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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2013年5月24日(金)

慢性肩こりと糖尿病 []

川西市在住 62歳 女性
主訴:慢性肩こりと糖尿病
初診日:平成25年3月初旬

(現病歴)
出産を終えた30代から働き出すようになり、ストレスがかかると、今までの油物の多い食事に加えて、お饅頭、ケーキ、カステラ等々甘い物を更に食すようになる。40代に職場で女性同士のトラブルがあり、精神的にも疲れていたところ、検査すると糖尿病が発覚。
歩くようにしてから、体重も減少し、調子も良くなってくるが、閉経をきっかけにホットフラッシュや肩こりも酷くなり、イライラし易くなる。同居している実母の体調が思わしくなく、今まで手伝ってもらっていた家事の負担がかかり、眠りも浅くなる。時々、3時~4時に目が覚めてから眠れなくなる。現在は甘いものに気を付けてはいるものの、糖尿の数値(グルコース値、HbA1c)は不安定で両方とも正常値になった事がない。
肩こりは、動かしたり入浴や散歩でましになり、神経を使ったりイライラしたときや静止時に悪化する。冷えると腰痛が出る。鍼灸院にはご近所の友人の紹介で来院される。

(その他の問診事項)
・口渇:咽喉の渇きがあり、緑茶、紅茶、ハーブティー等温かい飲み物を一気に飲む。
・大小便:環境変化や精神的緊張で便秘する、夜間尿1回(閉経後から)。
・排泄物:少汗(額、首、腋下、殿部、足底など)寝汗無し、目やに有り。
・目・爪:目が疲れてゴロゴロする、爪は割れやすい。

(負荷試験)
・入浴時間30分でスッキリして疲労感がとれる、1時間散歩でスッキリ。

(体表観察情報)
・顔面気色診:黄・赤。心・肝・腎・胃。・舌診:淡紅舌、中焦~下焦の白厚膩苔、湿潤、舌下静脈怒張。脈診:1息4至、弦脈、脈幅やや無し、左尺位弱。原穴診:左後溪、右太衝、左合谷、左申脈。背候診:右肺兪から心兪虚、左肝兪から胃兪実。左腎兪と志室虚冷。腹診:心下、左肝之相火、臍周邪。

(診断と治療)
以上の情報から、頑張りすぎる事から、精神的にも緊張し気が上にあがり過ぎて肩がこる事、年齢的なものからも腎の弱り(陽虚=冷え)がみられ、更に上下のアンバランスが生じています。この2点から治療配穴を考えました。糖尿病も精神が安定すれば過食にも走らなくなり、脾胃にも負担がかからなくなりますので治癒していきます。

初診のみ実側の後溪(左)に10分置鍼し上部の緊張をまず緩めました。2診目から7診目まで冷えて虚している方の申脈(左)に25分置鍼し下部を補って安定させます。

(治療結果と考察)
1診目の舌写真(治療前と治療後 下記添付)からも分かるように、非常に気の動きがいい方ですので、治りも速いとみました。舌ですが全体的に赤みが無かったものが、赤味が出てきた事、また、舌先の紅点が多く見られるようになったことから、沈んでいたものが浮いてきたのではと考えました。その後、申脈に治療を施すと見る見るうちに中央から奥にあった厚い苔が薄くなってきて身体が改善されてきました。(下記写真添付)

7診目の検査結果で糖尿の数値が初めて正常値になり大変喜ばれていらっしゃいます。
このように気の動きの速い人は数回の治療でも長年の病が治っていきますし、喜びの気持ちが更に気の巡りを良くしていきます。いい循環になり本当に嬉しいです。

東洋医学では、病名は病を大きく捉えるために(熱傾向なのか冷なのか云々)必要ですが、基本的にはどのような病名であっても、ツボの状態等をみて総合的に判断し、何故今の病が発症したのか、また今はどの位置に病があるのか、更に今後の状態をも予測していきます。
ですから、難病といわれるものも治っていくのです。


初診時 治療前


初診時 治療後


8診目 舌背


8診目 舌腹

2013年4月30日(火)

眼瞼痙攣(がんけんけいれん) []

西宮市在住 48歳女性
主訴: 左側の眼瞼痙攣
初診日: 平成25年2月下旬

(現病歴)
2ヶ月前から主訴発症。当時、1日10時間以上のパソコン作業により、睡眠時間が乱れ、左の肩こりから両方のコメカミが締め付けられるようになる。
左眼瞼痙攣は、毎日1分程続き、多い日は3回から4回も起こり、頬まで痙攣するようになる。1年前の冬も多忙時、同症状がでていた。
パソコン作業も少なくなったにも関わらず、痙攣は治らず、睡眠障害も続いているため、同業者の紹介にて来院される。

