60代女性 西宮市在住 2023.11月来院
主訴: 鬱 (恐怖や不安感)
【病歴】
コロナ禍でずっと頼りにしていた娘さんが一人暮らしをする事を聞いてから恐怖心や不安感があらわれる。夜も暗くして眠れない、静止できずソワソワする、集中力がない、体重減(5キロ)、鼻が詰まって熟睡できない等の症状が昨年9月から続き来院される。
【既往歴】
・子供の頃から怖がりで心配性。「自分がしなくては」と人一倍考え、弟妹の世話をしていた。
・胃腸が弱く、腹痛と便秘を繰り返す。
・20代で卵巣嚢腫。卵巣と子宮の全摘。30代以降は胆嚢ポリープや腎盂炎になる。
【その他の症状】
口苦、口・喉の乾燥、尿濃、便が硬く黒い、身体の痒み、ドライアイ、のぼせやすい等の熱症状。
【主な体表所見】
舌診:淡暗、膩苔、胖大、歯痕あり、
脈診:4至半、滑枯脈、重按力有り、関上LR枯、寸口R弱
腹診:L胃土、L肝相火、R肝相火(深在)
背侯診:虚/心兪L、実/膈肝、肝兪、神堂、百会熱
【病因病理】
証:肝気上逆 ≧ 心血虚、腎虚
幼い頃から、責任感が強く頑張り屋さんで、とことん自分を追い詰めてしまい、それが昂じて恐怖心が出てくるという悪循環がベースにあると思われます。
更に、クレーム処理の仕事を10年以上続け、常に緊張状態にあり、寝つきが悪いところコロナ禍に突入。神経が休まる時が無い状態が長く続いておられました。
このような状態が続く中、頼れる人はしっかり者の娘さんだけという精神状態になり、その娘さんがいなくなる事で、一機に精神が不安定になられたと思います。
精神状態の不安定は、バックに貧血(血虚)を伴います。また、長年の精神疲労や老化が重なり、腎臓の状態が弱り、更に、肝気が上へ上へと昇りすぎで発症した恐怖心と考えます。
【治療方針】
1診目:照海、後渓(精神安定と腎臓の弱りを補う治療)
2診目:胆兪
3診目:肝兪(精神状態は安定しないが、胃腸の調子は良くなっている)
4診目~9診目:百会(百会をして4回目から精神状態が安定してきた)
※現在2週間に1回の治療を継続中)
【治療効果】
7診目から電気を消しても寝れるようになり、精神が安定してきたと驚かれてました。娘さんは出ていかれましたが(単なる一人暮らしです)、ご自身でも驚く程安定していて娘さんも安心しておられるようです。現在は全く普通の生活を送っておられます。
早く鍼灸の効果が出て良かったです。これは、虚(弱り)もありますが、実(邪熱や気の上下のアンバランス)の方が強かったために早く功を奏したと考えます。