言葉によって元気になる
言葉によって安心する
言葉によって慰められる
反対に
言葉によって悲しくなる
言葉によって怒りがふつふつ湧いてくる
さりげない言葉で人の心は揺れ動きます。
鍼の技術はもちろんのこと、ここ実千代鍼灸院では、先生と患者さんの言葉のやりとりから学ぶことはとても多いです。
話をただ聞く時も、励ますときも、叱咤激励するときも、絶妙なタイミングで絶妙な言葉かけ。
時には明るく、時には静かに、時にはユーモアも交えながら。
この言葉による気の交流があってこそ生かされてくる鍼の力。
自分の思いをただ伝えるのではなく、患者さんのことを思って湧いてくる言葉だからこそ、相手の心を掴むのでしょう。
格好つけるのでも、偉くみせようとするのでもなく、ただ心を無にして、素直に相手の心を感じ取る。
鍼の技術と共に、自分の心も磨いていきたいと思います。
副島香織
「お母さんの看護師さん」
実千代先生がそう呼ぶ方がいらっしゃいます。
患者さんは脳疾患を患って以降、ご自分で話したり、体を思うように動かしたりできません。
娘さんがご自宅で介護をされています。
この娘さんが「看護師さん」
お母様の少しの変化も見逃しません。顔色、目の動き、痰の性状、手足の冷え、食事の食べ方…挙げればきりがありません。
異常事態が発生すれば、すぐに連絡が入ります。
ご自宅での対応を先生から教えてもらい、次に診療に来られた時には、お元気な顔に…ということもよくあること。
嚥下がスムーズに行えないお母さんに、美味しくかつ食べやすいお食事を工夫して作り、ゆっくり食べさせてあげる、車椅子からベッドへの移動もお手のもの。
こんな有能な看護師を持つお母様はなんて幸せなんでしょうか。
自宅での介護は、周囲からはわからないような大変なことがたくさんあるはずです。
けれど、いつも笑顔で、ユーモアたっぷりにお母様の様子を話す娘さん。
そのような方々に優しい社会であってほしいと、切に願います。
と同時に、私も鍼灸師としていつかそのような方々の助けになりたいと思います。
副島香織
目標を同じくする仲間は心をひとつにすることが大切です。
自分のプライドや私欲、思惑は捨てて、相手が何を思い、どうしようとしてるのかを考えて。
家族、友人、組織、治療者と患者さん。
心をひとつにすることで想像以上の力が生まれるはずです。
1+1+1=3
算数ではこの答えが正解ですが
人間同志は5にも10にも
団結力が大きければ100にも万にだってできると思います。
人間にはそれだけの強さと優しさと智慧があると信じています。
私たちスタッフも実千代先生と心をひとつにして、患者さんと向き合っていきたいと思います。
副島香織
4月から実千代鍼灸院のスタッフとなる以前は、週一回、土曜日だけこちらで働いていました。
土曜日の患者さんは、お仕事が休みの方や学校が休みの子ども達が中心でした。時には保育園のように賑やかになることも。
毎日働くようになりそれぞれの曜日や時間によって色があることを知りました。
平日の午前中は、家庭を守る主婦や、まだ幼稚園入園前の小さな子ども達、平日に休みがある方やお仕事を引退された方が中心になります。
そして夕方からは仕事帰りの方や学校帰りの子ども達。
「治療院に患者さんが入ってきた瞬間から、治療は始まる」とは、北辰会代表藤本蓮風先生の言葉。
ドアを開けたその瞬間、患者さんは様々な表情をされています。
仕事が終わり、「ようやくたどり着きました」という表情。
体調がすぐれず「先生、なんとかしてください」という表情。
鍼治療を続けて「元気になってきました」という表情。
表情だけでなく、服装や歩き方、お化粧の仕方、発する生命力からも体調を推し量ることができます。
そして、治療を終えて帰って行かれるとき、表情や足取りにどんな変化があるのかを感じながら見送ります。
明るい表情、力が抜けた表情、軽い足どり、笑顔が見られるととても嬉しくなります。
飾らずに、ありのままで肩の力を抜いて、様々な表情を見せてれる場所。
そんな雰囲気づくりの一役を担いたいと思っています。
副島香織
雨上がりの薔薇
晴れの日が続いた後に降る雨。
乾いた土が水を吸収し、植物がみずみずしく元気になり、空気もきれいに洗い流される。
雨は決して嫌いではありません。
ただ…
私が雨を苦手とする時
それは、脾が弱っているときです。
東洋医学で、脾は食物から栄養分を吸収し全身に巡らせる、いわば「元気のもと」を作り出す臓。そして「脾は湿を悪む」と言われるように、湿気や体内の余分な水分が苦手です。
食べ過ぎ、精神的ストレス、過労、様々な理由で脾を痛めた結果、雨の日に体が重だるくなったり、やたら眠くなったり、体がむくみやすくなったり、馬力や気力が衰えます。
私の一番のバロメーターは、お酒を飲んだ次の日や、雨の日の目の周りのむくみです。
こんな時には、たとえ食欲があっても、脾への負担を減らすためにできるだけあっさりしたものをよく噛んで食べるようにします。
特に、チーズやおかき(餅米が原料)日本酒のように体内で湿を生みやすい食べ物を避けます。
脾の働きをよくするために、よく歩くようにします。
そして、鍼。
自然界にとっては、恵みの雨。
この雨を嫌いにならないように、梅雨に向けてしっかり脾を盛り立てていきたいと思います。
副島香織