今日、鍼灸師仲間の男性に少食になるコツを質問してみた。
彼はかなりの少食を実行。どんどん頭が冴えてくると言う。
患者さんには「過食に気をつけて」と言いつつも実は私、朝食をとりながら昼食の事を考え、昼食中に晩の事を考えるという程のグルメ。過食鍼灸師だ。
少食鍼灸師の答えは、今まで10分で食べていた夕食を30分かけて意識して噛むようにした。噛めば噛むほどお米などの本来の甘さが出てきて味わい深いと。
しかし、最近チョコなどを食べるようになってから少食のリズムが狂ってきたと言う。
チョコなど濃厚なものを口にすると味覚が狂ってくると言うのだ。この中に沢山のヒントをもらった。
(過食はなぜ起こる?)
簡単に言えば「過食は胃の熱が原因」と東洋医学では結論する。
では胃の熱はどうして起こるのか?1つは「ストレス」。コラムでも何度も紹介したように肝気が高ぶれば(ストレス、緊張、生理前など)尚更過食になってしまう。肝気を高ぶらせると身体の中で熱(内熱)となる。アトピーなど熱性疾患の人はイライラすると更に熱が増し痒みがひどくなる事でも説明できる。(痒み自体もイライラするが)
そしてもう1つは「肥厚甘味の食べ物」。患者さんとの問診でもストレスが大きい人は必ずと言っていいほど甘いものを好む。それも究極はチョコレートのようだ。
やはり甘いものは緊張をかなり緩めてくれる。
しかし、チョコやケーキといった甘いものはほとんどが砂糖と油。砂糖、油は熱性の食品。胃に入ればすぐ熱を持ってしまう。
つまり、イライラ(=内熱)すると甘いもの(=内熱)を好み更に過食(=内熱)になるという悪循環。どうにもとまらない~だ。
(過食と精神状態)
このように「イライラと過食は密接」とは誰もが経験しているのでは?
ではこれを逆手にとってか、逆発想で世界の記録を残している男性がいる。イチローだ。食生活を正して精神の安定を図るというのだ。
イチローは何十年もお昼ごはんに奥さんの手作り野菜カレーライスを同じ量だけ食べているという。イチローの生活の全てが野球である事を考えたら、これは自分自身の精神のブレを防ぐための逆発想と受け止めた。動じない自分を確立してこそ一流になれるというものだ。いくら美味しくても何年も同じものを食べられる?その野菜カレーに海老かつや卵がのっているなんて考えられないらしい。
それにしても腹6分や8分を続けるのはかなり困難。
少し前あるリュウマチ患者さんに一生懸命少食にするように勧めていたが一向に出来ないようで・・・・しかし、ふと振り返れば「少食にして」という私の言葉がより過食を誘発していることに気づいた。
このリュウマチ患者さんも肝気がかなり高ぶっている。私の言葉を真剣に受け止めようとすればするほど、それが出来なかった時、過食の自分を責めてストレスが増していく。
言わなくなったら過食が止まったらしく舌の状態が非常に良くなった。現代はストレス社会。人を見て食生活も誘導していかなければと教えられた。
(過食解消と少食のメリット)
では以上の事をまとめて「過食を防ぐ=身体を守る」を考えてみた。
過食解消のために~
1、良く噛む
2、肥厚甘味のものは出来るだけ少量に
3、生活に無理が無いか見直す
4、悲観的な考えを楽観的に転換
5、運動を忘れずに
6、時々体重計にのって体脂肪をチェック
少食のメリット
1、精神的に安定する(頭冴えて根気でるよ~)
2、身体が軽く動きやすい
3、若返る(見た目にも)
4、熱性の伝染性の疾患にかかりにくい
5、味覚が正常になり変なものを見分けられる
6、食費が半分で済む
過食になる度にここのコラムに戻ってきては?
