(逆流性食道炎って?)
最近、「逆流性食道炎」と病名をつけられて来られる患者さんが多い。
それも、皆、何ヶ所も病院を回って精神的にも疲れ果てて我が院に来られる。
ある方は、それぞれの病院で様々な薬を処方されたが、最後に行った有名な某大学病院では、「薬は全て止めてください」と言われ今までの治療に不信感を持ったとの事。
また、ある方は、半断食を勧められ体重は激減、今は食べる事に恐怖感がある上、痛みから解放されないと来院された。
胃酸は金属をも溶かす程の強い酸。そんな胃酸が必要以上に分泌されれば潰瘍が出来るのも当然だろう。
逆流性食道炎は字の如く、この胃酸が何らかの原因で食道へ逆流することで食道粘膜が炎症を起こし、胸焼け、呑酸(ゲップ)、食欲不振、胸痛などを起こす疾患だ。
(誤診恐るべし)
逆流性食道炎と言えば、膵臓癌で亡くなった母のことを思い出す。
普段から、食欲不振や胸焼けをよく起こしていた母の一番の訴えは胸痛だった。初めていった病院では「狭心症の疑い」との診断を受け、ニトロを服用するも効果は全く無く、母を心配する兄の方がニトロを服用してみて楽になる始末。
この狭心症との診断から4~5箇所全て循環器系に紹介状を次々と回された。
誤診恐るべし。
病人が多い為かどうか、オートマティカルな大病院の診察に驚くことばかりだった。
弱りきった母に何度も何度も自転車こぎなどの負荷試験をさせた。
絶対、循環器系ではないと思い、近くのクリニックに母を連れて行った。
胸痛は「逆流性食道炎」との診断だった。結局大本は膵臓癌が悪さをしていた。
母の病名は信じられなかったが、的確な診断に今までのもつれた疑問の糸が解けていった当時の感覚を忘れる事は出来ない。
(薬は一生飲む物ではない)
先日、このドクターの一般市民向けの胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎のお話を少し聞きに行った。
今の時点では、日本人の8割の人が持っているという「ピロリ菌」の存在も潰瘍や食道炎の原因のひとつになっている事。
また、それは、ストレス、お酒、脂っこい物の過飲過食などが原因で、粘膜を「防御(守り)する因子」より「攻撃する因子」が多くなりバランスを崩し潰瘍を作る事。
自分で、ある程度生活を見直してみて症状が取れなかったら検査して、ピロリ菌を滅菌する薬を一週間程服用すれば殆どピロリはいなくなる事などなど。
また、薬に関して、薬は一生止められない物では無く、ある程度良くなったら「ほっとく」のが良いらしい。
理由は無かったが、こんな正直なドクターもいるのだと可笑しくなった。
薬で攻撃し過ぎてしまうと、かえって防御因子まで攻撃して自分で立ち直る力(自然治癒力)が無くなってしまうからだろう。
(ソフトパワーとハードパワーのバランス)
西洋医学が細菌や病巣を攻撃するハードパワーとしたら、東洋医学は自分の中にある自然治癒力を高めて、病気にかからないようにしたり、かかっても治そうとする力を誘引するソフトパワーと言えるかもしれない。
実際、私も、先月リンパ管炎で足が腫れあがり、生まれて初めて滅菌する抗生物質を使ったが、はじめの驚くほどの効果に感謝感謝だった。
しかし、未だに完治しない足に、自分の防御因子(自然治癒力)が相当弱っているのだと大反省している。
いづれにしても、薬漬けにされて来院される多くの患者さんの訴えを聞けば聞くほど、防御因子までをも破壊しない程度の、ひとりひとりに対しての心ある薬の使い方の重要性を痛切に感じる。と共に、今後近い将来、益々防御因子を高める東洋医学の思想が見直されることは必然だと実感する。
(主婦恐るべし)
最近、私が驚いている事のひとつに、良くも悪くも主婦の病院に対する口コミの情報量だ。
数人のご婦人達と話をしていると、どこまで知ってるの?というほど近所にある○○クリニックの情報を入手し交換し合っている。
内科、整形外科、歯医者、皮膚科、婦人科、接骨院にいたるまで話は尽きず超具体的。
看護士さんに至るまで名前入りで・・ホームページもタジタジだろう。
当然、主観が入っているので全てをそのまま受け止めることはできないが、目が回るほどの情報量にはあっぱれだ。
また、一人ひとりが医者に対して何を欲しているかが見えてくるのが何といっても楽しい。
以前、何かの講演会である人が医者に「先生、いい医者と悪い医者の見分け方教えてください」と質問をしていた。
