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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2010年12月14日(火)

頭部ヘルペス []

西宮市在住 初診時40歳 女性 主婦
主訴:頭部ヘルペス(左側頭~右側頭、耳にかけての刺痛)
初診日:平成22年9月27日

(現病歴) 10年前から緊張型偏頭痛が発症、頭全体がハチマキを巻いたように重く、吐き気を催す。数週間前、旅行から帰ってきてホッとした翌日、左側頭が刺痛し、10分おきに同症状が起こる。この刺すような痛みは初めてで、3日目から左耳もキーンと痛み出し耳閉感を伴い、徐々に右側頭部から右耳にかけ、痛みが広がってきた。
ヘルメットをかぶったような、締め付けられる痛みが朝に起こるとその痛みは一日中継続する。
検査しても異常はなく痛み止めを処方され、後日、医者から頭部ヘルペスと診断される。
薬を服用すると両肩が張り、身体が重くなるため来院される。

(既往歴)
29歳:甲状線乳頭ガン(左)摘出手術。
30歳~:緊張型偏頭痛(酷い時は嘔気)。

痛みの増悪因子)イライラ、生理前。
痛みの緩解因子)薬(バッファリン、ロキソニン)、入浴中尚、緊張型頭痛は肩を温めると楽になる。

(その他の症状)
・口内炎ができ易い
・便秘
・風邪を引き易い

(生活状態)
何かに挑戦していないとストレスが溜まり、何事も魂を詰めてしまう性格。偏頭痛はかなり多忙な時期に発症。その後3人の子育てをする中、多忙時に偏頭痛は頻繁に起こる。しかし、気が張っている時は風邪は引かない。

(発症当時の環境)
8月キャンプに行き、疲労したまま多忙な生活を続けた後、風邪を2週間引き扁桃腺を腫らした。多忙のため休めず、そのまま旅行に出発。子ども達をはじめて飛行機に乗せるため緊張していた。その旅行は初めて頭痛もなく快調だったが、帰ってきた次の日から主訴が発症する。

(体表観察所見)
舌所見:暗紅、白膩苔、やや胖大。脈所見:滑弦脈。穴(つぼ)所見:外関左冷、神門左・太淵右・腕骨左虚・太衝右虚中実、心兪左熱、神道、八椎下圧痛、帯脈黒。

(診断と治療方針)
頭痛の原因は何種類もあるが、偏頭痛はイライラ時や生理前に発症していることから肝気が過度に上昇した故の頭痛と思われる。そこへ風邪を治さないまま内陥(奥に沈めてしまう)させ、病を少陽に追い込んだために激しい痛みが出たものと思われる。少陽胆経の経絡、経筋が丁度、痛い部分を通っていることからも明らかである。
風邪も関わっていることから、左心兪穴を選穴した。

(治療経過)
1診目~5診目まで心兪
6診目~9診目まで天枢

現在完全に頭痛は消失する。途中かなり痛いときもあったが、チョコレートケーキを毎日食していたとの事。チョコレートケーキをやめ、散歩を勧める。

(考察)普段から緊張状態にある人は、ホッとした時などに風邪を引いたり、症状が悪化する時があります。
患者さんも、緊張状態の中、旅行に出かけ、帰宅してホッとした時に発症しています。
刺痛になったのは、風邪を治さず、病を少陽という一歩深いところに追いやったことが考えられます。北辰会代表、藤本蓮風先生は、「臓腑経絡学」の中で、「肺結核等に使用するストレプトマイシンやカナマイシンを使って耳が聞こえなくなるのも、殆どが病を少陽に追い込んでいるのであり、風邪引きの途中で耳が聞こえないとか耳鳴りがするのも同様である」と言われています。
1回目の治療の後、久しぶりに頭痛が無くなったことを喜ばれていたのですが、途中、チョコレートを過食し再度痛みが発症しました。肝気を熱と共に上げてしまったからです。
頭痛の前に頭がピリピリして熱くなることから、過度のストレスや、にんにく、ピーナッツ、油物など熱化する食は控える事。頭のピリピリが起こったら休むという習慣をつけることが今後、大きな病を防ぐことに繋がると思います。

