「結局、心が負けていなければ人生に悲嘆も悲惨も無いと感じた…」
アメリカで平和のための重要なお仕事に携わっている友人から先日届いたメールです。
そのメールに、彼女の共通の友人の結婚式に、参加された人の事が書かれてありました。
その人は、脊髄がんで歩行困難の中、1人アメリカまで友のお祝いの為来られたらしいのです。
ご自身が大変な中、友の幸せを喜ぶために…。何て尊い行動でしょうか。感動しました。行動こそ真実の心を表します。
100の言葉を並べるより、ひとつの勇気ある行動が多くの人に感動を与え、人の善性を引き出すのだと思います。。
思いも寄らなかったことが起こるのが人生です。それをどう受け止めて次を生きるのか、そこで問われるのが、心の強弱です。
でも、人は強くて弱い存在。
きっと、この脊髄がんの方の周りには、温かい支えが数知れずあるのでしょう。ご結婚された友人もそのひとりなのでは。
人はされたように行動するものです。優しくされてこそ、優しい行動ができるように。
利害を超えた真実の友がいてこそ、心が強くなり、全てを乗り越える原動力になっていきます。私も友に感謝の毎日です。
勝つ事より「負けない心」を自他共に育てていきたいです。
人を思い出す時、誰もがその人の表情を思い浮かべるでしょう。
思い出す表情は、相手が頻繁に表現している心です。
東洋医学では、喜 怒 憂 思 悲 恐 驚の七つの感情の事を「七情」と言います。
思い出す表情には、この何れかが反映されているものです。
その表情の中心は何と言っても、心の窓と言われる目です。
東洋医学でも先ず、相手の目を見て、眼神(がんしん)を伺います。私も特に大切にしているところです。
眼の神とは、目の光や目の動きの事で、これらを見て心の状態や病態を把握していきます。
古典にも「目光精彩」と言って、目が輝き、力があって、生き生きしているのが健康な状態と言われてます。
目をつぶれば、患者さんの色んな表情が浮かんできます。
例えば、「憂」の患者さんの表情が、いつの間にか「喜」に変わった時は、身体の良好な状態と殆ど一致します。反対に「悲」や「怒」などの方…いつも気になります。
それにしても、表情は自分では見えませんので、人に聞いてみると案外、え?と思うような事を言われるかも知れませんね。
目を閉じれば、優しい目をたくさん思い浮かべられる、そんな関係を広げていきたいものです。
患者さんから思いがけないプレゼントを頂きました。
「世界にひとつのなまえアート」という所で、「実千代鍼灸院」の文字に独自の詩を付けて下さいました。
「みらい創る まいにちの 何げない時間
心によりそい しんらいの
きずな育み あゆむみち
えがおの花咲く しゅんかん重ね
ゆうきと明日への想いうまれ
たくさんの しあわせ ここからひろがってゆく」
こんな素敵な詩を頂き心から感謝します。
色んな職業が有りますが、人の心を喜ばせるお仕事最高ですね。
プレゼントして下さった患者さんも、難病を見事に克服されました。またそれだけでなく見違える程綺麗になられました。今は皆に希望を与える存在です。
これから、この詩のような鍼灸院になっていきますように…大切に飾らせて頂きます。
味のある人、味のある一言と同じ様に、鍼にも「味のある鍼」があります。師匠、藤本蓮風先生の鍼が正にそうです。
私が師匠に鍼を受けるようになってから随分経ちますが、ここ数年は週1~2回治療をして頂き、何よりの勉強をさせて頂いてます。
先日、「喉がイガイガします」とお伝えし治療を受けました。
先生はニヤリとされて脈をとり、合谷というツボに一本打たれました。
すると、刺された瞬間、ツボ周辺が爽やかな冷たい風が吹いたようになりました。そのうち、喉のザラザラ感が全く無くなり、ミントの飴を舐めたかの様にスッキリ。
実は、ここ数日間、様々お付き合いで外食三昧をしていた所、少しく風邪が入って、朝、両扁桃腺が腫れ上がった日が有りました。
色々熱をとる治療をして、腫れは直ぐ引き、大事には至らなかったのですが、イガイガが中々取れずにいました。
合谷は色々な場面で使われますが、この日の合谷、咽喉の熱をとる作用に働いたのでしょう。
同じツボを同じ様に打っても、刺す人によってその効果には差が有ります。鍼灸歴五十年の師匠の鍼の味…感慨深いです。
この日はしみじみと、将来こんな味のある鍼を打ってみたいと思いながら…ベットの上で鍼の味を楽しませて頂きました。
鍼灸のバイブル「素問」の上古天真論第一に「恬淡虚無(てんたんきょむ)」という言葉が出てきます。心がさっぱりしていて物事に対する執着が無いという意味です。
この様な精神の人は、心が安らかで病気をしないと昔から言われています。
何千年も前から、心と身体の問題に焦点を当てた大切な言葉です。
ところで、鍼を持つ人も「恬淡虚無」であれば、鍼の力をより引き出す事ができるのではと思います。
以前師匠から、鍼を刺す事と自分の生き様とは同じなんだ、と言われた事があります。
今、その言葉の意味が少し分かるようになってきました。
こちらが、どの様な心持ちで一本の鍼を持つのかこそ問うべきです。心持ちとは、その人の生き方そのものですから正直に出てしまいます。
微塵の疑いも迷いも無く、私心や執着といった気負いも無く持ってこそ…鍼は信じられないような効果を発揮してくれます。
その上、患者さんも鍼で治すと腹を決めて下されば、実際、奇跡のような事がおきるのです。
立場は違いますが、臨床心理士の河合隼雄先生もよく、心を動かさず待っていれば奇跡が起こって治癒していくと言われてます。
恬淡虚無の鏡に照らして、自分を映し出し、心の汚れを日々磨いていきたいです。