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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2017年2月24日(金)

月経不順から不妊症が治癒した症例。 []

30代女性。
初診:平成28年3月下旬初診。
主訴 月経不順、不妊

【主訴】
20代半ばに初潮(初潮が来ないことをおかしいと思いながらも誰にも言えなかった。)
以後、3ヶ月又は半年ペースで来潮(出血量は普通、痛経2日目に左下腹部痛)。
31歳結婚後、婦人科で多嚢胞性卵巣症候群と診断、ホルモンで毎月月経をおこすが(1年間)、身体が怠くイライラや体重増があり薬中止。通院もやめ仕事復帰する。
基礎体温、高温期・低温期は安定せずバラバラ。

【その他の症状】20歳ごろ不整脈といわれる、ストレス時に逆上せ・心下部痛・動悸あり。
便秘で仕事中は排便するとこは皆無。お酒を飲むと翌日快便。
夢が多く追いかけられる夢や高いところから降りていく夢を見る。

【七情】
幼少期から気を使い過ぎて言いたいことが言えず、緊張する事が多く、感情を内に溜め込むことが長年続いていた。

【病因病理】
衝脈・任脈・督脈は胞中(子宮)から起こるといわれてるように、これらの諸脈に病変が生じると気血の過不足が生じて生殖機能に障害をもたらします。特に任脈は、胞胎を主とし生殖機能、月経周期と密接な関係があります。

彼女は長年の感情鬱積により肝鬱気滞が長引いたことが任脈に影響し、生殖機能に気血の不通がおこり月経が来なかったと思われます。

また気血の停滞が気血を巡らす心の臓にも及んだことにより多夢・動悸・顔色淡白、舌淡白等の所見がみられたと思います。

【正邪弁証】
上記のように心血不足傾向はみられますが、脈力がある事や、ツボの実(特に合谷左や太衝右、厥陰兪や心兪等の反応顕著)、または、負荷試験で休日に散歩4時間後もスッキリして気持ちが楽になる事から、邪気の実>正気の虚と考えます。

【証と治療】
証:任脈不通証

初診~3診目:胆兪(右)2番鍼20分置鍼。
4診目~11診目:後渓(左)
12診目:申脈
13診目~20診目:公孫
21診目~現在45診目:後渓、太衝、外関、申脈のいずれか1穴。

【治療効果】
初診の治療後、脈幅、脈力が復活し、舌色が紅に変化。3診目で快便になりました。4診目から心血を補いながら気実を瀉す事を11診目まで続けました。

6診目で月経が来て心身がスッキリし、月経前の過食が無くなった事に大変驚かれていました。(かなり酷かったようです)
更に、2か月続けて月経がきた時は本人と家族もびっくり。その後も順調に月経が来るようになり、25診目に妊娠陽性反応がでました。

妊娠後も治療を継続していますが、つわりもなく浮腫みや便秘等の症状も全くなく仕事を続けながら母子共に順調です。

【まとめ】
このように速く鍼の効果が出て、妊娠にまで至った事は虚証ではなく実証体質だったからだと思われます。長年、誰にも言えなかった無月経をここで話が出来たことも心が緩んだと思いますし、初期に実を胆兪というツボで瀉したことが功を奏したのではないかと思います。

初めにお会いした時に、ご自分の症状までもしっかり蓋が出来る程かなり我慢強い女性だと直感しました。

彼女との信頼関係も初めから自然に流れるように出来ていましたし、治療はとてもし易かったです。彼女が素直だったため心がどんどん鍼によって解放されていった結果だと思います。

どれだけ可愛い赤ちゃんに会えるのかと心から楽しみです。

2017年2月1日(水)

突発性難聴 []

68歳女性 平成28年5月中旬初診
主訴 突発性難聴

【主訴】
1ヶ月前、法事のため遠方(高知県)に出かけ神経を使った上、なま物を過食。帰宅した翌日の起床時、右耳に突然の激しい耳鳴りと耳閉感が起こる。眩暈も伴う。その2日後、左耳にも同じ症状が出現。約1週間のステロイド内服で激しい耳鳴りは治まるが、右耳の低音(時々高音)の耳鳴りが残る。聴力は左右共に正常。