(その他の症状)
・右の背中中央辺りから膝裏にかけてだるさがある。
・よく便秘をする。
・目がかすむ。
・3年間、毎朝1時間のウオーキングをして体調も良かったが、 以前からあった右の腰のだるさが悪化するようで中止する。
・約2年前から月経量が減少傾向になる。
・他覚的に下腿のむくみがある。

(主な体表観察)
舌診: 紅色 白膩苔 右舌辺と舌先の剥け。
脈診: 1息3至半、滑弦脈、脈幅やや少。
腹診: 心下から左脾募の緊張、右少腹急結、臍下不仁して腹張強。
原穴診: 全体的に左虚、右合谷と申脈実、左三陰交実。
背侯診: 左厥陰兪から心兪実、左肝兪から三焦兪持ち上がりの実。胞こう冷感。

(診断と治療)
上記の情報から、長年の無理などにより「腎の蔵」が弱っていたところ、長時間のパソコン作業などで過度に上部に気を昇らせた事で起こった眼瞼痙攣と診断。(腎の蔵は土台と考えれば、土台が弱ることにより、ストレス等で気のバランスが上部に偏り易くなる)

また、痙攣には様々な機序があるものの、基本的には、血液が筋肉を潤す事で、筋は正常に働きます。この場合、「気」が有余になり過ぎて、陰陽関係にある「血」が相対的に不足したことが原因ではないかと思われます。

よって、太衝の虚側に鍼をし、陰血を補う事で、昇った肝気を下げる方法をとりました。

(治療結果)
1回の治療で身体が緩み、眼瞼痙攣は消失。右の腰痛も9診目にはほとんど感じなくなる。左足がたまにつる事があるくらいになり、体調はよくなりました。

(考察)
一回の治療でこのように良くなった事は、驚く速さと思われるかもしれませんが、長時間のパソコンもやめられた事や、現在やめておられたウオーキングなどの再開なども功を奏したと思います。養生が良ければ鍼の効果は倍速になるためです。

1本の鍼治療で陰陽のバランスを取ることが、どれ程効果があるか実感して頂けたと思います。

2013年4月24日(水)

浮腫(むくみ) []

岸和田市在住 女性 43歳
主訴:浮腫(むくみ)特に両下肢
初診日:平成25年1月上旬

(現病歴)
2年前に骨髄バンクドナー提供した3ヶ月後から、施術場所の左臀部が歩行時しびれだし、左足外側を通り、足首まで痺れが出現し、両方の下半身がむくみ出す。(右>左)、張った感じがあり、冷たく重く感じる。靴下の跡が残る。最近は顔のむくみも気になりだし身体は怠い。雨季や雨の日が特に辛く感じる。他覚的には、脛骨を押さえても凹みは戻ってくる。

(負荷試験)
入浴 スッキリして疲労感が取れる。体のだるさもマシになる。
運動 ウォーキング1時間半でスッキリするが、足が痺れ出すので最近余り運動していない。昼寝をすると体のだるさが増し、動き出すと楽になってくる。

(その他の症状)
・ここ半年の間、月経周期が短くなり、月経期間も6日間から4日になる。
・油物を食すると必ず口内炎ができる。
・飲酒量が多いと翌朝に泥状便(1回のみ)
・ストレスが多いと、過食になり昨年夏に4キロ体重が増える。
2、3ヶ月前から嫌な夢をみてその後寝付けないことがある。
・尿回数は多く10回で量も多い。夜間尿1回。
・汗は少なく、水分摂取量は1日2リットルでミネラルウォーターを主に飲む。

(体表観察)
舌診:淡紅舌、白膩苔、歯痕有り(舌の両方の縁の歯型)
脈診:1息4至半、枯脈。
腹診:心下、左脾募、胃土、右肝之相火。
背候診:右厥陰兪と心兪虚中実、左肝兪から腎兪にかけて実。督脈上の圧痛霊台から命門迄
原穴診:左合谷、太衝、後溪実。右衝陽虚。

(診断と治療)
舌の状態、体表観察情報、入浴運動などの負荷試験情報から、脾(胃腸)の弱り等があるものの、そこが病理の主でなく、気の滞り(気滞)が体の水はけを悪くしているものと考えた。(水分代謝には脾、三焦、腎などが主に関係する)