その医者は某医大の教授でもあった。「ひとつは薬を極力出さない先生。もうひとつは、良いうわさがある先生。」との答えだった。単純な中にもちょっと心の中で拍手を送ってしまった。
(どこで、誰に、いつ検査を受けるか)
「私は元気だからいつ検査したらいいかが分からない」「月1回検査をしていたのに2年後にガン末期といわれた」「タバコをすっているので肺がん検診に行ったが、その後に分かったことは、実はすい臓がん末期だった」「5回も週1回検査されただけで全く自分の訴えを聞いてくれない」などなど様々話を聞く。
実際私の母も、胸が痛いと訴え5~6箇所の病院を回ったが原因不明。心療内科へ行くように言われる始末。
結局、近所の町医者が発見してくださり、すでにすい臓がん末期状態だった。
いつ、どこで、誰に検査を受けるのかは非常に重要なことだと感じる。
今は3人にひとりが癌で亡くなる時代。尚のことだ。
自分は癌にならないとはひとりとして言い切れない時代に入ってしまった。
(黄色信号を見過ごさないで)
どんな人が年に一回は検査を受けたほうがいいと思う?と問われたら。私の一般的な考えは次の4つだ。
1、長期にわたってストレスを溜め込んでいる人。
2、生活習慣(睡眠、食事)がめちゃくちゃな人。
3、普段と違う症状が続く人。
4、50歳を超えたら。
5、両親、兄弟など癌家系の人。
しかし私の鍼灸院に来られる患者さんには
超神経質で検査しないと気になって仕方ない人。ともう1つは、患者さんの訴えと、脈、舌、身体のツボなどの反応が鍼をしても変化せず悪い場合には検査を積極的に勧めている。
鍼灸院には肩こり、腰痛は勿論、癲癇や精神疾患、片麻痺、筋萎縮性側索硬化症、癌に至るまで様々な人が現在来て下さっているが、単なる肩こり、腰痛と思っていたら大間違いの病気も多々ある。
昨年も腰痛で来院された人で、症状や東洋医学での所見がおかしかったので検査を勧めたら癌の末期ということがあった。
実際、自分の生活習慣を見直し、その人なりに運動などストレスの発散をしてみて、尚、症状に変化がないのは黄色信号と思っていいのでは?
何でも薬に頼っていたら、何が黄色信号か分からなくなってしまう。
(心ある医療)
東洋医学は検査に出ない部分をも、患者さんの身体に触れ、問診をとって生活習慣や性格の一端をうかがい知り、見つけていく。精神と身体を決して切り離さず身体全体のアンバランスを見つけていく。
西洋医学も様々検査をして病を見つけていく。
どちらも今の医療には必要なものと感じるが、西洋東洋関係なく最低限必要だと思うことがある。
それは、術者は患者さんの痛いところに触れること。
温かい目を向けること。
心ある言葉を発すること。
これらは当たり前のようで現実は真反対が多いのでは?
その上での、技術、理論だと強く感じる。
今年友人のお母さんが救急車で運ばれたときのこと。
某病院の医者がパソコンを見たままボソボソ何かをつぶやき、血液検査を始めだすと「出て行って。早く出て行って!」と私たちに言ったあの声と姿は一生忘れることはできない。
アメリカを代表する医学部の教授も務められたジャーナリストのノーマン・カズンズ博士の言葉に「医師の主な役目のひとつは、患者自身が持つ、病気撃退のために心身のエネルギーを動員する能力を百パーセント発揮させることである」との言葉をかみしめたい。
(庶民は名医)
先日、長年アメリカに在住している友人に出会った。
彼女は仕事はしていないが、沢山の人と接する、云わばよろずや相談のようなボランティア活動をしている。
「アメリカも癌の人多い?」と聞くと「多いよ」と。
癌の人から話を聞くと皆大きなストレスを抱えている。とのこと。彼女いわく、ストレスの中でも、みな抱えているのが「怨執(おんしつ)」だという。
一言で言うと対人間への怨みつらみのことだ。
かなり納得できる。怨みつらみまではいかなくても、長年にわたってひとつの事を悩み続けていれば、かなり病にかかるリスクは高くなるだろう。
努力ではどうしようもできない感情的なものこそ大きなストレスとなるのだろう。
人間関係とはかくも難しいものだと感じた事のない人はいないのではないか。
夫婦関係然り、職場での人間関係然り、近所のお付き合いなども。最近では親子関係の悪化も深刻さが目立つ。
とにかく「この人さえいなければ~~~!」と思ってしまう存在。
それも長年にわたっての存在。これこそストレスの根元。
(相手のせい?)
