(喜びの報告)
先日6月10日に嬉しい報告があった。
43歳で初産。普通分娩で陣痛が始まってから45分の安産だったようで、主治医の先生も驚かれていたようだ。
鍼のおかげだと本当に喜ばれていたとの事。
彼女は、古い患者さんで主訴は不妊症ではなかったが、卵巣膿腫や子宮内膜症を患っておられ中々妊娠が難しい状態だったので喜びもひとしおだ。
今年、出生率が3年連続上昇しているとの報告に合せてか、我が鍼灸院も出産ラッシュ?で嬉しい限りだ。
つい最近では、ちょうど1年前不妊症で来院された41歳の患者さんが初妊娠された。
以前、7~8回ほど不妊治療での出産失敗を経験。
その後、黙々と1年間週1回の鍼灸治療を続けられての今回の朗報だ。淡々としている彼女が「鍼って本当にすごい!」と感動されていた。私にとっても、何よりうれしい一言だ。
今が一番大事な時なので慎重に治療を続けている。
また、3年ほど前、妊娠9ヶ月目で破水した折、B群溶連菌がお腹の子供に感染して亡くなるという信じられないような辛い思いをされた患者さん。その後、何回も何回も人工授精にトライするも妊娠せず来院された。
一度不妊治療を止めて身体も心もバランスを整えましょうよ。と提案しながらも当然のことながら焦り、苛立ちが募っておられた。
しかし、意を決して「3ヶ月間だけでも鍼灸だけに専念して欲しい」と伝え、丁度治療に来られて4ヶ月目に妊娠し、今年10月には出産予定だ。どれ程共に喜んだことか。
10月赤ちゃんのお顔を見るまでは真剣勝負だ。
(東洋医学での不妊症)
東洋医学では、不妊のことを「不孕(ふよう)」と呼び、「妊娠適齢の女性が避妊を行わずに、結婚後3年以上を得ても妊娠しないことを指す」と定義している。
この不妊症については多くの文献があり、不妊の原因を大きく6つほどに分けているが、その原因は精神的なものも含めてかなり複雑になっている。
いずれにしても、「腎の機能の衰え」がバックにあることが明確にされている。
腎の機能とは、簡単に言うと、「先天の元気」といって父母の精を根本に生成される、生まれながらに持った生命力のこと。両親のこの「腎の機能」が衰えていると、先天的な疾患を持ったお子さんが生まれやすく、また、加齢などで「腎の機能」が衰えてくると、腰痛、骨・歯がもろくなる、白髪が増え髪につやが無くなる、尿に問題が出てくるなど、老化現象のような症状が出現し易くなる。
また、最近は男性の不妊も多く、ご主人も共に治療されている夫婦も少なくない。
(一条の希望の光を)
現在も、不妊治療で患者さんが様々な理由で来院されているが、最近の妊娠成功例は皆さんの大きな希望になることは間違いないと感じる。
しかし、それでも、今、妊娠していない人は「私だけが、出来ない・・・」と焦りが募るのが本音かもしれない。それほど、現代の大きな問題になっている不妊は、深刻で複雑な問題との闘いでもある。
不妊症だけでなく、様々な病の底には実は、複雑多岐にわたる人には言えないような精神の葛藤が潜んでいる場合が多い。
このお一人お一人の患者さんの心の中に、ほんの少しでいい希望の光を差し込んでいく事がどれほど重要かを日々実感している。
また、鍼灸には、気休めでない本当に希望を実感していただけるだけの効果が厳然とある。
私も、どれ程、患者さんからそのことを学ばせて頂いているか計り知れない。
(精神のバネを強く!)
とにかく病気になって一番怖いのは、精神までも蝕まれてしまうことだ。
大げさかもしれないが、病魔とは精神を破壊してしまう魔物ではないかと感じる。
重症であればある程、自分の精神の力を信じて、信じて、信じ抜いてほしい。
精神さえ破られなかったら、その人は病気になったことに大きな意味を見つけることができ、また、必ず同じ苦しみに悩む人の希望になることは間違いないと思うから。
同じ苦しみを味わった人にしか、その本当の苦しみは分からない。
精神が一旦は倒れそうになったとしても、倒れてもまた立ち上がる。
どんな問題も跳ね返すことの出来る、この精神の柔軟なバネを私も患者さんと共に鍛えていきたい。
そして私は鍼灸にはこの精神のバネを強くする力があると信じている。