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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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院長のブログ 実千代院長の最新ブログ

2008年12月22日(月)

Vol.32健康の第一歩、咀嚼(そしゃく)

先日、前歯が1本抜けている患者さんにどうしたんですか?
と尋ねると歯槽膿漏で抜け落ちてしまったとの事。
野菜不足、油物や甘いもの、嗜好品の過食で身体に熱と湿をためていると、湿熱体質となり非常に歯槽膿漏や蓄膿症になり易くなる。
湿熱体質の人は「膿(うみ)」がつく病気にかかり易いので要注意。
また、この患者さんは胃潰瘍を患っている人なので特に歯は大事だ。
歯が揃っていないと噛み合わせが悪く更に胃に負担をかけてしまう。
その上、時間に追われ食事を楽しむ習慣が年々薄れていってる現代。
咀嚼(噛むこと)をせず数回で飲み込んでしまっているのでは?

(よく噛んで~)
過食傾向の患者さん(ストレス食い)に、「食べ過ぎないで」というと余計に食べたくなる人が多く、最近は「良く噛んで食べてくださいね」と言葉を変えた。
先日とても興味深い記事が某新聞に掲載されていた。
現代人が1回の食事でかむ回数は、戦前に比べて約6割も減っているらしい。
さかのぼって、弥生時代になると1回の食事で4000回も咀嚼している。
現代は500回以下だった。今は食べる量が多く咀嚼が少ない。

(唾液おそるべし~)
かむ回数が減ることにより大きな問題となるのが「唾液」の減少だ。
日本歯科大学教授の小林義典先生は、「唾液の機能」を下記のように説明している。
唾液は
・酵素で食べ物を消化する。
・歯の汚れを洗い流す。
・食道や胃の粘膜を保護する。
・歯のエナメル質保護や再石灰化を促進する。
・細菌の発育を抑える。
・免疫力を強化する。
・食物の発がん性を減らす。
・活性酸素の消去。
・成長を促すホルモンを分泌する。

歯の汚れの除去や粘膜の傷の修復、歯の補強、抗菌作用や免疫強化。また、ウイルスを直接攻撃してくれる免疫細胞を増やす作用もあると言われている。
発がん性物質も30秒間、唾液に浸されるだけで毒性がほとんど消えるとの事。
唾液にこんなに力があるなんて驚きだ。

このように実は、人間自身の中に様ざまな薬とも言うべき自然治癒力を備えている。
薬製造工場は実は自分の身体にあるというのが東洋医学の考え方だ。
人間は本来は自己防衛出来るように、完璧な形で(能力を含む)生まれてきているはずなのだから。

(糖尿病の予防だよ~)
血糖値を抑えるインスリンの分泌量も、多く噛む人の方が上昇が穏やかで、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)に優しいとの事。
インスリン分泌は年齢とともに衰えて、糖尿病の原因になるため、若いときからインスリンを節約する食事は糖尿病を予防し健康長寿につながると書かれてあった。
糖尿病も東洋医学で言えば、先ほどの歯槽膿漏や蓄膿と同様、体質は湿熱の人がかかりやすい。
どこまでいっても、過食、運動不足、ストレス過多は湿熱を身体にこもらせ多くの病気を作ってしまう。

(頭もよくなるよ~)
更に、噛むと大脳皮質の運動野が活性化され、全身の関節周辺の筋肉が働き、身体が固定されるとの事だ。
歩くことが可能な認知症高齢者のかたの「転倒頻度とかみ合わせの関係」を調べたら、
奥歯の無い人は年に2回以上の転倒が66%に対し、入れ歯でも歯があって噛める状態にすると22%に減少という結果だった。
かみ合わせが良ければ、転倒しそうになった時にふんばりが利き、バランスが保てるという。

ねずみの歯を抜くと学習や記憶能力が低下するという動物実験もされていて、ガムを噛むことで学生のテスト成績が向上したとの結果や、咀嚼力の低下は認知機能に影響を与えている可能性もあるといわれている。
硬いものを食べるほど血流量が多くなるらしい。

西洋医学、東洋医学関わらず医者任せでは本当の健康長寿は保てない。
中年近くなってくると尚のこと。
食べることが多いこの時期、まずは噛むことから習慣を付けていきたいものだ。

2008年12月4日(木)

Vol.31統合失調症

先月11月29日、私の2番目の兄が亡くなった。心不全だった。
半眼半口の柔和で精悍な素晴らしい相に、長兄と「今まで本当にありがとう!ご苦労様」と感謝の涙でお別れした。