増悪因子: 夜寝入り時、室内(耳鳴りがよく聴こえて苦痛)、雨天前、春と秋
緩解因子: 入浴中、ウォーキング中、屋外

【既往歴】
・幼少期から虚弱で扁桃腺炎や、心臓神経症(動悸、息苦しい、不安感、不眠)をよく起こしていた。
・第一子出産1年後、回転性の眩暈(嘔吐)メニエール氏病と診断。
・更年期頃から風邪を引くと喘息発作を起こすようになり、その後、副鼻腔炎、甲状腺機能低下症、間質性膀胱炎等を発症する。
・4年前春 右耳のみ低音の耳鳴り発症。
・1年前秋 右耳のみ低音の耳鳴り再発。持病の喘息症状も同時に出現。

【病因病理】
小さい頃から心臓には器質的な問題はないものの(検査済)心臓神経症の症状(動悸、不安感、不眠等)がよく起こる事から、体質的に心気の弱りがあったと思われます。心気を消耗すると心血が減少し益々不安感や動悸、不眠になり悪循環に陥ります。
また、患者さんは、かなり我慢強い方で様々な事があっても発散することなく生活されてこられたようです。(かなり酷い便秘で薬を長年常用)。便秘薬使用に関して常にストレスを感じておられます。
出産後は、腎が弱ったところ肝鬱により肝の臓の表裏である胆経に左右差をおこして回転性の眩暈が発症したと思われます。
更に、更年期あたりから腎が益々弱り、上下バランス(肝と腎の臓を中心に)が乱れ、上記のように様々な病気を発症されます。
加齢のため腎が弱ることにより、それを支える脾の臓の運化作用も低下し、上焦に湿熱を溜め副鼻腔炎や喘息発作を起こしやすくなったと考えました。
今回の突発性難聴の爆音は脾胃の湿痰が胆経に沿って上逆し、痰火となって塞いだ為に発症したものと思われます。主訴の低音の耳鳴は脾腎の弱りが中心と考えますが、心身安寧の為に心の蔵に関わる穴にアプローチし心気を補い、後、脾>腎に対する治療を施します。

【証と治療】証:腎虚、脾虚湿盛

初診~3診目:心兪(2番鍼、初診のみ5分、他25分置鍼)
4診目~24診目:滑肉門、魂舎、天枢のいずれか1穴。(5番鍼で30分置鍼)
(21診目のみ打診+古代鍼で十井穴…熱中症の為)
25診目:公孫(右)(2番30分置鍼)食欲不振の為。
26診目~27診目:不容(右)2番30分

【治療効果】
初診の治療後から夜中目覚めず、ぐっすり眠れるようになり、夜間尿も無くなりました。心兪3回の治療で耳鳴りもかなり小さくなり今まで出来なかったお昼寝も出来るようになり、5診目ごろから喘息のステロイド(吸入)を使用しなくても発作は出なくなり、たまに咳が出る程度になる等、鍼の効果が顕著に現れました。耳鳴りは高音の日や低音の日など、日によって症状はまちまちでしたが、12診目頃には耳鳴りは消失しました。

【まとめ】
70歳前の患者さんで脾腎の弱りが顕著でしたが、耳鳴りだけでなく喘息も完治されました。医者に診てもらうと雑音が無くなっていると驚かれたようです。一生薬は切れないと言われた喘息が治った事でご本人も信じられない様子で喜ばれています。
患者さんは今までご苦労が多かったようですが、とても素直な方で鍼をされるたび心身が安定されるのがこちらも感じました。
元気になると正直なもので手づくりのビーズのくまさんや素敵なリース等作って下さる等、動作も表情も本当に若々しくなられました。
ご苦労してこられた分、益々お元気で幸せな充実の毎日を過ごして頂きたいです。

2016年11月14日(月)

眩暈 []

60歳女性、平成28年3月下旬初診。

主訴:回転性の眩暈→ フワフワした眩暈。

(眩暈履歴)
★1回目約6年前12月→ 夜布団の中で眩暈(回転性)身体動かせず首を右下のまま静止。
★2回目約5年前5月→ 夕食後7時~翌朝6時迄同上の眩暈(回転性)で一睡もできず。
★3回目約半年前10月末から11月→ 起床時に眩暈(回転性)し初めて嘔吐。安定剤と眩暈止め薬服用し改善。血圧も突然180/110に。3回とも眩暈時は息苦しさも伴う。

