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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2018年4月14日(土)

起立性調節障害 []

【主訴】起立性調節障害 11歳 男子 135cm、25kg

【症状】寝つきが悪く朝起きれない、易疲労、じっと座っていられない等。

【経過】小学校4年生から塾に通い帰宅が夜10時になる。その頃から寝つきに1時間以上かかるようになり、学校や塾で頭痛から嘔吐を繰り返す。学校も塾も無い土日には起こらない。病院で起立性調節障害と診断。学校にも塾にも全く行けなくなり来院される。自宅では読書とゲーム(1時間)をして過ごす。食欲もなく(普段から)痩せている。

【七情】真面目で正義感が強く、集中力があり感情の波が殆ど無い(母親談話)。問診中も爪を噛んだりソワソワと落ち着かない様子で口数はかなり少ない。

【その他】多汗(頭、足底と手掌)、1歳からアトピー、よく風邪(発熱のみ)を引く、副鼻腔炎。

【診断】幼いころから神経過敏の上、感情を内に込めるタイプのため、肝気(発散できないストレス)が脾胃(胃腸)の働きを抑え食欲不振を起こしていると考えました。
また、若い男子(陽体)、アトピー(熱性疾患)等体内に邪熱を篭らせ身体を潤す陰液も消耗している所、塾等のストレスでそれらが更に助長され入眠困難(陽過多陰不足)が発症したと思われます。
この様な症状が一年以上継続すると、肝の臓から心の臓(心気の巡りが悪くなり心血の不足の悪循環)の異変が生じ易くなります。

【治療方針】心血を補いつつ気鬱を緩解し心身に緩みを与える治療を施す。神経過敏の為かざすだけの古代鍼を使用。

【治療】18診中15診は公孫、2診は百会、1診は太衝にそれぞれ翳す鍼を施す。

【効果】初診時から顔色が明るくなり3診目には寝つきがよくなる。7診目には塾の算数の試験が受けられる。9診目頃は朝も起きやすくなり体重も増え体力が出てくる。15診目には塾に通えるようになり学校にも週3回程行けるようになる。現在、毎日学校に通えるようになる。

【考察】
公孫の古代鍼で顕著な効果が現れました。乳幼児や敏感な人(鍼が恐い人や肌理が非常に細かい人等)にはこのように刺さない鍼を用いています。
体表を守っている衛気というのは気の動きがとても速いです。況してや敏感な男の子です。反応のあるツボに翳しただけで全身の気血が素早く巡り効果が現れるのだと思います。

公孫は、藤本蓮風著『経穴解説』には、衝脈が関与し血に関わる、気が衝きあがるものに有効、心腹五臓の病を治す、腎経寄りに取ると腎の絡脈の気もうける等々言われています。

上焦(上部)特に心の臓に衝きあがった気を引き下げながら、全身に気血を巡らせる心持ちで古代鍼を使用しました。

御家族も元気になっていく姿に驚かれています。体重が増え笑顔も見られるようになりました。体から心へ働きかける鍼が奏功し嬉しい限りです。

最近同症状の思春期の子供達が急増しています。この男の子をみていても学校に行かなくなってから「ゲーム1時間」と上記にありましたが、1時間で止めれるのが驚きです。親が決めたか本人の意志かは分かりませんがいずれにしても「真面目で優しく我慢強い」が過ぎてしまって「反抗出来ない子」に多いように感じます。

反抗は発散でもあります。自立しようとする時期には反抗はつきものです。反抗出来ない性格や状況にある時、バランスが偏り逃げ場が無くなって発症するようにも感じました。

2013年5月24日(金)

慢性肩こりと糖尿病 []

川西市在住 62歳 女性
主訴:慢性肩こりと糖尿病
初診日:平成25年3月初旬

(現病歴)
出産を終えた30代から働き出すようになり、ストレスがかかると、今までの油物の多い食事に加えて、お饅頭、ケーキ、カステラ等々甘い物を更に食すようになる。40代に職場で女性同士のトラブルがあり、精神的にも疲れていたところ、検査すると糖尿病が発覚。
歩くようにしてから、体重も減少し、調子も良くなってくるが、閉経をきっかけにホットフラッシュや肩こりも酷くなり、イライラし易くなる。同居している実母の体調が思わしくなく、今まで手伝ってもらっていた家事の負担がかかり、眠りも浅くなる。時々、3時~4時に目が覚めてから眠れなくなる。現在は甘いものに気を付けてはいるものの、糖尿の数値(グルコース値、HbA1c)は不安定で両方とも正常値になった事がない。
肩こりは、動かしたり入浴や散歩でましになり、神経を使ったりイライラしたときや静止時に悪化する。冷えると腰痛が出る。鍼灸院にはご近所の友人の紹介で来院される。