しかし、良く考えれば、自分が嫌な思いをするのは結局「相手のせい?」かどうか…いろんな意見はあるだろうが、
ここで私が最も問題と思うのは、相手を攻めるこちらの生命状態だ。
相手への攻撃という激しい生命状態は、結局その矢は自分の健康状態を損なってしまうのだ。
怒りの生命は、東洋医学では「肝の臓」に属する。
「肝の臓」は猛々しくエネルギーの活力ともいうべき大事な臓だが、伸び伸び出来ないところに「肝鬱気滞(かんうつきたい)」といって、様々な気と血の滞りを作ってしまう。
その肝鬱気滞が長引けば、塊を形成してしまう。
この塊こそ、癌の大本と考えられるのだ。
結局、相手を攻めてしまう自分自身の生命の状態にストレスの根元があるといってもいいのではないか。
とはいっても、現実はそう簡単ではない。どう考えても相手が悪い場合もあるし、どうしようもなく抜け出せない環境もある。
(ストレスからの脱却)
では、どうすれば、このようなストレスから心を開放させることができるのか?
考え方を変えたり、逃げたりすればいいことは誰でも分かるがそんな簡単にはいかないのが現実。
しかし、これもひとつの技があるのかもしれないが、東洋医学的に見ても、相手はどうあれ、自分自身の「詰まったものを通じさせる事」しかない。
通じさせるには吐き出すしかないということだ。
過食症の方がおられたが、食べて食べて食べまくって、最後に指を突っ込んで吐き出すのだ。深い理由がある。満たされない事を、食で満たし、吐きだしてすっきりさせる。これは大きく感情と結びついている。
よって、胃はかなりの負担がかかるが、他に解消法が無いのなら、決して食べたらだめとは言ってはいけない事も学ばせていただいた。
とにかくも、今の自分の感情を吐き出すこと。アドバイスをもらうのでもなく、ただ話を「うんうん」と聞いてくれる人。この存在が大きいと感じる。
そんな人がいない人もいるかもしれない。いなければ、身体を動かせて発散してほしい。または、「ストレス解消ノート」などを作成して感情を書き出すのもいいのでは?
書いたらすぐ捨てたほうが得策とは思うが・・・・
また、ストレス=緊張の反対は、ゆるみだ。
ゆるみは、心からの笑い、人を大切に思う心、嬉しい気持ち、温かい心、満足の気持ちなどなど誰もが持っている本来の人間らしい感情だ。
その根底には「感謝」の2字が潜んでいるように感じる。
(心と身体は一体)
私は、心と身体は一体と捉える東洋医学に携わる者として、常にこの緊張と弛緩のバランスを考えて治療にあたっている。
また、鍼灸治療では特別なアドバイスが無くても、鍼という技術で気血の滞りを通じさせるバランスをとることが出来る。
鍼灸は本当にこれからの医療に無くてはならないものと日々実感を深くする。
もう21世紀は、薬のみで症状を抑える治療では追いつかないことは、心ある医療関係者そして庶民が一番分かっている事ではないだろうか。
(カナダの気候)
長いお盆休みを頂き、初めての海外旅行という73才の父を連れてカナダに行って来た。
実は象のように腫れ上がった私の左足は、豚足(トンソク)程のサイズになったものの、まだ完全には治らないまま強行の旅に出た。
それも、カナディアンロッキーの方を目指して。
足の状態から「湿熱」である事は間違いないので、熱になるアルコールは一切断ち、油物も控え、湿にならないよう食べ過ぎず、半分量の食事に気をつけて出発した。
さて、8月のカナダは18℃~23℃で本当に涼しく、澄み切った空気だった。
みると私の豚足はみるみる小さくなり、赤みも無くなり、閉まらなかった靴のファスナーも閉まり、驚くほどの回復ぶりだった。
湿熱とは真反対の乾燥した涼しい気候に反応したのだろう。
乗馬はできる、1億年前の氷河の上で遊べる、トレッキングも出来るなどなど足の状態はすっかり良くなってしまった。
湿熱の患者さんの顔が次々に浮かんできた。連れて来てあげたいと思わずにはいられなかった。
カナダでの食事は当然ながら洋食。肉や油物がほとんどだったが気候のおかげで何を食べても胃(Stomach)はすっきりもたれなかった。
日本、とりわけ関西のこの夏の湿気と暑さ(熱)。これだけで胃の状態は悪く身体は重くなる。そこへ、過食の運動不足ともなれば病気しないことなどありえない話だ。