2010年9月10日(金)

頭痛 []

豊中市在住 初診時26歳 女性 公務員
主訴:頭痛
初診日:平成20年4月

(既往歴~現病歴)
小さい頃から胃腸が弱く、食べ過ぎるとよく下痢をしていた。12歳の頃から、偏頭痛が発症し、目の前にチカチカした眩しさを伴い焦点が合わなくなってくる。痛みは、氷を食べた時のようなキーンとした激しい痛みで、嘔吐すればすっきりし頭痛も楽になる。この頭痛の繰り返しで学校も休みがちだった。中学、高校とバレーボールクラブに所属していたが、どちらかと言うと休みの日によく頭痛が発症。
就職してからストレスがかかると下痢になり、過敏性腸症候群と診断される。頭痛は、月に2回ほど起こるが、最近一週間前にも痛くなり、鍼灸院に通っているお姉さんの紹介で来院される。

(頭痛の増悪因子):肩こり時、雨の前の日、ストレス、夏、生理中など。
(頭痛の緩解因子):夜、11月から3月の間。

(その他の主な症状)
生理痛、冷え性(特に足)、時々胸焼けする、口内炎が出来やすい、寝つきが少し悪い。

(診断と治療方針)
頭痛は、大きく分けて外感病(風邪が引き金になるもの)と、内傷病(血虚、気虚、血瘀、痰濁、肝陽上亢など)からくるものとに分けられる。
患者さんは、体質的に胃腸が弱く、ストレスにより下痢を起こす上、口内炎がよくでき、頭痛は夏に悪化、比較的涼しい期間は起こらないことから、この頭痛は、胃腸の弱りと熱が関係していると考えた。
胃腸(脾胃)が弱いと肝気が高ぶりやすくなり、また肝気が高ぶると胃腸に問題が起こることは、肝と脾胃のつながりからも考えられる。(東洋医学ではストレス(緊張)がかかるると肝の気が上昇過多になるため「肝気が高ぶる」とも表現する)それは、嘔吐する事によって、頭痛が楽になることからも明らかである。また肝気の高ぶりとそれに伴う熱化は舌診(下記写真)からも十分うかがえる。

以上の理由から、この頭痛は「肝火上炎証」とし、百会穴、肝兪穴、神道穴、後谿穴のいずれか1穴を適宜使用し、治療をする。

(治療経過)
週1~2回の治療を開始してから、1年半の間に軽い頭痛が6?7回程度起こっただけで、薬も全く使用せずにすむ。嘔吐を伴ったものは1~2回あったが外食が続いていた時に発症した。今年に入ってからの8ヶ月間は、ほぼ頭痛は起こらなくなった。また、今まであった生理痛が数回の治療から殆ど無くなるなど体調がよくなり、肝火上炎の内熱のとれ方は舌診にも現れている。(下記写真)

(考察)
患者さんは、趣味で絵を描かれています。(プロ級の上手さ)その絵も、温かさやユニークさ、観察力の素晴らしさ、細かさなど見事なもので、描き出すと魂(こん)を詰めてしまう傾向にあります。魂をつめ過ぎたり、様々なストレス(緊張)は、肝気を高ぶらせ、胃腸(脾胃)の弱りに影響を与え助長させます。小さい頃からの頭痛だったため、いつ起こるのかとの不安が常にありましたが、長い間、頭痛がおこらなくなったため、現在はそのようなトラウマも消えました。また、自分の体質を知り、肝火が高ぶったら頭にアイスノンを置いたり、胃腸が弱らないように体調管理にも気を付けておられます。ますます素晴らしい絵を描いていけますように祈っています。