食道癌から肺がん転移の男性患者さん。化学療法はこれ以上出来ないと、自宅にて経過観察とのこと。よくある酷い話です。
退院後、弱りきって車椅子で来院されました。
両足が象の足ほどむくみ、歩行困難でしたが、
治療する度にむくみが減少し、真っ白だった顔色に赤味がさしてきました。
沈んでいた肺経のツボも反応し、咳も和らぎ眠れるように。
師匠の教え、多面的観察が本当に役立っています。
いくら化学療法で痛めつけられていても、ガンが広がっていても、身体は蘇生しようと必死です。
その蘇生力は、驚くほどです。鍼をどうやって無下にするのですか。尊敬すべき鍼です。
父の、手術も放射線も抗がん剤も、何もしないでね、との要望に応えて、
兄とほぼ毎日、鍼灸治療をして身体を整えています。
両手に鍼灸師…父は、「気持ちいいなぁ、こんな優しい治療有難い」と本当に幸せな顔です。
ガン患者さんの中には、ガンをトコトン叩く治療を望まない。と言われる方、これからも増えていくでしょう。
環境、年齢など、様々な要素が絡んでいますが、選択肢の中に、三大療法無し。これも普通になっていくのも有りですね。
ますます、多様化、変化の激しい時代。様々な選択肢と、万全な体制が望まれます。
毎日の診療は、「(調子は)どうですか?」から始まります。
患者さんから、「グタグタです。」「いい感じです。」「先生~最悪~」などなど、表情と共に様々な表現。患者さんを感じる事、日々楽しみです。
この何気ない会話から、気の交流が生まれます。
どうですか?と、相手の状態を伺う、心配する、心からの一言、大切です。
大変な時の、この声かけ、医療に関わらず、心に染み入ります。
心こそ通じる、心こそ大切…反対に、心の無い医療は、何をやっても無意味ですね。
最近、また癌の患者さんが増えてきました。偶然とは思えない皆さん。
私も、母を癌で亡くし、今父も闘病中です。ガンとは真正面から向き合うべき…という事。
先日来られた方は、余程の信念を持っておられるのでしょう。
一切の化学療法はしたくないと、服薬もされてません。
父も同じ。来週から在宅です。
年齢的にも、体力的にも、自分の身体の状態は、その人にしか分かりません。
こちらは、最善を尽くすのみです。
患者さんの心の声を、しっかり聞いて受けとめてあげる事…医療の原点ですね。
ある医者が、「病気を治すのが医学」という「常識」があり、病気が治らないとなると、医師は、それから先は自分の力の及ばぬところと考えてしまう。
しかし、当事者にとっては「それから」も人生なのです。
「それから」の人生をスタートする医療のあり方を目指したい」と言われ実践されてました。
全く同感します。
如何に最終章を満足して全うするか、誰人にとっても最重要であり、難問です。
日常から、人間の死という問題、生死観を考えること…本当に大切です。医療者なら尚のこと。
考えるべきです。深刻にではなく、真剣に。