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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2024年6月22日(土)

「偏頭痛」 []

20代女性 西宮市在住 2024年3月来院

 

【主訴】 偏頭痛(左>右)

高校生の頃から日常的に偏頭痛(ズキズキとした刺すような痛み)があり、酷いと嘔気や気分不良になる。投薬(イブ)にて治まるも時々閃輝暗点がある。

職場は一年中暑く頭痛は頻繁に起こるが、昨年秋の部署移動後、職場が涼しくなり偏頭痛の頻度はやや減少。実母や姉も偏頭痛持ち。

 

増悪因子:暑い日や水分補給不足の時、夕方、降雨前>中、生理前中。

緩解因子:イブの服薬、休日はややまし。

 

【既往歴】

・幼少期は身体が弱く、熱性痙攣をよく起こしていた。

・小学高学年頃、遊んでいて人とぶつかり強打や鉄棒から落下し、目の下の骨にヒビや左尺骨あたりを骨折

 

【その他の症状】

卵巣膿腫(右に4㎝)(3か月毎の経過観察中)排卵ごろに腹脹と腹痛あり。

(3か月ごとに病院にて要検査)

目が乾燥する。

・春先の花粉症(目の痒み

・時々瞼が痙攣する。

・たまに口内炎が出来る。

 

【主な体表所見】

舌診:紅緯舌、舌戦(舌を出す時に震える)

脈診:1息4至半、滑大脈(中に緊枯脈)、脈幅(△)、脈力(+)

腹診:両脾募、右肝之相火実

背診:実/左心兪~肝兪、全体的に拒按(くすぐったい)

 

【八綱弁証】

実:肝気実、入浴スッキリ、生理後スッキリ、排泄後スッキリ

熱:便臭あり、口内炎、生理前の肌荒れ(赤いプツ)、冬もアイス欲す、暑い環境下で主訴増悪。

 

【病因病理】

幼少期より風邪を引くと高熱や熱性痙攣を起こす様なお子さんの体質は熱傾向と考えます。この偏頭痛も暑い環境で悪化し、涼しい所ではマシになる事からも大きく分けて熱性の偏頭痛と思われます。

また小学生時に眼下の打撲や左尺骨あたりの骨折も多少影響していると思います。

なぜなら上焦部の怪我により上部への気の偏在(上に気が偏る)や気の不通(怪我により気血の流れが悪くなる)等により頭痛になる人は少なくないです。

更にストレスや怪我等で、上に気血が長く停滞する事により、下半身の気血が相対的に空虚になったり流れが悪くなることがあります。そのような条件下で卵巣膿腫ができやすい状態だったと考えます。また、多忙な仕事で神経を過度に使うことによっても同様の状態(上実下虚)が起こります。

 

【治療方針と治療経過】

気血の停滞と同時に上焦の邪熱を下げる治療方針で肝の蔵の主要穴を中心に使う事にしました。

初診~2診目:肝兪(左)実側瀉法、3診目:太衝(左)

4診目:心兪(左)、5診目:後渓(左)⇒ 眼瞼の痙攣のため(生理後の血虚を考慮して)

6診目~9診目:太衝(左)

 

治療開始後から7診目で少し偏頭痛があったものの薬は使わずに済んだとの事。

また9診目以後に検査の結果、卵巣膿腫の消失を確認しました。

以降、偏頭痛は全く起こらず来院も月1回程度にしました。

お母さんやお姉さんも偏頭痛持ちですので現在来院中です。同じく良く鍼が効いてどちらも服薬せずに済んでいます。

ここ何年も前から頭痛人口が急増しており病院でも頭痛外来が出来ているほどです。頭痛にも様々なパターンがありますので、原因をよく調べて気血のアンバランスを調えていけば投薬なしでも治癒していきます。

 

 

2024年2月16日(金)

「鬱(恐怖心と不安感) []

60代女性 西宮市在住 2023.11月来院

主訴: 鬱 (恐怖や不安感)

 

【病歴】

コロナ禍でずっと頼りにしていた娘さんが一人暮らしをする事を聞いてから恐怖心や不安感があらわれる。夜も暗くして眠れない、静止できずソワソワする、集中力がない、体重減(5キロ)、鼻が詰まって熟睡できない等の症状が昨年9月から続き来院される。

