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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2013年3月30日(土)

胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状 []

大阪府在住 女性 32歳
主訴:胃炎・ポリープ・逆流性食道炎等の胃腸症状
再診日:平成24年12月

(現病歴)
現在、朝起きた時に胃の痛さが一番きつく、食事をとると治まるという状態が続き検査を受けると胃炎、逆流性食道炎と言われ、ポリープ2個が見つかる。ポリープの除去はしなかった。
漢方薬(平胃散と六君子)と精神安定剤を処方され服用するも変化はなし。
子育てに多忙で、ストレスが溜ると過食になり、神経を使うと舌の先や舌の縁がピリピリすることがある事が現症状。

約1年前に、腰痛と胃炎を訴えられ治療を受けられ、腰痛は2回で良くなり一旦こられなくなる。胃は7年前から調子が悪く、今まで病院で胃炎、逆流性食道炎の他、胃潰瘍の疑い、胃機能性失調症等と言われる。更にさかのぼれば、19歳の頃から毎朝胃もたれがあり食欲が無く便秘をしていた。その上、仕事でのストレスで暴飲暴食を繰り返し、胃痛になると一週間何も食べれなくなり痩せていった。
これ以降、毎年春から夏にかけて同症状が起こるようになる。昨年の秋、胃が絞られるように痛くなり嘔吐。嘔吐後は楽になるがまた痛み出す。

(その他の問診事項)
・飲食:大食で好物は、お寿司、肉料理、チーズ料理。毎食後クッキーやチョコを食す。
・二便:2日に1行でコロコロ便の時有りで、黒に近い色。緊張で便秘する。
・汗:少ないが上半身に多い、熱い汗。
・睡眠状態:熟睡感なし、寝起きが悪い、怖い夢をよく見る。
・生理状態:不定期、痛経有り、初日は常に喉が渇き口臭がする、おりもの臭い有り。2回自然分娩。
・その他:口内炎が良くできる(上あごに)、目が乾燥して疲れる。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅舌、舌先の紅点多数、白い苔がべったり。
脈診:1息4至半、滑脈、脈幅やや無し。
原穴診:右太白・京骨・丘墟・腕骨虚、右太衝虚中実、左照海・太淵・神門虚。
腹診:右脾募から胃土~肝相火が緊張、左脾募、左少腹急結。
背候診:左肺兪~心兪実、左肝兪~胃兪虚中実熱、右肝兪~脾兪大きく虚、右腎兪至室虚、両胞肓冷感。

(診断と治療)
平素から過食、甘い物を食されることが多く胃に負担をかけておられます。それも、チーズ料理や肉料理等を好まれますので身体に熱を溜め込むことになります。その熱は、口内炎、便秘、熱い汗、口臭、おりもの臭い等々問診からも分かりますし、体表を観察しても特に肝~胃にかけての熱感がひどく出ていました。

また、舌の苔が非常に分厚いことから熱と湿が結びついて湿熱が体内に形成されていることが考えられます。この過食の原因となっているのは子育て等が多忙でご自分が伸び伸び出来ていない事がストレスになっているようです。様々な情報から肝の気が昂り過ぎておこる実タイプです。これらを考慮して治療を進めていきます。

治療は10診もしないうちに胃の調子はよくなられました。ツボは、太衝~後溪~公孫というように変化させていきました。

(考察)
現在、このようにストレスや緊張から過食に走る方、大多数ではないでしょうか。甘いものなどは身近かに直ぐ手に入る環境です。要は、そのストレス度合いや過食の程度がどれほどかという問題だけです。逆流性食道炎や胃炎などを繰り返していると胃潰瘍になっていく可能性は大きいです。胃潰瘍は粘膜に傷が付くわけですからそのまま治癒せず繰り返してばかりですと胃ガンにもなりかねません。

