豊中市在住 初診時26歳 女性 公務員
主訴:頭痛
初診日:平成20年4月
(既往歴~現病歴)
小さい頃から胃腸が弱く、食べ過ぎるとよく下痢をしていた。12歳の頃から、偏頭痛が発症し、目の前にチカチカした眩しさを伴い焦点が合わなくなってくる。痛みは、氷を食べた時のようなキーンとした激しい痛みで、嘔吐すればすっきりし頭痛も楽になる。この頭痛の繰り返しで学校も休みがちだった。中学、高校とバレーボールクラブに所属していたが、どちらかと言うと休みの日によく頭痛が発症。
就職してからストレスがかかると下痢になり、過敏性腸症候群と診断される。頭痛は、月に2回ほど起こるが、最近一週間前にも痛くなり、鍼灸院に通っているお姉さんの紹介で来院される。
(頭痛の増悪因子):肩こり時、雨の前の日、ストレス、夏、生理中など。
(頭痛の緩解因子):夜、11月から3月の間。
(その他の主な症状)
生理痛、冷え性(特に足)、時々胸焼けする、口内炎が出来やすい、寝つきが少し悪い。
(診断と治療方針)
頭痛は、大きく分けて外感病(風邪が引き金になるもの)と、内傷病(血虚、気虚、血瘀、痰濁、肝陽上亢など)からくるものとに分けられる。
患者さんは、体質的に胃腸が弱く、ストレスにより下痢を起こす上、口内炎がよくでき、頭痛は夏に悪化、比較的涼しい期間は起こらないことから、この頭痛は、胃腸の弱りと熱が関係していると考えた。
胃腸(脾胃)が弱いと肝気が高ぶりやすくなり、また肝気が高ぶると胃腸に問題が起こることは、肝と脾胃のつながりからも考えられる。(東洋医学ではストレス(緊張)がかかるると肝の気が上昇過多になるため「肝気が高ぶる」とも表現する)それは、嘔吐する事によって、頭痛が楽になることからも明らかである。また肝気の高ぶりとそれに伴う熱化は舌診(下記写真)からも十分うかがえる。
以上の理由から、この頭痛は「肝火上炎証」とし、百会穴、肝兪穴、神道穴、後谿穴のいずれか1穴を適宜使用し、治療をする。
(治療経過)
週1~2回の治療を開始してから、1年半の間に軽い頭痛が6?7回程度起こっただけで、薬も全く使用せずにすむ。嘔吐を伴ったものは1~2回あったが外食が続いていた時に発症した。今年に入ってからの8ヶ月間は、ほぼ頭痛は起こらなくなった。また、今まであった生理痛が数回の治療から殆ど無くなるなど体調がよくなり、肝火上炎の内熱のとれ方は舌診にも現れている。(下記写真)
(考察)
患者さんは、趣味で絵を描かれています。(プロ級の上手さ)その絵も、温かさやユニークさ、観察力の素晴らしさ、細かさなど見事なもので、描き出すと魂(こん)を詰めてしまう傾向にあります。魂をつめ過ぎたり、様々なストレス(緊張)は、肝気を高ぶらせ、胃腸(脾胃)の弱りに影響を与え助長させます。小さい頃からの頭痛だったため、いつ起こるのかとの不安が常にありましたが、長い間、頭痛がおこらなくなったため、現在はそのようなトラウマも消えました。また、自分の体質を知り、肝火が高ぶったら頭にアイスノンを置いたり、胃腸が弱らないように体調管理にも気を付けておられます。ますます素晴らしい絵を描いていけますように祈っています。