ドナー提供時に臀部に刺激を与えた事や、冬で汗をかかず発散が少なかった事、ストレスなどが重なり、気の停滞が普段より増した事によって発症した浮腫と診断。

(治療結果)
初診時の治療で熟睡感が得られ、3診目には足の腫れた感じが減少してくる。6診目には顔が引き締まりむくみがとれてくる。同時に、普段から感じていた腰痛も消失。

(考察)
治療を重ねる度に、下腿や顔などを始め、体全体が引き締まり、ドンドン綺麗になっていかれました。舌の腫れぼったさも、無くなりました。2年も悩んでおられた浮腫みが、このように早期に改善された事は、動きの速い肝の蔵の「疏泄(そせつ)作用」が鍼によって、動き出したという事です。つまり、気の停滞が本来排泄されるべき水分までストップさせていたのです。

あとは、自分に優しく、自分を責めないで仕事に取り組めるようにできれば、気がひどく停滞することはなくなってきます。
普段よりよく運動して、気の停滞を起こさないようにする事が大切です。気が停滞すれば、ご自分でも何か詰まった感じがしますので、その事を感じれる程の身体の状態を保って欲しいです。

2013年3月30日(土)

胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状 []

大阪府在住 女性 32歳
主訴:胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状
再診日:平成24年12月

(現病歴)
現在、朝起きた時に胃の痛さが一番きつく、食事をとると治まるという状態が続き検査を受けると胃炎、逆流性食道炎と言われ、ポリープ2個が見つかる。ポリープの除去はしなかった。
漢方薬(平胃散と六君子)と精神安定剤を処方され服用するも変化はなし。
子育てに多忙で、ストレスが溜ると過食になり、神経を使うと舌の先や舌の縁がピリピリすることがある事が現症状。

約1年前に、腰痛と胃炎を訴えられ治療を受けられ、腰痛は2回で良くなり一旦こられなくなる。胃は7年前から調子が悪く、今まで病院で胃炎、逆流性食道炎の他、胃潰瘍の疑い、胃機能性失調症等と言われる。更にさかのぼれば、19歳の頃から毎朝胃もたれがあり食欲が無く便秘をしていた。その上、仕事でのストレスで暴飲暴食を繰り返し、胃痛になると一週間何も食べれなくなり痩せていった。
これ以降、毎年春から夏にかけて同症状が起こるようになる。昨年の秋、胃が絞られるように痛くなり嘔吐。嘔吐後は楽になるがまた痛み出す。

(その他の問診事項)
・飲食:大食で好物は、お寿司、肉料理、チーズ料理。毎食後クッキーやチョコを食す。
・二便:2日に1行でコロコロ便の時有りで、黒に近い色。緊張で便秘する。
・汗:少ないが上半身に多い、熱い汗。
・睡眠状態:熟睡感なし、寝起きが悪い、怖い夢をよく見る。
・生理状態:不定期、痛経有り、初日は常に喉が渇き口臭がする、おりもの臭い有り。2回自然分娩。
・その他:口内炎が良くできる(上あごに)、目が乾燥して疲れる。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅舌、舌先の紅点多数、白い苔がべったり。
脈診:1息4至半、滑脈、脈幅やや無し。
原穴診:右太白・京骨・丘墟・腕骨虚、右太衝虚中実、左照海・太淵・神門虚。
腹診:右脾募から胃土~肝相火が緊張、左脾募、左少腹急結。
背候診:左肺兪~心兪実、左肝兪~胃兪虚中実熱、右肝兪~脾兪大きく虚、右腎兪至室虚、両胞肓冷感。

(診断と治療)
平素から過食、甘い物を食されることが多く胃に負担をかけておられます。それも、チーズ料理や肉料理等を好まれますので身体に熱を溜め込むことになります。その熱は、口内炎、便秘、熱い汗、口臭、おりもの臭い等々問診からも分かりますし、体表を観察しても特に肝~胃にかけての熱感がひどく出ていました。

また、舌の苔が非常に分厚いことから熱と湿が結びついて湿熱が体内に形成されていることが考えられます。この過食の原因となっているのは子育て等が多忙でご自分が伸び伸び出来ていない事がストレスになっているようです。様々な情報から肝の気が昂り過ぎておこる実タイプです。これらを考慮して治療を進めていきます。

