスケールの大きさか。
誰が欠けても何が欠けても今の存在は無い。
この考え方こそが、東洋思想の真骨頂だ。それを科学が証明してくれているとは。

(絶妙なるバランス)
人間の身体も知れば知るほど突き止めれば突き止めるほど、その絶妙なるバランスの見事さに誰もが畏敬の念を払わずにはおられないのではないか。
「薬の大製造工場は実は自分自身の中にある」と言われた著名な方がおられたが、本当にその通りだと実感する。いわゆる自然治癒力だ。
鍼はその力を最大限に引き出す手助けをする優れものだ。

先日も脳梗塞などで片麻痺の人のリハビリをする施設が紹介されていた。
楽しいことをする、自力を出す、そのためにバリアフリーではなく、バリア有りで廊下にはバラバラの高さのたんすを並べたり、頭にあたりそうなくらいの札をかけておいたり工夫満載。考えられないほどの成果を挙げていた。
楽しんで取り組める自発能動がいかに大切か。
自発でなければ、薬にばかり頼っていたら本当の自然治癒力が働かなくなってしまう。

(宇宙のリズム=慈悲の心)
ともかくも、科学の進歩は、不思議にも東洋医学の素晴らしさを引き出してくれているように感じてならない。
実際、世界的にも著名な生物学者であられる村上和雄先生は、遺伝子を研究すればするほどその驚くべき精妙さに驚嘆され、一体何が、誰が、このような仕組みを人間に与えたのかを考えざるを得ないと言われている。その不思議を先生は、「サムシンググレート」と名づけられた。
私の未熟な考えでは、その「サムシンググレート」は仏法の言葉で表現すれば「慈悲」に通じるのではないかと思う。
人を慈しみ、人を想い悲しむ心。この慈悲こそが宇宙そのもの、宇宙のリズムではないか。
大きな事を大げさに語るつもりは無いが、本来の人間の持つ慈悲の精神にのっとってこそ、より良き生き方が出来、それが荘厳な夕日の如く自分の人生の幕を閉じることになり、次の出発に繋がっていくのだと感じる。

母の命日は、私にいろいろと示唆を与えてくれる。只感謝しかない。

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