鍼灸治療はその方の今の精神状態と体表所見を考え、この先どのようになっていくかが予見でき、また、その悪い予後を防ぐことのできる優れた治療なのです。

根治してこそ意味があります。また、もっと意味のあることは、自分の身体を医者まかせや薬で目隠しするのでは無く自覚し、無理なく制御できる精神状態にまで高めることが大事ではないでしょうか。
この患者さんが身体から心へ、そして心から身体へ善の循環になりますようにいつも応援しています。

2013年3月11日(月)

脱髪 []

西宮市在住 4歳 女の子
主訴:脱髪
初診日:平成25年1月18日

(現病歴)
昨年の12月18日から4日間40℃の発熱があり、気管支炎や結膜炎、副鼻腔炎も併発し入院する。血液検査は異常なし。入院して2日目の朝、髪の毛が10数本抜けていることに気づく。
その後、抜け毛は見られなかったが、今年のお正月の朝、束になって脱髪していた。(数えると120本程)皮膚科にて検査するも異常なし。
その後、ドンドン髪が薄くなってきているように感じる。特に頭頂部が目立つ。別の病院にて「びまん性脱毛症」と診断される。薬を数回使用するも抜け毛が治まらずホームページにて当院を知り来院される。

(既往歴)
・1歳時に風邪から40℃の高熱。その後、突発性発疹が全身にできる。
・2歳~昼寝をほとんどしなくなる。寝付きは20分後、寝ているとき半眼になっている。
・3歳から幼稚園に通うが、年に2回夜1-2時に38℃の発熱がある。時期は不明。翌朝には汗をかいて解熱している。

(七情)
しっかりしていて幼稚園では自分で何でもする。「早く大人になりたい」と言う。
パパが仕事で多忙のため中々会えず、幼稚園の先生に「うち、休みの日にパパいないの・・・」とよく言っているとの事。
ママは子育てに3歳ごろまでイライラしていたので、ママの目を気にしていた。

(診断と治療)
脱髪にも虚と実があります。大きく分けて突然に抜け落ちるのは実で、徐々に抜けていくのは虚に属します。お子さんの脱髪は実がほとんどです。(子どもは陽体ですので実熱に傾き易い)彼女のように、発熱後に髪が突然抜け落ちるのは、「内風(ないふう)」が原因ではないかと思われます。
火がおこれば陽炎(かげろう)のように上部に風がおきますが、熱のためにそれが身体の中でおきる事を内風といいます。
この内風のために髪の毛が抜け落ちる事があります。1歳の頃からよく発熱されていることからも、熱を原因とした脱髪であることは明らかです。

治療は、刺す鍼を使用せずに、古代銀鍼を使用して、熱、特に上部の偏った熱をとり、内風(身体の中でおこった風)を抑える治療を試みました。

(治療結果)
熱感のある百会、手の十井穴、背部右の肝と胆を中心に散鍼を行いました。

便通が毎日良くなり、6診目ごろには殆んど脱毛は無くなり順調に回復しました。
腹部やお臍周辺の緊張も10診目を過ぎた頃から無くなってきました。

(考察)
この子は、本当に大人っぽい4歳で、大人以上に感受性が強いと感じました。
このようなお子さんは、我慢強くワガママを言いません。
大好きなパパと中々会えないことも我慢し、ママも子育てに大変なんだと察して我慢し、発散が少なく体の中に熱を溜め込みやすくなっていったのだと思います。便秘なども身体に熱を溜め込む原因のひとつとなります。

お母さんがこのように治療に連れてきて下さって親子ともに救われたのではないでしょうか。親子の絆は黙っていても通じ合うものです。今後、お母さんも彼女も上手に発散しながら(いろんな方法がありますので自分に合った発散法で)気を巡らし、変な熱を溜め込まなければ、熱を出すことも少なくなりますし大きな病気をすることも無くなります。

今も鍼灸治療に来てくださっていますが、鍼灸治療こそ気の滞りを通じさせていくのに適しています。彼女の我慢強さ、感受性の強さが今後も益々いい方向に活かされますように願っています。