(気温上昇とアレルギー)
この2月、一週間ごとに10℃以上の気温の変化があり、それに伴って、インフルエンザや風邪は勿論のこと、様々なアレルギー症状の患者さんが急増している。
花粉症、結膜炎をはじめ、目の回りが真っ赤にただれ、顔中の痒みを訴えてこられる。
東洋医学は、生活環境、食生活、精神状態など、環境と健康状態は切っても切れない関係にあるとし重視しているが、
中でも、季節や気候変化は大きく人体に影響を与えている事は間違いない。
(アレルギーと肝木)
東洋医学では、春に起こる上記のような、目、鼻を中心としたアレルギー症状は、
「肝木(かんもく)」という概念で説明している。
肝木とは、肝の性質が上へ上へと伸びて発散しようとする様を表現している。
春になって気温が高くなると一斉に草木が上へ上へ伸び始める。いわゆる「木の芽時」。
気温変化で自然界の気が上へ上がると、それに伴って、人間の肝の気も上へ上へと上昇する。
普段から多忙などで、ストレスの発散や、緊張を緩めたり出来ない人は、肝の気が過多となり、首から上へ気が昇っているところ、この春の肝木の時期と重なり、更に気が上へ上がるため頭部や顔面などの上部に多く症状が出る。
その上、2月は立春といってもまだまだ寒く、足が冷えることによって、更に肝木が高ぶり、その熱が、様々なアレルギー症状を益々悪化させることになる。
簡単に言えば、これが東洋医学で言うアレルギーの大本だ。
(アレルギーになる人、ならない人)
しかし、いくら多忙でもアレルギーを発症する人としない人がいるのはなぜ?
こちら側の体質にも問題があるのでは。
まず、アトピーや花粉症、喘息などは、皮膚、粘膜に関係が深い「肺の蔵」が関与している。
そして肝気の高ぶりは当然「肝の蔵」が関与。
また、肝の気が上へ上がることによって、下の「腎の蔵」が空虚になる。「腎の蔵」も関与している。
特にこの腎の蔵は、「腎水」と「肝木」という関係から非常に重要だ。
腎陰といって、腎の水分は、肝の木を育成、成長させるが、加齢や腎に弱りがある人などは、腎の水分不足となって肝の木を滋養できなくなる。
つまり、この腎の水分は、肝気の高ぶりを制御する作用があるので、腎水の不足は、肝の気を亢進させてしまう。
(自分でチェック)
東洋医学の言葉はなかなか難しいかもしれないので、アレルギーに特に関係する「肺の蔵」「肝の蔵」「腎の蔵」の弱りの有無をチェックして自分を知ろう。
1、やたらと最近イライラする。
2、舌の先が赤い。
3、舌の先に赤い点々がある。
4、頭に痒みやぴりぴり感がある(シャンプーしているのに)
5、ドライアイだ。
6、目がよく充血する。
7、口内炎が出来やすい。
8、顎関節症である。
9、便秘している。
10、偏食や過食傾向だ。(お菓子類、油もの、肉食が多い)
11、乾燥肌だ。
12、皮膚が弱くすぐかぶれる。
13、風邪を引きやすい。
14、足が冷える。
15、頻尿、夜間尿、尿漏れのいずれかがある。
16、腰がだるい。
17、貧血傾向だ。
18、殆ど運動しない。
以上の項目で、3分の1の6個以上○のある人は、アレルギー要注意信号と言っていいのでは。
乾布摩擦などで皮膚を鍛え(肺)、過緊張緩和のために散歩や運動をし(肝)、塩分や冷たいものの摂取を控える(腎)ようにしたい。
(肝の暴走)
今、大切な友人が全身のアトピーで苦しんでいる。
アトピーの背後には、どれ程の精神の葛藤があるか、またアトピーという病魔は絶え間ない痒みと不安を持って24時間苦しめてくる。
いくら想像しても本人にしか分からないことだと思う。
鍼灸の師は、このようなアレルギーやリュウマチなどの自己免疫疾患が発症するメカニズムの中心を、「肝の暴走」と表現されている。
(肝の機能=将軍の官)
東洋医学での「肝」とは肝臓を含む「肝の機能」を指す。
肝の機能は様々あるが、そのひとつは、「肝は将軍の官」といって、肝の臓の性質は非常に猛々しく、昔で言えば戦の要、指揮官なので、肝がしっかりしている人は、様々考えを巡らせ、物事に的確に対応していける、つまり今で言う「やり手」なのだ。
身体で言えば、肝の機能がしっかりしている人は、外敵と戦う能力に優れている。
つまり、西洋医学でいうところの免疫を直接支えているのが肝なのだ。
また、肝の臓は、のびのびしていることを非常に好むので、抑圧されたり、のびのび出来ないことがあるとイライラが募り、時には爆発するときもある。
よく言う「切れる」現象だ。
また、ストレスがかかっても、発散の上手な人は、肝の機能への影響はさほどないが、発散出来ずにいると、大きくバランスを崩してしまう。
(肝の機能=血を蔵する)
また肝の機能の二つ目は、「肝は血を蔵する」といって、血液を蓄えているところなので、イライラや、抑圧が激しくなると、肝の血が少なくなり様々身体に影響を及ぼす。
身近な例で言えば、眼瞼痙攣やこむら返り、また、ひどくなると頭が小刻みに震えたり、パーキンソンなど筋肉に関係する疾患を発症してしまう。
筋肉を正常に保つには、筋を潤す血液が必要なので、筋肉に関する疾病は、殆ど肝の臓が関わると見ていい。
私たちでも、過度に緊張したときなど原稿を持つ手が振えたりした経験があると思う。これは、一過性のものなので、病気とはいえないが、肝の高ぶりが、熱を生み、熱は血を蒸し、益々その熱が上昇して風となってこの様な震えの現象を引き起こすといわれている。
いずれにしても、肝を高ぶらせ過ぎると、様々な疾患が起こり他の臓腑に影響を与えてしまう。
(免疫錯乱)
この様に、ウイルス、細菌などの外邪や、からだ内部の邪気(過剰な気)に対して、常に肝の臓は抵抗しようと働いている。よって、この「将軍の官」がストレスなどに抑圧されて、異常に働いた時、免疫に錯乱が起きる。
そして、アトピー、膠原病、リュウマチなどの自己免疫疾患を発症させる。
西洋医学でも、これらの病は、本来は自分を守るはずの免疫が、異常に働いて自分を攻撃するほうにまわってしまうといわれている。
精神のバランスを崩すと、肝の臓は暴走しだす。それはアトピーを悪化させる。悪化すれば、ますます精神のバランスは崩れる。この悪循環を打ち砕くためにどうすればいいのか。
(自分を好きになる)
こんなに健気な自分を、誰よりも苦労している自分を、ボロボロでも負けていない自分を、負けそうになりながらも闘っている自分を、誰にも分かってもらえない自分を、何より一生懸命生きている自分を、どうかどうか好きになって、褒めてあげて欲しい。
一日一回、「私って本当によく頑張ってるわ~」「私だから耐えられる、さすがっ」どんな言葉でもいいから攻めずに褒めてほしい。
もし、それが自分で出来ないことがあっても、私が絶対治るとの希望を持っている限り何も心配しないでと伝えたい。
様々な理由で病気になって、日々、その病気と闘っている人を、友人を、私は心から尊敬している。
生涯、この尊敬の心を持って、友を苦しめる病と闘っていくことが私の変わらないスタンスである限り病は退散していくと確信している。