(その他の問診事項)
・口渇:咽喉の渇きがあり、緑茶、紅茶、ハーブティー等温かい飲み物を一気に飲む。
・大小便:環境変化や精神的緊張で便秘する、夜間尿1回(閉経後から)。
・排泄物:少汗(額、首、腋下、殿部、足底など)寝汗無し、目やに有り。
・目・爪:目が疲れてゴロゴロする、爪は割れやすい。

(負荷試験)
・入浴時間30分でスッキリして疲労感がとれる、1時間散歩でスッキリ。

(体表観察情報)
・顔面気色診:黄・赤。心・肝・腎・胃。・舌診:淡紅舌、中焦~下焦の白厚膩苔、湿潤、舌下静脈怒張。脈診:1息4至、弦脈、脈幅やや無し、左尺位弱。原穴診:左後溪、右太衝、左合谷、左申脈。背候診:右肺兪から心兪虚、左肝兪から胃兪実。左腎兪と志室虚冷。腹診:心下、左肝之相火、臍周邪。

(診断と治療)
以上の情報から、頑張りすぎる事から、精神的にも緊張し気が上にあがり過ぎて肩がこる事、年齢的なものからも腎の弱り(陽虚=冷え)がみられ、更に上下のアンバランスが生じています。この2点から治療配穴を考えました。糖尿病も精神が安定すれば過食にも走らなくなり、脾胃にも負担がかからなくなりますので治癒していきます。

初診のみ実側の後溪(左)に10分置鍼し上部の緊張をまず緩めました。2診目から7診目まで冷えて虚している方の申脈(左)に25分置鍼し下部を補って安定させます。

(治療結果と考察)
1診目の舌写真(治療前と治療後 下記添付)からも分かるように、非常に気の動きがいい方ですので、治りも速いとみました。舌ですが全体的に赤みが無かったものが、赤味が出てきた事、また、舌先の紅点が多く見られるようになったことから、沈んでいたものが浮いてきたのではと考えました。その後、申脈に治療を施すと見る見るうちに中央から奥にあった厚い苔が薄くなってきて身体が改善されてきました。(下記写真添付)

7診目の検査結果で糖尿の数値が初めて正常値になり大変喜ばれていらっしゃいます。
このように気の動きの速い人は数回の治療でも長年の病が治っていきますし、喜びの気持ちが更に気の巡りを良くしていきます。いい循環になり本当に嬉しいです。

東洋医学では、病名は病を大きく捉えるために(熱傾向なのか冷なのか云々)必要ですが、基本的にはどのような病名であっても、ツボの状態等をみて総合的に判断し、何故今の病が発症したのか、また今はどの位置に病があるのか、更に今後の状態をも予測していきます。
ですから、難病といわれるものも治っていくのです。


初診時 治療前


初診時 治療後


8診目 舌背


8診目 舌腹

2011年9月3日(土)

糖尿病 []

