職場からの風景
空も常に変化。
縁あって時々重症なガン患者さんが来院されます。
殆どの方が三大化学療法をうけて、必死でガンと闘っておられます。
ガンを徹底攻撃したくなるのも分かります。憎きガンです。ただ、激しい攻撃は良き細胞まで破壊していきます。人間世界の戦争と同じです。
根性がある程、頑張ってしまいます。
昨日こられた患者さんも正に。。。
真剣勝負で体表観察させて頂きました。余りにも痛々しい身体でしたが、脈、舌がまだ大丈夫。
5分置鍼して暫く横になってもらいました。
脈も舌もツボもしっかり動きます。動きは変化です。良き方へ変化していくと確信しました。
帰りのお顔は、艶が出て表情が明るくなりました。誰もが分かる変化です。
この変化こそが重要です。
世の全てのものは変化を免れませんが、
東洋思想では、変化するものの中にあって、ひとつ変化しないものがあると説きます。
それを私は宇宙の法則と呼んでます。
宇宙の法則に則った鍼を追求していきたいです。
昨日ぎっくり腰の急患さんが来られました。
数日前、腰が痛すぎて動けなくなり、駅で倒れて泣いていた所、救急車で病院に運ばれたそうです。が、
彼女、救急隊の人に「東洋医学の病院に行きたいんですが…」と言うと、「じゃ、ここで降りて!」と、えらく怒られて、シブシブ(笑)病院で痛み止めの坐薬を入れられたそうです。
でも、痛みは変わらず…ここのHPを見て来られました。
彼女はタイ人で、救急車に乗っても、タイでは西洋医学にしますか?東洋医学にしますか?と選べる様です。制度の違い…可哀想でした。
昨日は座れず立ったまま簡単な問診をして、何とかベットに横になって貰いましたが、
上向きは無理。うつ伏せのまま脈をとり、舌を見て両手両足のツボと背中のツボで診断し、
背中に一本の鍼。
来た時は泣いてましたが笑顔で帰られました。
日本語の上手な素直な性格の可愛い女性でした。昨年、私もタイに初めて行き、様々お世話になりましたので恩返しですね。
日々の心いろいろより(フウセンカズラ)
昨日は北辰会のエキスパートコースの勉強会でした。ホント楽しかったです。
午前中の水本先生の傷寒論講義は、先生自身が、もう楽しくて仕方ない(笑)っていう感じで、此方にも電波してきました。
講義内容はかなり高度で初心者には難しかったと思いますが、臨床上かなり大切な講義でした。
この講義を切っ掛けにもっと傷寒論を学ぼうと決意された方も多かったと思います。私もです。
午後は、奥村学術部長の「北辰会方式による穴性」のお講義。勉強量がダントツ過ぎて唯、唯、尊敬の念しかありません。
そして、2コマ目は、伝統鍼灸学会という公の場で10月に発表される原先生の鬱病、(タイトルは「強い口渇を伴う鬱証の一症例」)を治された症例発表でした。
10年間も鬱病のため薬を服用されてた患者さんを数ヶ月で廃薬させ、社会復帰を果たしたという、本当に素晴らしい症例でした。
原先生は、多くの精神疾患の患者さんを治されてますが、一番難しい分野です。同じ鍼灸師でも中々原先生の様にはいきませんね。
最後は、応用実技。ベテランの高木先生のご指導のもと、少しお疲れの先生を治療させて頂きました。
こんなベテランの先生も、基礎をキチンと捉えて指導して下さいます。その辺が流石だなぁと改めて基礎の大切さを再確認させて頂きました。
私はよく患者さんを紹介させて頂き、お世話になってる竹下先生に治療を受けました。
改めて、私の刺鍼とは対極の鍼をされるなぁ。と感じました。勉強になります。
終了後は、元気な、でも忙しくて疲れてる鍼灸師の皆さんとお酒を囲んでの談話。
ある先生が、ご自分の体調不良に対してされた鍼の効果のお話。凄いです。
その先生の「鍼はホント凄いわ…」の言葉。心に残りました。
京都の料亭にて。
私は約10年間、師匠の鍼を月4回から多い時は8回程受けています。
治療を受ける事がどれ程の学びになっているか計り知れません。
鍼の効果は勿論の事、短い問いかけ、診る場所、脈の押圧加減、ツボの触り方等々…この積み重ねが私の臨床に活かされてます。
昨日も治療を受けました。北辰会ではよく使用する後渓(こうけい)というツボに一本の鍼。
刺された瞬間から、そのツボにまるで薄荷を塗られたようなシュワ~っとした感じが広がります。
暫くすると、今度はツボがほんのり温かくなり、その周辺から右回転にその温かさが徐々に大きく広がっていきます。
その後は、いつもの様に爆睡…覚えていません(笑)。
この鍼の効果…同じツボに刺す事は誰でも、極端に言えば素人でも出来ますが、プロ同士でも当然、効果の違いは歴然です。
膨大な臨床経験と勉強量の違い、それを元にした抜群のセンスと鍼に対する絶対の信頼。。。凄いです。
最終的には人間観、生命観が決め手なのかも知れません。
師匠に日々感謝です。
「日々の心いろいろ」より(ガガブタ)
「『胃潰瘍=酸原因説』を唱える人も『胃潰瘍=ヘリコバクター原因説』を唱える人も、相手側とまともにぶつかり合う事を避け、妥協し、お互いの矛盾点を明らかにしようとしない。いつまで経っても研究者同士は傷つかず平和であるが、問題も解決する事はない。間違った治療で迷惑する人がでるばかりである。」とは、安保徹先生の『医療が病をつくる』の中の一文です。(最近、安保先生のこの本に魅了されてる私…)
問題解決のためには、真剣に互いの意見をぶつけ合って、討論していくという姿勢は本当に大切だと思います。
先日、アメリカ在住の友人と延々と様々な話しをしましたが、「中国でも勿論アメリカでも、ロシアでも皆、学生達が我先にと手を挙げ質問し、お互いの意見交換をしているのに、
日本人は、相手の反応を見過ぎるというか、意見を言わない…残念ながらおとなし過ぎる」と言ってました。
鍼灸発展のため、患者さんの為に、小さな草の根でも、大きな研修会でも、学校でも、
より素晴らしい鍼灸の道を模索していく為にも、普段から自分の思う事をはっきりと言える事が大切です。
その辺りの精神の土台が出来ていれば、安保先生の言われるような「間違った治療で迷惑する人」は減少するかも知れません。