 

【既往歴】

・子供の頃から怖がりで心配性。「自分がしなくては」と人一倍考え、弟妹の世話をしていた。

・胃腸が弱く、腹痛と便秘を繰り返す。

・20代で卵巣嚢腫。卵巣と子宮の全摘。30代以降は胆嚢ポリープや腎盂炎になる。

 

【その他の症状】

口苦、口・喉の乾燥、尿濃、便が硬く黒い、身体の痒み、ドライアイ、のぼせやすい等の熱症状。

 

【主な体表所見】

舌診:淡暗、膩苔、胖大、歯痕あり、

脈診:4至半、滑枯脈、重按力有り、関上LR枯、寸口R弱

腹診:L胃土、L肝相火、R肝相火(深在)

背侯診:虚/心兪L、実/膈肝、肝兪、神堂、百会熱

 

【病因病理】

証:肝気上逆 ≧ 心血虚、腎虚

幼い頃から、責任感が強く頑張り屋さんで、とことん自分を追い詰めてしまい、それが昂じて恐怖心が出てくるという悪循環がベースにあると思われます。

更に、クレーム処理の仕事を10年以上続け、常に緊張状態にあり、寝つきが悪いところコロナ禍に突入。神経が休まる時が無い状態が長く続いておられました。

このような状態が続く中、頼れる人はしっかり者の娘さんだけという精神状態になり、その娘さんがいなくなる事で、一機に精神が不安定になられたと思います。

精神状態の不安定は、バックに貧血(血虚)を伴います。また、長年の精神疲労や老化が重なり、腎臓の状態が弱り、更に、肝気が上へ上へと昇りすぎで発症した恐怖心と考えます。

 

【治療方針】

1診目:照海、後渓(精神安定と腎臓の弱りを補う治療)

2診目:胆兪

3診目:肝兪(精神状態は安定しないが、胃腸の調子は良くなっている)

4診目~9診目:百会(百会をして4回目から精神状態が安定してきた)

※現在2週間に1回の治療を継続中)

 

【治療効果】

7診目から電気を消しても寝れるようになり、精神が安定してきたと驚かれてました。娘さんは出ていかれましたが(単なる一人暮らしです)、ご自身でも驚く程安定していて娘さんも安心しておられるようです。現在は全く普通の生活を送っておられます。

早く鍼灸の効果が出て良かったです。これは、虚(弱り)もありますが、実(邪熱や気の上下のアンバランス)の方が強かったために早く功を奏したと考えます。

 

 

 

 

2023年4月1日(土)

「中学生の特発性側弯症」 []

14歳女性 中3 2022年11月来院

【病歴】

同年6月に「特発性側弯症」の診断を受ける。背中の筋肉は、左側が側弯のため、かなりもち上がり右との左右差が顕著。

更に、中学生になった頃から歩行中に両膝が不意に痛む。痛みは片側ずつ出現、痛みの強さ、頻度ともにL>R。X線は異常無し。

また、来院の10日位前から、左股関節(外側)がズキズキと痛み、その後、持久走後に右股関節(外側)、右腰もズキズキと痛む様になった。

【その他の所見】

◎6年生の時、帯状庖疹になる。

◎吹奏楽部ではバリトンサックス演奏の為カバンがかなり重い。

◎中2から塾に通うも先生と合わずストレス過多。

◎中3、10月にコロナ陽性、39°近い熱2日続く。喉痛。

◎中3になってから、入浴後に背中と胸部の痒み出現。

【病因病理】

元々、食も細く無口な女性で、発散するのが苦手。様々なストレスを心にため込んでしまうタイプのようです。また、食少や嫌なことがあると腹痛下痢になる事から、脾の弱りがベースにあると考えます。中学に入り、我慢強い性格ゆえ、肝鬱傾向(ストレスによって発散できず気が停滞する)のところ、嫌な塾をかなり我慢して通い、背骨が変形していったと考えます。