小さい頃より不器用で繊細な神経を持っていた兄。
今まで一度も怒った顔を見たことがない。
自分の事をバカにする人にさえ笑顔を見せ、優しすぎる程の性格だった。そんな兄が20代前半、バイト先でのお金のトラブルで罪をなすりつけられてから引きこもるようになった。
昼と夜が逆転し、生活のリズムに狂いが生じ、眠剤や抗うつ剤などの服用を始めた。
だんだんと妄想などの症状が出てくるようになり、医者から「統合失調症」と診断された。

(120人にひとり)
この病気は数年前までは精神分裂病といわれていたが、差別的な要素もあり、様々な理由から2002年に統合失調症と英語訳が変更された。
症状は人により様々だが、一般的な症状は、幻覚や幻聴、妄想などの症状が起こり生活能力が失われる。
神経伝達物質のドーパミン過剰による事が原因のひとつとされているが、なぜそうなるのかは未だ解明されていない。
思春期から青年期に発症することが多く、現在120人に1人の割合で罹患するという多さだ。「統合失調症」と「うつ病」は、二大内因性精神病といわれているくらい、ほとんどの精神疾患の患者さんがこのどちらかを患っているのが現実だ。

(自己防衛)
また、精神医学のほうでは、胎児、幼児期に於ける遺伝子損傷が、脳の発達に影響し、成長するにしたがって器官機能に異常をきたし、ホルモンバランスが崩れて発症するのではとの見解も発表されている。
確かに何らかのバランスの崩れである事は間違いないだろうが、長年兄を見てきて、精神のバランスの大きな崩れを、幻聴、妄想の世界に入り込むことで、安定させようとしているのではないかと感じることが多かった。
人間は生きている限り自己防衛のために、本能的にバランスをとろうとしていると東洋医学では考えるからだ。
兄は幸い鍼灸治療で症状は軽く、ここ数年は幻覚、幻聴も殆ど無くなり、笑って平穏に過ごしていた。

(東洋医学的に)
私の鍼灸院にも幻聴、幻覚に悩む人や、躁うつ病のひとも多く来院されている。
純粋すぎて抵抗力が無く、自分に自信が持てず、自分を責めまくる挙句の果てに、精神疾患が発症するのではと患者さんを診ていて感じる。
心と身体を切り離しては考える事ができない様々な疾患。癌や心筋梗塞など身体に来なかったら、精神にくるのは必然だ。

精神的緊張が過度になれば、肝気が高ぶり、胃に熱をもって過食傾向になる。過食になればますます身体の内に熱をこもらせ、ひどくなると心(しん)の臓に熱を持つようになる。
心の蔵に熱を持てば、不眠、イライラ、落ち着かずざわざわする、などの状態が続く。
この悪循環が長年続き、薬漬けになることによって、完全に精神を自分自身で制御できなくなり暴走しだす。
今後ますます増加すると思われる疾患だ。

兄は、長年服用していた何十種類の薬により、心臓自体が弱りきっていた。
数年前から医者からいつ亡くなってもおかしくないと言われていた。
今年、脈は殆ど触れず、手足は氷のように冷たく、顔面も蒼白になっていた。
今度は薬で弱った心の蔵の陽気を高めるため、「陽池」「太白」というツボに兄と交代でお灸をすえて延命させた。

(感謝と尊敬)
兄は他人に危害を加えることも全くなかったので、私にとっては不思議な行動も発言も自然と受け入れることができた。
むしろ、いつも感謝の心でいっぱいだった。
というのは、私や長兄が受けるべき様々な苦しみを、彼は一身に代わりに引き受けてくれているのではといつも感じていたからだ。
また、兄は本当に尊敬すべき人物でもあった。私の親族は、家族、親戚中、鍼灸師か医者の家系。
亡くなった兄だけは無職で入退院の繰り返しという、世間ではまるで見放されたかのような存在だった。
しかし、兄は、私たち兄弟を羨ましがるわけでもなく、そして医者にありがちな「傲慢」の二字とは全く無縁だった。
兄に会うだびごとに、先生といわれている人が錯覚しやすい傲慢な心を反省し、また、本当に立派な人は地位がある人なのか、お金がある人なのか、有名人なのか、どうなのか、という事を考えさせられた。
すべての肩書きを剥ぎ取った生の人間がどうなのか、それこそ問い続けていくべき重要な一点だと感じる。
亡き母や、兄の神々しい安らかな顔をみて、私も使命を果たし切ってこのように生を終わりたいと強く思う。

兄の冥福を心から祈り合掌。

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