治療は10診もしないうちに胃の調子はよくなられました。ツボは、太衝~後溪~公孫というように変化させていきました。

(考察)
現在、このようにストレスや緊張から過食に走る方、大多数ではないでしょうか。甘いものなどは身近かに直ぐ手に入る環境です。要は、そのストレス度合いや過食の程度がどれほどかという問題だけです。逆流性食道炎や胃炎などを繰り返していると胃潰瘍になっていく可能性は大きいです。胃潰瘍は粘膜に傷が付くわけですからそのまま治癒せず繰り返してばかりですと胃ガンにもなりかねません。

鍼灸治療はその方の今の精神状態と体表所見を考え、この先どのようになっていくかが予見でき、また、その悪い予後を防ぐことのできる優れた治療なのです。

根治してこそ意味があります。また、もっと意味のあることは、自分の身体を医者まかせや薬で目隠しするのでは無く自覚し、無理なく制御できる精神状態にまで高めることが大事ではないでしょうか。
この患者さんが身体から心へ、そして心から身体へ善の循環になりますようにいつも応援しています。

2013年3月11日(月)

脱髪 []

西宮市在住 4歳 女の子
主訴:脱髪
初診日:平成25年1月18日

(現病歴)
昨年の12月18日から4日間40℃の発熱があり、気管支炎や結膜炎、副鼻腔炎も併発し入院する。血液検査は異常なし。入院して2日目の朝、髪の毛が10数本抜けていることに気づく。
その後、抜け毛は見られなかったが、今年のお正月の朝、束になって脱髪していた。(数えると120本程)皮膚科にて検査するも異常なし。
その後、ドンドン髪が薄くなってきているように感じる。特に頭頂部が目立つ。別の病院にて「びまん性脱毛症」と診断される。薬を数回使用するも抜け毛が治まらずホームページにて当院を知り来院される。

(既往歴)
・1歳時に風邪から40℃の高熱。その後、突発性発疹が全身にできる。
・2歳~昼寝をほとんどしなくなる。寝付きは20分後、寝ているとき半眼になっている。
・3歳から幼稚園に通うが、年に2回夜1-2時に38℃の発熱がある。時期は不明。翌朝には汗をかいて解熱している。

(七情)
しっかりしていて幼稚園では自分で何でもする。「早く大人になりたい」と言う。
パパが仕事で多忙のため中々会えず、幼稚園の先生に「うち、休みの日にパパいないの・・・」とよく言っているとの事。
ママは子育てに3歳ごろまでイライラしていたので、ママの目を気にしていた。

(診断と治療)
脱髪にも虚と実があります。大きく分けて突然に抜け落ちるのは実で、徐々に抜けていくのは虚に属します。お子さんの脱髪は実がほとんどです。(子どもは陽体ですので実熱に傾き易い)彼女のように、発熱後に髪が突然抜け落ちるのは、「内風(ないふう)」が原因ではないかと思われます。
火がおこれば陽炎(かげろう)のように上部に風がおきますが、熱のためにそれが身体の中でおきる事を内風といいます。
この内風のために髪の毛が抜け落ちる事があります。1歳の頃からよく発熱されていることからも、熱を原因とした脱髪であることは明らかです。

治療は、刺す鍼を使用せずに、古代銀鍼を使用して、熱、特に上部の偏った熱をとり、内風(身体の中でおこった風)を抑える治療を試みました。

(治療結果)
熱感のある百会、手の十井穴、背部右の肝と胆を中心に散鍼を行いました。

便通が毎日良くなり、6診目ごろには殆んど脱毛は無くなり順調に回復しました。
腹部やお臍周辺の緊張も10診目を過ぎた頃から無くなってきました。

(考察)
この子は、本当に大人っぽい4歳で、大人以上に感受性が強いと感じました。
このようなお子さんは、我慢強くワガママを言いません。
大好きなパパと中々会えないことも我慢し、ママも子育てに大変なんだと察して我慢し、発散が少なく体の中に熱を溜め込みやすくなっていったのだと思います。便秘なども身体に熱を溜め込む原因のひとつとなります。

お母さんがこのように治療に連れてきて下さって親子ともに救われたのではないでしょうか。親子の絆は黙っていても通じ合うものです。今後、お母さんも彼女も上手に発散しながら(いろんな方法がありますので自分に合った発散法で)気を巡らし、変な熱を溜め込まなければ、熱を出すことも少なくなりますし大きな病気をすることも無くなります。

今も鍼灸治療に来てくださっていますが、鍼灸治療こそ気の滞りを通じさせていくのに適しています。彼女の我慢強さ、感受性の強さが今後も益々いい方向に活かされますように願っています。

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