*1回目と2回目は家族介護で多忙時、3回目は引っ越しで多忙後ホッとした時。

増悪因子:精神的ストレス、不眠。緩解因子:ぐっすり寝た時。息苦しさはゲップで緩解する。

七情:心配性、娘さん曰く「母は全ての人の苦しみを自分のものにしてしまう」

(体表観察所見)
舌(写真)、脈(4至半強、滑脈、尺位左虚、幅無、力有)、原穴:太衝左虚、太白~公孫(左)、内関右実、外関左虚、百会(左)熱実、右心兪実、右脾兪虚、左陶道から神道までの1行実。
その他:手顔中心にかなり黄色、スタッフ体表観察中に腹部、背中が発疹出現。

【チャート図】


(チャート図上をクリックしたら大きくなります)

(治療)
初診:申脈(右)2番10分。
2診目~4診目:後渓(右)→(左)→(右)30分
5診目~25診目:太衝(左)。

(治療効果)
初診後よく眠れて、2診目から不安感が半減。回転性の眩暈はなくややフワフワした眩暈有り、3診目には公孫や太白等の穴の状態が改善される。眩暈消失。鍼治療後眩暈は一度も出ず。心配し過ぎる事も全くなくなり精神的に安定。

(まとめ)
遠方から根気よく通院して下さり感謝いたします。小さい頃から虚弱の上、ご家族や人の心配ばかりして身体を酷使されてましたが、鍼をされてから体力が出てこられました。

5診目から25診目までは、左太衝穴を使用しました。ツボの左右差が整う事が大事なのですが、整うのには時間がかかりました。これほど身体のバランスが偏っていた証拠です。

何より精神的に安定され、その姿に現在、娘さん夫婦、お孫さん達も通院して下さっています。鍼は心身共の健康を得られる優れものです。

2016年11月14日(月)

眩暈 []

65歳女性、平成28年3月中旬2年ぶりに来院。(前回主訴は右臀部から大腿外側部痛)

主訴:3日前の朝から回転性の眩暈で何度も嘔吐。(嘔吐後の眩暈不変)。食べると嘔吐のため食不振。頭を動かすと眩暈で嘔吐になるため3日間寝たきり状態だったが、かなりゆっくりなら歩けるようになりご主人の車で来院。
随伴症状は不眠(眠剤使用)、便秘、腰痛、舌腹ピリピリ、手足厥冷。

現状:船酔い様で頭に重いものが載っている感じ。頭を動かせず。

1ヶ月前から軽い眩暈有り内科の薬を服用。肩こり酷かった。(右>左)
2週間前に酷い風邪を引き、治った直後に孫を預かり、その後好きな裁縫に根を詰めていた。

(体表観察情報)
舌診:紅舌、舌尖紅緯、紅刺多数、両舌辺剥け、中焦から下焦に厚膩苔、
脈診:4至半弦脈、中位に緊脈。有力、幅やや有、実の穴トップ右内関、虚中実の穴(腕骨~神門~霊道、照海、申脈、臨泣全て左)、百会右熱。

【チャート図】


(チャート図上をクリックしたら大きくなります)

(治療と効果)

1診目:申脈(左)25分:頭重感まし、手が温まり頭が軽くなる、弦脈緩む。舌潤に、舌尖赤みまし。

2診目:上向きに寝れるようになる。昨夜から嘔吐無、今朝少し食べれた、船酔
い感まし。横向きになると眩暈がしてしばらくするとましになる。
腹診:左脾募から天枢邪、臍周熱、右肝之相火、左大巨。脈幅力なし。
滑脈。両裏?兌の灸31壮の後、申脈(左)20分。

3診目:裏?兌灸9荘の後、後渓(右)30分。すっきりした顔で来院。食事
出来るようになる。排便有り。

4診目:臨泣(右)5番30分。起き上がって横になると眩暈。空腹感出てくる

5診目:臨泣(右)2番30分。完治。

(まとめ)
当初ひどい状態で来院されました。ベットに横になれなかった為、初診時は
座ったまま治療しました。

激しい嘔吐を伴う回転性のめまいは、東洋医学では「痰濁」という邪気が脾胃(胃腸)を襲った為に発症する場合が多いです。

単純に身体全体を考えてみても、上部に重心がかかり過ぎて、且つ、左右バランスが大きく崩れていれば、駒と同じく回転します。

その身体全体のバランスの崩れと、胃腸の弱りを意識して治療をしました。

舌の状況を見れば、かなり赤く(特に舌先)上部に熱が偏っているのは明らかでしたが、2診目からお灸を使用しました。これは特殊例です。(中途半端に熱に熱を加えると悪化する可能性が高いので要注意です)