「めまい」
立春が過ぎてから「めまい」を訴える患者さんが急増した。
どこの病院に行っても異常なしといわれるのですが・・・と。
検査結果に異常が無くても様々な症状を訴えられる人の何と多いことか。
またその様な訴えに対して「自律神経ですよ」「診療内科に行くように」と訴える医者のなんと多いことか。
確かにめまいにも様々ある。本当に脳に腫瘍などの異常が発見される場合もあるが、我が院に来院される患者さんのめまいは大きく分けて二つあるように思う。
ひとつは、何か雲の上を歩いているようなフワフワした感じ。ほとんど立ちくらみ状態のものだ。
もうひとつは、メニエル氏病様のグルグルまたはグルッと回転するもの。
簡単に言えば、前者の雲の上は血虚(貧血傾向)の時に多く、回転性のものは「肝の高ぶり」に関係が深い。
「肝の高ぶりって?」
東洋医学の肝は五行では「木(もく)」を指す。
木は幹を中心にのびのびと空に向かって枝を広げている。(この事を「条達」という)
つまり肝の蔵は縛られることを嫌い、のびのびしている事を好む蔵といえる。
だから、自分の思うように事が進まなかったり、忙しくて自分の自由な時間が無かったりするとイライラする人がいるが、これは東洋医学的に見て肝が高ぶっている証拠。
縛られるのが大嫌いだからイライラするのだ。
生理前も分かりやすい。生理前になるとイライラする人が多い。そして過食になる。生理前は肝が高ぶるからそれを降ろそうとして過食になる。
その上この季節はまだ寒いと思っていても日差しは春を感じる。
小さなつぼみたちがすぐそこに来ている春を感じて今か今かと膨らんでいる。
そう、上へ上へと一斉に伸びようとしている季節だからややこしい。
人間の気も上へ上へと昇ってしまう。ましてや、春で無くても常に忙しい人、いらちの人はこの季節になればちょっとした事で肝に触る。ピリピリするのだ~。
だいたい肝が高ぶっているひとは顔を見ればすぐ分かる。鼻の中央辺りが白く抜けている。
ひどくなると目の周りが青白くなってくる。目も血走っていたりする。
このような人の近くにはあまり近寄らないほうが、いや、近寄る時は覚悟して。
「肝が高ぶればめまいが起こるの?」
そもそも回転するってなぜ?片方が弱いか片方が強くて重心が傾いて回転する。コマの原理だ。人間では、良く見れば左右のバランスを崩している人にめまいが良く見られる。
例えば、50肩のある人はどちらかの肩が悪い。つまり左右のバランスが悪いということだ。このような人で肝が高ぶっている人はかなりの確立でめまいが起こっている。
また50肩で無くても常にどちらかの肩をいつも凝らせている人も同じだ。
それは特に肩甲骨あたりにあるツボや腹部の肋骨弓辺りの左右差を見れば判明する。
また、舌の先が赤かったり、舌の両側が剥けていたり、舌に赤い点々が多い人も要注意だ。
「どうすればいいの?」
1、普段から肩こりを取っておくことが大事。
風邪は万病の元というが、私は肩こりも万病の元と言いた い。上に気が昇っている証拠だからだ。
2、運動不足の過食は肩こりの大本。ウオーキングをしてスト レス食いを避けたい。
3、腎の蔵を弱らせると余計に肝が高ぶる。更年期障害を見れ ば良く分かる。50前後になれば大概「腎」が弱る。腎が弱 るとはいわゆる老化現象の始まり。下に位置する腎がしっ かりしていれば肝の暴走を防ぐ。下(腎)が弱る事で余計 に肝が高ぶる。だから更年期ではホットフラッシュといっ て顔にばかり汗をかいたり、肩が異常に凝ってきたりと肩 から上の症状が出てくる。腎は塩分控えめ、冷たいものを 控えることは基本。
肝はのびのびを好むと言ったように、自分にとってホット することをしたり出かけたり、誰かにしゃべったりと工夫 してのびのび時間を持ってみては?
「過緊張は病を生じるもと」
精神の安定その1では笑いとスイーツは緊張を緩めることが分かった。では、そんなことでは緊張が緩まないという方。寝ていても手を握り締めていたりと緊張しているのでは?
それは比較的、感受性が非常に強い人、繊細な人に多いように感じる。芸術家タイプにも多いが、芸術に自分の想いを表現出来ればかなり緊張は緩む。ようはそれも出来ず、自分自身の感受性の行き先をどこへも持っていけず、誰にも受け止めてもらえず内に込めてしまえば必ずと言っていいほど身体自体に反応が起こる。過度の緊張の連続が病を生じるのだ。
アトピー、喘息、過呼吸、動悸、不眠、体痛、下痢、便秘、疲労感、イライラ(易怒)などなど人により様々だが、共通しているのは腹部、背部ともに穴(つぼ)が石のように硬くなっていることだ。
その硬いツボに触れながら素晴らしい感性を持つ才能を伸ばしていってほしいと思わずにはいられない。あなたの存在自体が素晴らしいのだから!