患者さんの中にもハワイやスペイン、グアムなどに住んでいた方も多く、問診をとると乾燥した涼しい地域にいる時はアトピー、リュウマチ、頑固な湿疹などすっかり治ってしまうんです。と一同に言われる。
気候と体調がどれほど関わりが深いか身をもって体験した。
(湿熱度チェック)
では、自分の湿熱度チェックをしてみよう。
1、朝、目やにがよく出る。
2、汗がベトベトしている。
3、便が粘っている上、臭いがきつい。
4、耳垢がいつも湿っている。
5、尿に泡がたつ。
6、虫に刺された後や傷の後が膿みやすい。
7、体臭がある。(足の臭いも含む)
8、痰が出る。
9、フケがひどい。
10、水虫がある。
11、毎日髪の毛を洗わないとべたつく。
12、蓄膿がある。
13、子宮筋腫がある。
実はこの場合、1つでも当てはまっている人は湿熱体質といっていいから恐い。
甘い物、もち(おかきも餅米)、油物、アルコール(特に日本酒)などは控えるようにしたい。湿熱の元になってしまうからだ。
「湿熱」はしつこい湿に悩まされ、また湿はすぐ熱と手を結ぶので本当にやっかいだ。
湿熱こそ最も難病にかかり易い体質といっても過言ではない。
(きっかけ)
私は今、少し乗馬をかじっている。鍼の師匠が乗馬歴40年以上の大ベテラン。「楽しいぞ」と乗馬を勧めて下さり始めることになった。
乗馬はまず、馬から体温の温かさをもらえる。そして何と言ってもバランス感覚が身につく。また、股間のところに会陰(えいん)という大切な、しかし刺しにくい穴(つぼ)があり、そこを刺激できる等など・・・たしかに東洋医学から見ても利点が沢山ある。
しかし、優雅にパカパカとは遠くかけ離れ、あまり走ってくれない馬に30分乗っただけで2時間くらいサウナに入ったほどの汗、そして筋肉痛。
まだまだ新米の私は、健康より病気になるのではと思うほどの体力消耗状態に・・・
(大腿部の筋肉痛)
1週間ほど前、乗馬の後、左太もも内側の筋肉を傷めた。いつもの筋肉痛と思っていたら・・・どっこい!先日行われた鍼の研修会の後の懇親会でビールを飲む事コップ6杯程。
それがたたって、次の日の朝、激痛で歩くのもままならず。
みると筋肉痛だった内側大腿部が赤く腫れあがっていた。歩くのも大変な中、2日目の研修会に足を引きずり参加した。
研修会は鍼灸師の集まり、ベテランの先生に鍼をしていただきかなり歩きやすくなった。
ベテラン先生から「昼食はすぐ食べず、少ない量にして」とアドバイスを受けた。
にも関わらず、お弁当をぺろりとたいらげた。
患者さんに偉そうに言えないと思いつつ・・・
食べ終わると案の定、再び痛み出した。
(自業自得の治療)
さて、何故単なる筋肉痛が赤くはれ上がって痛み出したのか。
東洋医学を学ぶ者なら簡単な道理。
大腿部内側といえば、脾経(胃に関係が深い)が通っている。
最近食べ過ぎの運動不足で脾胃に負担をかけていた上、便秘する事2日間。身体の中に熱を溜めていた私。
つまり、脾胃に負担をかけ、弱らせていたところ便秘、アルコール摂取により内熱が盛んに。
私は熱性タイプなのでこの事が引き金になったと思われる。
そしてパクパクと昼食をとった事により再び内熱がこもり痛み出したのだ。
自宅に戻り自分でまず熱をとる治療をと足の親指の爪のキワを鍼でちょんと突いて血を出した。
すると、驚いた事に血が吹き出て何度も飛び散った。その時間30分間だから恐るべし。どの患者さんより湿熱を溜めていたのだと猛省した。
そして中国語の先生から頂いた漢方薬の湿布を貼った。
次の日は勿論、熱感も腫れも引いて、あと少し痛みが残る程度になった。
(師匠の鍼)
2日後、鍼の師の下に。今回の事を簡潔に伝えると「湿熱だな、よし分かった」と一言。
わくわくしながら治療を受けた。先生の鍼は2本だった。
いろいろ教えていただきながら選ばれた穴は、足の大都(だいと)という熱に関係が深い穴と、後けい(こうけい)という穴だった。
治療が終わったら、すっくと起き上がり化粧湿へ一目散。
何と大量に湿熱を排泄させて頂いた。お通じがあったということだ。
先生と鍼に感謝しながら、今回は本当に貴重な体験をさせて頂いたと帰路についた。
今年の夏は毎日ひどい猛暑。平素から食べすぎや便秘で内熱をためている人。本当に要注意~!