しかし、中焦脾胃の湿邪を灸で乾かす意味と、強烈に上へ上った気を引き下げ、左右バランスも整える理由で裏?兌に調えの灸を施しました。

毎日5日間通院され、結果すっきり完治されました。

何かあった時に、それもこのように重症な症状の時に鍼を信じて来て下さる患者さんに心から感謝します。

2016年8月17日(水)

関節リュウマチ(痺証) []

今年2月に「関節リウマチ」が主訴で来院された60代女性の症例です。

【症状】
約15年前の更年期辺りから疲労感と共にカゼをよく引くようになり、その頃から上半身の関節や両足首が腫れ出しリュウマチの診断を受ける。服薬でましになるが、昨年からの復職を機に、左膝外側や足首の腫れと重だるさが出現し歩行困難になる。
リウマチ数値は高く、シェーグレン症候群も併発。

【随伴症状】
・もともとふっくら体型で、便秘傾向。
・長年仕事・家事・ボランティアなど多忙な日々が続いており常に睡眠不足。
月経前に関節が腫れ、月経後に治まるのを繰り返していた。
甘味好きで、食べ過ぎて胃もたれ。
雨天時、身体が重い。
・2年前 肺癌で肺一部切除。

【増悪因子】
スターティングペイン(ジッとしてから動かし始める時に痛む)
膝関節を伸ばす
冷え
雨天前

【緩解因子】
温める(入浴やカイロを患部に貼る)
雨天時

【病因病理】
証:肝鬱気滞~湿邪偏勝(着痺)

物静かな患者さんですが心に闘魂があり日々我慢強く生活されておられるように感じます
我慢が昂じると緊張になり、実際その緊張を緩めるために甘味の物を多く摂取されています。

そのような生活が継続すると、体内に湿邪が形成され雨天時に身体が重くなります。
その上、緊張のため便秘することで湿邪が降らないばかりか熱邪となり、その湿熱邪が関節等に停滞し易くなります。

リュウマチ発症時に風邪をひきやすくなる等、衛気(体表の気)も弱ることで、簡単に外邪(気候変化)の影響を受けやすく、気機の流れを更に阻害しやすい状態になったことでリュウマチが発症したと思われます。

【治療方法】
肝鬱の気を巡らせることで湿邪の停滞を除き関節の腫れと痛みの緩和を目指します。

気機の巡りに深く関与する合谷の虚側を使用することにしました。合谷の虚のツボが修復することによって、気の巡りを正常に戻すことが目的です。

【治療と経過】
1~3診目まで合谷を補うと腫れと痛みがみるみるうちにひいていきました。

合谷の左右差が消えてからは、数回後渓で心神を安定させ、次に天枢で長年のストレスからくる脾の弱りを改善していきました。

杖も使用せず歩けるようになりました。さらに、手のこわばりや夜間尿も無くなり、足裏のタコまで消えてしまいました。

【まとめ】
関節リウマチを東洋医学では「痺証(ひしょう)」といいます。リュウマチ反応が出ていなくても関節が腫れる等の症状は「痺証」という概念で診断していきます。

『素問・痺論』には「風寒湿の三気まじわり至りて合して痺と為す」とあります。痺病が久しく癒えず反復外邪に感じれば進行して臓腑の正常な機能に影響することを指摘している。と言われています。(東洋医学鍼灸ジャーナルVol22 参考)

症状そのものは実のように見えても、繰り返し起こる等の長患いは基本的に裏に虚があると考えます。虚があれば外邪にも感受しやすくなります。更年期や出産後に発症している患者さんが多い事からも分かります。

この患者さんの虚は肺癌等も患っている事からも衛気の弱りと脾の弱りがウエートを占めているように思います。

また実際に痛むところを手で触ってみて熱感や冷感などを感じる事が大切です。この患者さんの場合は奥の方にやや熱感はあるものの冷感が中心でした。この冷感自体は湿邪停滞による冷えだと判断しました。

更に、リュウマチの発症状況変化も重要です。当初は体の上部中心の関節に出ていたものが、下半身中心になり、下半身の中でも膝から足首に痛みが下がったとなれば、下半身のツボは出来れば使用しない方がいいと思います。病を下へ引っ張り痛みを加速させる可能性があります。

経絡からどの臓腑が病んでいるかを探っていき四診合参して診断していくことの大切さを感じました。

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