これは、まだ成長期なので骨が柔らかいということと、偏食で食生活の乱れや朝抜きで学校に行き、骨、血の成長が軟弱という事からも十分考えられます。


【治療方針】

過敏な体質なので、鍼は使用せず、腹部の邪気(気の停滞)を散らしていく方法をとりました。

夢分流打鍼術というものです。


【治療経過と考察】

1診目~基本的に同様の治療:火曳きの鍼と左脾募散ずる鍼。

2診目から脾の弱りを立てるために、公孫の千年灸1壮。現在15診目。

 

1診目で膝の痛みがなくなりました。背部も3診目ごろから左右差が無くなっていき、背骨が真っすぐになってきました。背中が伸びてきたので腰や膝のアンバランスも解消されていったと思います。治療中は受験のストレスがかなりあったものの、治療度ごとに背中の筋肉の左右差はとれていきました。高校も無事に合格し喜ばれています。

 

先日、側弯症と言われた整形外科の先生に診てもらうと、「これ鍼だけで治ったんですか?」と

驚いておられたそうです。「それも刺さない鍼でお腹をトントンしただけです」とお母さんが先生に言ったそうですが、先生の頭の中は??だったようです。

 

身体は繋がっています。精神とも密接です。今、学校に行けない子が急増しています。眠剤や頭痛薬、血圧上げる薬等々、若い子たちが薬づけになっているのが現状です。

 

子供は大人が思っている以上に何倍も真面目ですね。エネルギーに満ちあふれた子供たちが3年間、様々我慢し、怖がり、注意され、バランスが崩れないはずありません。子供たちが元気になるのを楽しみにこれからも治療させて頂きます。まだ少し背骨が曲がってますので治療は時々した方がいいですね。

 

先日のレントゲン写真を添付しておきます。

右(治療前)    左(治療後)

 

2023年2月17日(金)

「左肩甲骨の圧迫感」 []

57歳 女性 既婚 2022年8月来院

 

【主訴】左肩甲骨の圧迫感

【病歴】来院10日前に、マッサージ(強め1時間)を受けた翌日の夜から、左肩甲骨に違和感が発症。整形外科受診時、背中を軽く叩かれた時、飛び上がるほどの激痛が走る。X線検査問題無し。鎮痛剤と湿布1週間分処方されるも、口内炎で舌が痛くなったので、5日で服薬は中止。現在背部圧迫感のため、上を向いて寝れない。

 

増悪因子;吸気時(深呼吸)、座位にてだるくなる、冷風(不快感)

寛解因子;鎮痛剤、湿布(ロキソニン)

 

【その他】

・10代の頃からしている剣道で常にむちうち状態

・仕事はかなりの激務だがやりがいを感じていた。出産後は仮眠なしの36時間勤務時もあり。

・病歴に卵巣がん、甲状腺がん手術。37歳月経ストップ。

・50代、尻もちついて、T10~12辺りを圧迫骨折。

ここ2年リポビタンを日々服用し出勤。

 

【主な体表所見】

舌診:膩苔、紅舌、舌尖紅。

脈診:滑弦脈、力(+)、幅(-)、重按ok、尺位(左)弱。

腹診:心下胃土に停滞、右肝之相火熱感。

切診:虚(陽池、太谿、太衝、外関、照海、申脈、三陰交すべて左)

 

【八綱弁証】実>虚

虚:腎虚(臓腑弁証参照)

実:肝鬱気滞~血瘀(臓腑弁証参照)

排泄・発汗・入浴にてスッキリ、強マッサージでスッキリ、

熱:紅舌、寒い日も冷物(アイス)欲す

 

【臓腑弁証】

肝鬱気滞:仰臥位にて腰痛増悪

腎虚:ギックリ腰起こしやすい、生理時の腰痛、尻もちで圧迫骨折、抜け毛多数。

 

【診断と治療】

当患者さんは仕事にやりがいを感じてる故に、身体を酷使して頑張り過ぎてしまう所があります。

癌を数回経験されてますが、様々な原因はあるものの、ご自身の体調不良のセンサーに気づかず、働き続けてしまった結果、癌や50代前半で圧迫骨折、背部の圧迫感等の体調不良が出現したものと思われます。

