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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2012年5月7日(月)

不妊症 []

西宮市在住 女性 31歳
主訴:不妊症
初診日:平成23年6月

(主訴について)
25歳で結婚。妊娠しないことが気になり病院へ。ご主人精子量少で奇形、本人の卵巣年齢高く機能低下のため、人口受精3回、体外受精6回するも着床せず。ホームページにて来院される。

(その他の情報)
・体外受精してから今まで無かった生理痛が起こる。
・胃がもたれやすい。
・梅雨時身体がだるくなる。
・目が乾燥したりごろごろする。
・多汗(特に上半身)

(特記すべき体表所見)
舌診:暗い赤でやや色が褪せている。白い苔がべったりついている。舌の先から縁にかけて紫色(瘀血)の剥げが目立つ。
脈診:弦脈、右尺位しっかりうっている。(妊娠脈として重要)
原穴診:太衝右虚中実、三陰交右実、太白左虚。
背候診:右肝兪~三焦兪まで虚中実。
腹診:胃土、左肝之相火邪。

(診断と治療方針)
舌の色(舌の先から縁にかけて紫色(瘀血)の剥げが目立つ)の所見から気血の滞りが長く続き瘀血(おけつ)(血液の渋滞でできた産物)考えられる事。舌の苔がべったり付いてる上、梅雨や雨の日に身体が重くなる、もたれやすいなどから湿邪(身体の中に余分な湿気があること)の存在が考えられる事から、血瘀湿熱(おけつしつねつ)による不妊と判断。

治療方針は、胃経を動かし(胃経は水湿の運化と関係が深いため)バランスを調えていくように治療方針を立て、反応のあった胃経上の大巨穴を使用する事とする。

(治療結果)
19診目まで、殆ど大巨穴を使用。下半身が暖かくなってくる。
20診目から後溪穴に変更する。
24診目に妊娠が判明。初めての着床。(体外受精にて)つわりも殆ど無く、37診目に妊娠24週目にはいり、ここから申脉穴に変更。
43診目まで治療を継続し、東京の実家にて6月出産予定。

(考察)
ご結婚されて6年目に初めての着床、妊娠となり本当に喜んでいます。
患者さんは、鍼灸を信じて下さり淡々と治療を継続されました。

右の尺位の脈がはじめからしっかり打っていた事は、早い妊娠に繋がるのではと感じていました。(右の尺位の脈は腎の陽気を伺う脈で妊娠には重要な脈とされてます)また、精神のぶれが無かった事も妊娠に結びつく大きな要因だったと思います。

また、使用した大巨穴について、藤本蓮風著の『経穴解説』では、「北辰会では腹診を行う際に(略)大巨穴を中心とした場所で斜め(上下の左右差)のバランスを大まかにみていくが、このことは言い換えれば先天、後天の関係を診ている事なのである。」と言われています。

先天とは、妊娠にとって非常に大事な腎の気=元気の大元です。後天とは、生まれてから食物等によって脾胃で作られる元気の事です。
この重要な先天(腎)と後天(脾胃)の気のバランスをみながらも、元気を補っていくツボ、それが大巨穴です。妊娠が判明した時は、すでに5週目でしたので、大巨穴がこの患者さんの妊娠に決定打を与えたツボだったのではと考えています。

鍼で顏色も良くなり、生理痛も無くなり、舌の紫の瘀血の剥げも殆ど綺麗になりました。これは、気がドンドンめぐって瘀血が取れてきた証拠です。
母体が健康なら、赤ちゃんも健やかに育ちます。
元気な赤ちゃんのお顔が見れるのを心から楽しみにしています。