初診日: 平成23年9月12日
西宮市在住 女性 52歳
主訴: 膝内側痛
(現病歴)
2週間前から両方の膝が(特に左)重く痛みだす。特に屈伸時と立ち上がる時はひどく痛み、入浴でましになる。今朝からは、腰中央のつっぱり感も出現する。3年前から始めた料理教室の休暇をとり、ホッとした後主訴が出現。1ヶ月前には回転性のめまいや高血圧(一過性)にもなる。
今月末から海外旅行に行くため、それ迄に治したく友人の紹介にて来院される。
(既往歴)
42歳: 橋本病(甲状腺機能低下)
48歳: 逆流性食道炎
(その他の問診事項)
飲食: 食事は玄米。好きなものは甘い物(ケーキ)とパン。口の渇き有り常温を好む。
ニ便: 旅行など環境が変わると便秘する。夜間尿1回。
その他: 運動なし、入浴20分でスッキリする。雨の日や梅雨は調子が悪くなる。
(主な体表観察)
脈診: 1息4至、滑脈の中に渋脈。脈幅やや無し、脈力有力。押し切れ脈無し。
舌診: 淡紅色、白ニ苔。
原穴診: 左合谷 ・後渓・ 太衝 ・衝陽 ・照海虚。右太白虚。
背侯診: 右肺兪実、左肺兪虚、右胃兪・脾兪虚。
(診断と治療方針)
料理教室での精神的な緊張や多忙な毎日から、肝気が鬱結(うっけつ)しやすい状態にあったと考える。肝気の鬱結(うっけつ)とは、本来、伸び伸びと自由にしていてその気の廻りが順調に働くとされている「肝の臓」が、精神的な緊張が続くと気の廻りが停滞し、鬱結するというもの。
特に肝気は上昇しやすいため、更年期などで下半身が弱ると、更に上へ肝気が昇りすぎてしまう傾向にある。回転性のめまいや、高血圧もそのために起こったものと考える。
また、患者さんは普段から甘もの、パンなどを多く摂取しており、特に膝内側に胃腸と関係が深い脾経の経絡に異常を起こしたものと思われる。
下の方に反応が出るのも上下のバランスの乱れであると考えたほうがよい。
よって、まず肝気を巡らせる治療をし、その後に反応を見て脾の臓を立てる治療をすることとする。
1診目~2診目:後渓穴 2番で15分
3診目:外関穴
4診目:滑肉門穴
5診目:百会穴
6診目:梁門穴
(治療効果)
3診目ごろから初診時と比べて痛みはマシになる。5診目には殆ど良くなっただけでなく、ウエストが細くなり身体が軽くなった。
旅行中も痛みは無く帰国される。
(考察)
旅行の為に早く痛みを取りたいとの焦りがあった中、順調に痛みが無くなったことはご本人の正気(自然治癒力)がしっかりしていたためと思います。正気がしっかりしていると気の廻りが速く回復力もよくなるのです。
旅行先でも一日中歩いていたにも関わらず、帰国後も足の痛みが全くないことも、正気の充実と動くことによって気の廻りが良くなった証拠と考えます。
今後、ご自分で甘いものが非常に欲しくなったり(甘いものは鬱結を緩和しますので、気の廻りが滞っていると必要以上に欲しくなります)、何か身体が詰まった感じ、イライラ感が増してくる。このような状態の時こそ、身体の不調の始まりですので、リラックスし運動していただきたいと思います。橋本病も身体のバランスを調えれば良くなっていきます。