「日々の心いろいろ」より(すいせん)
鍼灸の道は特殊と言えば特殊かも知れませんが、東洋思想に興味ある人にとっては自然なのでしょう。
仕事の選択にも様々な理由があります。
私は鍼灸師の家系なので、鍼灸が生活の中に普通にあり、興味の有無という考えすらありませんでした。
鍼灸の道に入った切っ掛けは、亡母がネフローゼの患者さんを治してマスコミに取り上げられ、超多忙になったためです。
ただ親孝行のために本格的に勉強しましたが、徐々に両親はこんな素晴らしい世界を追求していたのかと感動するようになりました。
昨年少しだけでしたが、ある癌末期の男性患者さんを診ていました。
残念ながら今朝、奥様から訃報が入りましたが、同時に、私との縁もあり奥さん自身、鍼灸の道に入られる決意をされたそうです。
亡くなったご主人も後押ししてくれたようで本当に嬉しい事です。
私も母を亡くしたと同時に、鍼灸学校を卒業した事を思い出します。
1秒の生命の重要さを身に染みて感じてこそ、違った意味で本気になれるというもの。
この素晴らしい世界を共に追求していきたいです。
最期まで癌と闘い抜いたご主人に尊敬と感謝の念でいっぱいです。
ご冥福を心よりお祈りいたします。
「日々の心いろいろ」より(寒梅と冬至梅)
自分が努力して勉強と臨床を重ねれば、一定治せるようになるのが北辰会方式です。
師匠が多くの人を救っていく為に、名人だけができる鍼でない様にして下さったからです。
本当に有難い鍼灸の治療方式ですので、学ばなければ損です。
しかし、一定治せるといっても、肩凝りひとつでも、簡単にいかないものも多くあります。
どの様な疾患でも、病の機序が(東洋医学的な病のメカニズム)分かってこそです。
当然、そこに反応があったから…だけではお粗末さん。勉強を積んだその先生の刺鍼理由が絶対に必要です。患者さんにも分かるように説明できないといけません。
これは東洋西洋問わずだと思います。西洋医ではガイドラインという便利といえば便利なものがありますが、勉強不足になり易いですし。。
日本人は大人しいですが、欧米なら何故効果があるんですか?と西洋東洋医共に質問攻めにあいます(笑)。
勉強して、臨床して、頭打って、また勉強して、臨床して、頭打つ。。。一生この繰り返しをして、名人という域に達するのでしょう。
「日々の心いろいろ」より(セイヨウオキナグサ)
先日から続けてワインを頂く機会がありました。みな鍼灸関係です。同業者の本音の語らい程楽しい時間はありません。
同業者でなくても、本当に思っている事を忌憚なく話し合える程の喜びもありません。
昨日は、自称亡き父の弟子と言われる方からのお誘いで、スタッフと共に本当に楽しいひと時を過ごさせて頂きました。
この私達の会話を父が側で聞いているように思えてなりません。
互いに父の事は誰よりも知っていると思っている当人同士ですが、父と娘、師匠と弟子ですから父に対して、様々な食い違いが生じます。
その食い違いを埋める様に話が止まりません(笑)。
食い違いも、全て父を彷彿とさせる為のもので、父の人柄を更に楽しく深く知れる事になりました。
その自称弟子と言われた先生は、「橋本先生から何を教えてもらったというのでは無くて、東洋医学のロマンを学びました」
「先生は、鍼を学ぶ、治す、お金貰う。。。こんな単調な世界とは正反対でした」と、そのお顔は生き生きと輝いておられました。
暗記する程、素問霊枢を愛した仙人のような父、終始一貫して東洋医学に生きた父、改めて敬意をもって合掌したいです。
戴いた白ワインは、今迄飲んだ中で一番美味でした。忘れられません。
父は素晴らしい弟子を持って本当に幸せです。
大漢和辞典の文字は極小。
「黄帝内経霊枢注証発微』(馬蒔)
先日、父の遺品を整理していたら、貴重な本の数々が出てきました。
その中に、諸橋轍次氏の『大漢和辞典』がありました。
そして偶然にも次の日、某新聞一面に、諸橋轍次記念館館長が大漢和辞典について語られてる記事を目にしました。
この大漢和辞典は、総計約1万5千ページに及ぶ世界最大の漢和辞典で、
途中戦火で焼失したりして、構想から完成迄30年以上の歳月を要したそうです。
文豪吉川英治が「『大漢和辞典』刊行の成果はそのまま、日本文化のバックボーンになるものといってよい」と高評価の辞典です。
その不屈の心を育んだ原点は、故郷愛と親孝行の心だったと館長は言われてました。偉大な業績を残される方には必ず深い原点がありますね。
諸橋氏が携わった13巻の後、14巻の「語彙索引」、15巻の「補巻」の2巻が弟子の手で追加されました。師匠の思いを受けたこの弟子の心にも感動します。
諸橋轍次さんの座右の銘は、「行不由径」(行くに径(こみち)に由(よ)らず)という論語の一節だったそうです。
「径(こみち)は近いように思うが、行ってみると藪があったりして、そうはいかないんだよ。人より先に行こうなんて考えるんじゃなくて、ゆったりと大道を生きていく方が人間としていいんだよ」というのが口癖だったようです。
地道な根気の要る大偉業を成し遂げるために、ご自身に言い聞かせながら頑張っておられたのでしょうね。
全てに通じる真理です。
「日々の心いろいろ」より(一重野梅)
先日、信頼する鍼灸師の先生に患者さんをご紹介した所、その患者さんから感謝のお便りが届きました!
数年に渡る疾患で西洋医学での根治は難しいものですが、それが短期間の内に良くなって来た事への喜びの声でした。
ホント嬉しかったです。その事を先生にご報告した所、ご親切にも経緯等を教えて下さいました。これがまた凄いんです。様々勉強になりました。
私ならこの様な場合、何処のツボを使うかなと思いつつ…
その先生が使われたツボは、私の頭には上ってこなかったツボ、期門穴でした。その使い方と(整体)を動かす観点が憎い(笑)。
ツボの事がとても詳しく書かれている『鍼灸穴位通鉴』や『経穴解説』等々で調べ直してみると…忘れていた事や、気づく事が沢山ありました!
この時期は特に右側期門から肝之相火に繋がって反応が出てる人がかなり多いですね~
何処のツボを、何故、どの様な思いで使用するのか、一本鍼だからこそ真剣に勉強しなければと改めて感じました。感謝です。