「なぜ過緊張になるの?」
過緊張になる人は、決まって発散する方途が生活の中にない。忙しすぎても緊張になるが、それを楽しんでいる時はさほど身体に影響を及ぼさないし少しの運動や睡眠で回復するものだ。
緊張の反対は緩み。東洋医学は過ぎたれば・・・・というようにバランスを大事にするが、ほとんどの現代人は緩み過ぎより、緊張のし過ぎの様に思える。
緩みは・散歩や軽い運動。精神的には・ホットすること(安心感)・うれしい気持ち・感謝の気持ち・感動・そして笑いなどで得られる。
しかしそれら精神的なものは人との関わりの中でしか生まれないから困ったものだ。
人間関係が稀薄なら得ることは難しいし、競争社会の弊害か人を褒めることが非常に少ないのでは?と感じるのは私だけではないと思う。
「自分の緊張度合いは?」
今の生活の中に過緊張のサインを自分で発見してみて~。
1、ため息が多い
2、過食になる
3、やたらと甘いものを欲する
4、非常にイライラする
5、肩がこって仕方ない
6、のどに閉塞感(詰まった感じ)がある
7、頭皮がピリピリする
8、寝つきが悪い
9、便秘
10、顎関節症といわれたことがある
11、歯ぎしりをする
この11項目の内4つ以上ある人は過緊張のサイン。
そこに人と会いたくない。外に出たくない。などが加わると要注意。何でもいいから自分で自分を褒めてあげてほしい。
感受性が強く敏感というのは人の気持ちも分かってあげられるのだから。
ともかくも鍼は緊張を緩める最高の治療。文字通り最高の手当てだと実感する毎日だ。
*「お笑い」と「スイーツ」
今、空前というほどのお笑いブーム。大地から湧き出るようにお笑い芸人が陸続と出てきては日本全国を明るくしてくれている。
私も大好きで寝る前までベットの中で笑わせてもらっている。笑いの前にはみな平等、上下は無い。そして芸人達の開けっぴろげで飾らない芸風、かつ、その真剣さに魅力を感じる。
誰人も憎めないキャラクターだ。
また、スイーツも然り。大ブームだ。味は勿論の事、見た目のかわいらしさと美しさ。時に芸術作品ともいうべき見事なものも多く、食べるのがもったいないくらいだ。
1切れ500円以上はゆうにするケーキも人気となれば完売~。
デパ地下にはスイーツコーナーが所狭しと並んでいる。
皆にとって必要と感じるからこそ流行るんだなと思う。
*「共通点を考える」
このお笑いとスイーツを東洋医学の観点から見れば非常に共通点がある。
両者とも「緊張を緩める」作用がある。笑うことにより腹式呼吸になり身体の緊張をほぐす。
ため息を考えればわかるように、何か精神的に追い込まれていたり憂鬱な時はため息が自然とでる。これは抑うつを解きほぐそうとする生理現象のひとつ。リラックスしようとする自己防衛なのだ。笑いとため息は息を出す。とにかくも出す!出すこと、これは緊張を緩める。
また、甘いものも緊張を緩める。自分を振り返っても分かるように緊張した後、忙しかった後などは無性に甘いものを欲する。それが毎日となれば(その量にもよるが)緊張の連続といってもいいかもしれない。患者さんをみてもチョコレートを非常に好む人は過緊張の人が多いようだ。だから私はこの2つは失業なし。(勿論人心をつかめないと失敗するが)といいたいくらいこれからもますます緊張社会には無くてはならないものになっていくのでは・・・?
笑いは「出す」。しゃべることも自分の想いを「出す」。反対に胃袋に物を「入れる」。これは精神的に満足してないものを詰めこむ。入れて入れて不足(精神的な何か)を補おうとする行為なのだ。
過食症はこの2つを網羅している。食べて食べて満足させてそして指を突っ込んで出す行為だから。自分の精神を安定させようとしている実は自己防衛なのだ~。