和泉市在住 58歳 男性 サービス業
主訴:糖尿病
再診日:平成23年4月初旬

(現病歴)
高校を卒業時点で体重82キロ。24歳で緑内障になり、鍼灸治療(実千代鍼灸院の先代)にて眼圧が下がる。食事は油物が好きな上、ジュースをよく飲んでいた。
ある日、運転中ハンドルを握っていると両方の指先がしびれてきたことがあった。50歳のころ胆石のため胆嚢を摘出。この頃タバコを止めたが10キロ更に太る。食生活は、油物に加え、ご飯、おかき等塩分が多かった。この頃から便秘、夜間尿、尿切れが悪い、腰痛、ばね指(右)なども起こった。現在も右手は握りにくい。
昨年あたりから、夏の暑さが堪えるようになり、疲れが増すようになる。
ジムで運動したりウォーキングに挑戦するようになるが、今年、自分で尿糖検査薬でしらべたところ、陽性反応が出る。病院にて血糖値240、HbA1c12で糖尿病といわれる。
仕事は、長年営業職。99パーセント外まわりで、気を使う仕事。帰宅時間もばらばらで生活は不規則。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅色、白膩苔、舌が腫れぼったい、舌下静脈怒張が酷い。
脈診:1息3至、滑脉、尺位弱、脈力有り、脈幅なし。
原穴診:虚(右合谷・京骨・丘墟・照海、左陽池・太白)実(左太衝・衝陽)
背候診:圧痛(巨闕兪・神道・霊台・筋縮・懸枢・腰陽關)、左厥陰兪、心兪虚中実、右心兪から腎兪まで虚。
腹診:左脾墓から肝相火。

(診断と治療穴)
東洋医学では、糖尿病を消渇(しょうかつ)といい、飲食の不節制(過食や油物の摂取過多)、情志の失調(ストレス)、房労による傷腎(セックス過多や仕事過多による腎の弱り)、先天的な虚弱、身体を温める薬の過服用などをその病気の原因としてる。
この患者さんも、飲食において油物が多いだけでなく、年齢的に腎の藏が弱る頃に塩分過多などで、更に腎を弱らせていることが考えられる。下に位置する腎の臓の弱りはストレスにより簡単に肝気を上昇させる。(肝気を高ぶらせイライラするなど)
その上、ストレスがかかると余計に好きなもの(油物など)を欲するようになり飲食に節度がなくなってくる。
大本は、ストレス過多による飲食の不摂生であったところ、どんどん胃腸を弱らせたために発症したものと考え、まずは、胃腸の代表ツボである公孫を選穴した。同時に風邪によって(風邪を引くと、風寒邪が体表にある毛穴を塞いでしまうため)身体の中にある邪熱を閉じ込めてしまい、糖尿が悪化する。よって風邪に効果があり反応が顕著だった外関穴を使用し、後に肝のツボなどでストレスを緩和させていく方法とした。

(配穴)
初診から2診目:公孫、外関。15分
3診目から4診目:滑肉門。25分
5診目から10診目:太衝。25分
11診目から16診目:後溪。25分
17診目から19診目:滑肉門。25分
20診目から25診目:梁門。25分

(治療効果)
治療当初から尿の回数が少し減少し、脈の状態、舌の状態(苔が薄くなるなど)反応が顕著に見られた。2週間後の検査にて、血糖値240から150に数値が下がる。HbA1c12は変化なし。しかし、14診目ごろからヘモグロビンは7.7に減少、19診目で6.5になり、23診目に5.9になりほぼ正常値になる。血糖値も120代まで下がる。体重は、9診目でマイナス6キロとなり、ズボンを買い換えないといけないほど細くなる。

(考察)
日本の糖尿病及び糖尿病予備軍の数は、前回の調査(3年ごとに調査)から250万人増加し、計1870万人と推定されています。(厚生労働省平成18年調査から) 40歳から74歳の中高年男性では32.2パーセント、女性は31.5パーセントが糖尿病患者、及び予備軍です。しかし、初期段階では自覚症状がないため治療を受けている人は患者数の10分の1とのことです。口渇、多飲、多尿という典型的な症状が出たら要注意なのですが、ご本人はあまり気づいていない場合が多いのが現状です。
上記の患者さんは、かなり数値が悪かったにも関わらず、薬も服用せずに改善に向かいました。これは、奥様の食事(1800カロリーに抑えた)の努力と適度な運動が良かった事は勿論ですが、このように早期に改善した事は、遠方から鍼灸治療に熱心に通われたことが効を奏したのだと確信します。
治すんだとの患者さんの意思と、その心にお応えしようとの施術者の思いあってこそ達成されたのだと嬉しく思います。糖尿病は生活習慣病です。生活習慣の改善は簡単なようで非常に難しいのが現状でしょう。しかし、身体からバランスをとっていけば、無理なく食事の改善や運動などに挑戦しようとの意欲も出てきますし、それらが鍼の効果を更にアップさせるという好循環が生じます。58歳、まだまだ第一線です。この年齢に病気をされる人が多い中、ますますお元気で若々しく人生を謳歌して頂きたいです。