西宮市在住 48歳女性
主訴: 左側の眼瞼痙攣
初診日: 平成25年2月下旬
(現病歴)
2ヶ月前から主訴発症。当時、1日10時間以上のパソコン作業により、睡眠時間が乱れ、左の肩こりから両方のコメカミが締め付けられるようになる。
左眼瞼痙攣は、毎日1分程続き、多い日は3回から4回も起こり、頬まで痙攣するようになる。1年前の冬も多忙時、同症状がでていた。
パソコン作業も少なくなったにも関わらず、痙攣は治らず、睡眠障害も続いているため、同業者の紹介にて来院される。
(その他の症状)
・右の背中中央辺りから膝裏にかけてだるさがある。
・よく便秘をする。
・目がかすむ。
・3年間、毎朝1時間のウオーキングをして体調も良かったが、 以前からあった右の腰のだるさが悪化するようで中止する。
・約2年前から月経量が減少傾向になる。
・他覚的に下腿のむくみがある。
(主な体表観察)
舌診: 紅色 白膩苔 右舌辺と舌先の剥け。
脈診: 1息3至半、滑弦脈、脈幅やや少。
腹診: 心下から左脾募の緊張、右少腹急結、臍下不仁して腹張強。
原穴診: 全体的に左虚、右合谷と申脈実、左三陰交実。
背侯診: 左厥陰兪から心兪実、左肝兪から三焦兪持ち上がりの実。胞こう冷感。
(診断と治療)
上記の情報から、長年の無理などにより「腎の蔵」が弱っていたところ、長時間のパソコン作業などで過度に上部に気を昇らせた事で起こった眼瞼痙攣と診断。(腎の蔵は土台と考えれば、土台が弱ることにより、ストレス等で気のバランスが上部に偏り易くなる)
また、痙攣には様々な機序があるものの、基本的には、血液が筋肉を潤す事で、筋は正常に働きます。この場合、「気」が有余になり過ぎて、陰陽関係にある「血」が相対的に不足したことが原因ではないかと思われます。
よって、太衝の虚側に鍼をし、陰血を補う事で、昇った肝気を下げる方法をとりました。
(治療結果)
1回の治療で身体が緩み、眼瞼痙攣は消失。右の腰痛も9診目にはほとんど感じなくなる。左足がたまにつる事があるくらいになり、体調はよくなりました。
(考察)
一回の治療でこのように良くなった事は、驚く速さと思われるかもしれませんが、長時間のパソコンもやめられた事や、現在やめておられたウオーキングなどの再開なども功を奏したと思います。養生が良ければ鍼の効果は倍速になるためです。
1本の鍼治療で陰陽のバランスを取ることが、どれ程効果があるか実感して頂けたと思います。
岸和田市在住 女性 43歳
主訴:浮腫(むくみ)特に両下肢
初診日:平成25年1月上旬
(現病歴)
2年前に骨髄バンクドナー提供した3ヶ月後から、施術場所の左臀部が歩行時しびれだし、左足外側を通り、足首まで痺れが出現し、両方の下半身がむくみ出す。(右>左)、張った感じがあり、冷たく重く感じる。靴下の跡が残る。最近は顔のむくみも気になりだし身体は怠い。雨季や雨の日が特に辛く感じる。他覚的には、脛骨を押さえても凹みは戻ってくる。
(負荷試験)
入浴 スッキリして疲労感が取れる。体のだるさもマシになる。
運動 ウォーキング1時間半でスッキリするが、足が痺れ出すので最近余り運動していない。昼寝をすると体のだるさが増し、動き出すと楽になってくる。
(その他の症状)
・ここ半年の間、月経周期が短くなり、月経期間も6日間から4日になる。
・油物を食すると必ず口内炎ができる。
・飲酒量が多いと翌朝に泥状便(1回のみ)
・ストレスが多いと、過食になり昨年夏に4キロ体重が増える。
・2、3ヶ月前から嫌な夢をみてその後寝付けないことがある。
・尿回数は多く10回で量も多い。夜間尿1回。
・汗は少なく、水分摂取量は1日2リットルでミネラルウォーターを主に飲む。
(体表観察)
舌診:淡紅舌、白膩苔、歯痕有り(舌の両方の縁の歯型)
脈診:1息4至半、枯脈。
腹診:心下、左脾募、胃土、右肝之相火。
背候診:右厥陰兪と心兪虚中実、左肝兪から腎兪にかけて実。督脈上の圧痛霊台から命門迄
原穴診:左合谷、太衝、後溪実。右衝陽虚。
(診断と治療)
舌の状態、体表観察情報、入浴運動などの負荷試験情報から、脾(胃腸)の弱り等があるものの、そこが病理の主でなく、気の滞り(気滞)が体の水はけを悪くしているものと考えた。(水分代謝には脾、三焦、腎などが主に関係する)
ドナー提供時に臀部に刺激を与えた事や、冬で汗をかかず発散が少なかった事、ストレスなどが重なり、気の停滞が普段より増した事によって発症した浮腫と診断。
(治療結果)
初診時の治療で熟睡感が得られ、3診目には足の腫れた感じが減少してくる。6診目には顔が引き締まりむくみがとれてくる。同時に、普段から感じていた腰痛も消失。
(考察)
治療を重ねる度に、下腿や顔などを始め、体全体が引き締まり、ドンドン綺麗になっていかれました。舌の腫れぼったさも、無くなりました。2年も悩んでおられた浮腫みが、このように早期に改善された事は、動きの速い肝の蔵の「疏泄(そせつ)作用」が鍼によって、動き出したという事です。つまり、気の停滞が本来排泄されるべき水分までストップさせていたのです。
あとは、自分に優しく、自分を責めないで仕事に取り組めるようにできれば、気がひどく停滞することはなくなってきます。
普段よりよく運動して、気の停滞を起こさないようにする事が大切です。気が停滞すれば、ご自分でも何か詰まった感じがしますので、その事を感じれる程の身体の状態を保って欲しいです。