桜が満開の最高の春の日和。こんなポカポカ陽気に、ある患者さんが、「先生、寒くて寒くて北極に居るみたい。」と言われます。
確かに手足やお腹を触ると氷のようです。ガタガタ震えてタオルを何枚もかぶっておられます。
舌は酷い紫色、脈を診ても、風邪が入ってるとは思えません。聞くと、生理前との事。ガッテンがいきました。
患者さんは、私たち鍼灸師の師匠でもあります。日々、様々な事を、様々な形で教えて下さいます。
これは、強烈な、レベルの非常に高い、気の滞りからくる悪寒とみました。
後渓というツボに鍼を一本。気が巡ったのでしょう。帰りには、手足ポカポカ、北極から脱出しましたと笑顔です。
この患者さんは、高校生の頃から、生理前の、いわゆる、PMS(生理前症候群)に悩まされてきました。
このPMSは、ただの生理前の過食やイライラなどでは済まされない、日常生活に支障をきたす程の酷い症状です。
「先生、生理前にあのイライラが無い…こんな日が来るなんて信じられない…」と静かに驚かれてました。
何十年も、毎月毎月、ひとり、どれ程辛い思いをしてこられた事でしょう。想像を超える大変な闘いです。今この様な患者さんで溢れてます。
「良かったね。もっともっと、信じられない程、元気になるからね。」と言ってあげられるこの仕事に感謝します。
辛い辛い思いを抱えている患者さんは、鍼の絶対の証明者です。
いくら感謝してもしきれません。
先日も師匠の臨床現場に行ってきました。いつもの如く、頗るお元気で上機嫌です。
ここに来ると不思議な程、心が豊かになります。凄い場所です。
師匠の鍼に対する情熱、本当に楽しそうに爆笑されるお姿、患者さんや弟子とのやり取り等々。。。
いつも有りのままのお姿ですが、師匠が発する全ての空間には、病を吹き飛ばす勢いがあります。
みんなこの勢いに巻き込まれていくのです。楽しく、楽しく。これが、師匠の臨床現場です。
師匠は今日も、「病気を通じて人間を診てるんだ!結局、人間だぞっ」と言われました。
有言実行の師匠の一言一言にはズシッと重みがあります。
人間を理解出来なくて、人間に優しくなれなくて、真の臨床は存在しません。
人間理解は言葉を越えても通じ合います。師匠のように、何十年かかっても、人間理解の達人を目指したいですね。
人間の正常無垢な深層が動き出しますように…と願って。
約3年ぶりに、とある患者さんが、来院されました。何処か具合が悪いのですか?と問えば、体調を調えるためにまたお願いしますとのお返事。これは嬉しいです。
贅沢かも知れませんが、体調管理に鍼治療を受ける意味は大きいと言えます。
この患者さんは、鍼を受けてから、気がつけば、今まであった手の湿疹が無くなっていたり、顎関節症も治っていたんですと言われました。
今回、周りの友人が病に倒れていく姿を見て、思い出して来てくださったのです。
小さな症状の改善は、大きな病気を防ぐことになります。大事になる所を小事で済んだりもします。
鍼をしてから風邪を引かなくなった、口内炎が出来なくなった、便通が良くなった、熟睡できるようになった…等々は、何気ない一言の様ですが、とっても大切です。
気がつけば、心身共にストレスにも強くなっていきます。
鍼最高ですと、笑顔で言って下さる患者さんから、鍼の力を日々教えて頂いてます。
家族であれ、他人であれ、人を思うという事は、実は簡単ではありません。
思うというのは、相手を信じて、相手の立場になって、心から思いやるという事です。
幸せを、健康を、成長を、祈ってますよ。と口で言うのは簡単ですが、心の底から人を思うというのは難しいものです。
自分も人も誤魔化せないのが、この生命の響き合いです。口先では生命に響かない…。
反対に、口に出さなくても響き合う生命もあります。余りにもシビアです。時空も超えてます。
臨床現場では、鍼の理論や技術も当然大切ですが、この何ともし難い生命(心)の問題を見つめざるを得ないのです。
嫌でも自分の生命と人の生命を見つめる事の連続が、臨床です。
生命と生命の響き合いこそが臨床であり、根っこであり、闘いです。
この限りなく大きくもなり、小さくもなる生命の不思議さに合掌します。
「人を思う」この道、勇気のいる道、生命が一番喜ぶ、この道を進むのみです。
奈良の師匠の元に研修に行かせて頂き、今月で丁度10年になりました。
無我夢中で鍼を求めた、あっという間の10年でした。
どれほど、鍼の素晴らしさを教えて頂いたことでしょうか。
師匠は人間をありのまま感じる事の出来る、本当に卓越した臨床家です。
不可能を可能にするんだと、患者さんを救うため、今も変わらず鍼を追求し続けておられます。
この師匠の鍼を現実にみて、受けて、師匠の鍼を愛する情熱を浴びる事が、どれ程大切な事か計り知れません。
今日も研修で、大切な事をたくさん教えていただきました。少しづつ、その意味の大きさを感じることが、出来るようになってきました。
でも、まだたった10年です。いよいよ、これからが本番と思っています。
先日、4才の頃から鍼をしている男の子が、高校に進学するに当たって、「先生、将来鍼灸師になりたいです」と太い声で言ってくれました。
三世代ご家族で鍼を受けて下さっています。
毎日、こうして鍼の素晴らしさを実感してくださる人を作る喜びは、本当に、たまらなく嬉しいものです。
只々、師匠に感謝致します。