若いときは多少の無理も大丈夫ですが、50代に入ると今までの無理が一気に身体に出てきますね。

基本的にはお元気な方ですので、肝気の停滞をほどく治療を施し、少しずつからだの緊張を緩めることで、気の流れをよくしてきます。

 

治療は、主にツボの状況から上下のアンバランスを調える為に、1診目に百会穴(やや右側)に10分置鍼。2診目から5診目まで、左の胆兪を置鍼。背部の圧迫感がなくなり呼吸が楽になりました。

その後、適宜ツボや体調に合わせて、申脈や合谷等1穴を選び治療。

 

現在20診ですが、起床時も楽に起きられるようになり、リポビタンで毎日鞭打ちながら頑張ってた身体も、強壮剤なしで元気に働けるようになられました。

また、患者さんの声にも書いていただきましたが、血液検査の結果、全て正常値になりお医者さんが驚いてました!と言われたそうです。このように無理をしつつも精神力が強い方は、ご自身のメンテナンスを忘れず頑張って下さいね。

 

 

2022年10月12日(水)

「口腔アレルギー(唇の周囲)」 []

24歳 女性 未婚 2022.4月来院

 

【主訴】口腔アレルギー(唇の周囲)

 

【病歴】一昨年の夏マスク生活の中、口の周りが痒くなり始める。皮膚科にて弱ステロイド性の軟膏を処方され塗布時のみマシになる。

その後、別の皮膚科にて「口腔アレルギー」と診断。果物・米・小麦・ピーナツ等に陽性反応あり。フェキソフェナジンを処方され一ヶ月服用でマシになるも、薬終了後全身に蕁麻疹が出現。

今年の春、仕事が多忙で疲れが溜まり、唇周囲の赤み(口腔アレルギー)が常に出ている状態 になる。薬の服用は嫌なので来院される。

 

【その他】

・0歳時に突発性血小板減少性紫斑病と診断(現在経過観察のみ)

・小児~小学生頃まで頻繁に喘息症状があり、高校2年以降症状は治まる。

・中学生頃から食後に肘膝窩の痒み出現。大学受験時は蕁麻疹が酷かった。

・よく中耳炎や外耳炎、外耳道炎になっていた。

・仕事はシフト制かつ日勤夜勤様々で、生活リズムがバラバラで疲れる。

・趣味:ライブ鑑賞

 

【主な体表所見】

舌診:舌尖紅、暗紅舌、薄白苔

脈診:緊脈、力(+)、幅△

腹診:(表)胃土、左脾募、右肝之相火邪

切診:(虚)左神門、照海、申脈、右肺兪、心兪、両膀胱兪。(実)肝兪、右下腿陽明経絡上。

 

【気血津液弁証】

肝鬱気滞:生理前にイライラ、ストレスにより増悪、肩こり、緊張により便秘。

血虚:立ちくらみ、目の乾燥、夜勤明け増悪、経血色淡く3日目以降少量。

 

【臓腑弁証】

肝:上記の肝鬱気滞、血虚参照。

腎:生理痛(腰痛)、扁桃腺腫れやすい、腎のツボの反応、顔面気色診にて主訴部位が腎。

 

【診断と治療】

(証)肝鬱気滞>腎虚・血虚 *若さもあり虚(腎虚・血虚)を補うより、

邪実を巡らせる方法で治療。

 

(治療)1診目~6診目迄 肝兪

7診目~8診目迄 三陰交

9診目~12診目迄 肝兪

13診目~胃兪か、胆兪の1穴を使用

 

(効果)1診目から効果が出て湿疹も痒みもマシになる。夜勤明けはいつも酷いが3診目で酷くならず、4診目以降から痒みも湿疹もかなり良くなる。ただ、夜勤中に眠れない日の翌日は悪化。

7診目は夜勤明けと生理が重なったため穴を三陰交に変更。

9診目以降は、口の周りのアレルギーは緩解する。

 

【考察】

幼少期の喘息、皮膚の痒み、また、紫斑病(血管にアレルギー炎症が起こり血管が脆くなって出血、紫斑が出来る)等々、アレルギー体質のところ、多忙で不規則な生活が続いたために口の周りにアレルギー反応が発症したと考えます。

 

なぜ口の周りに発症したのかは、ひとつはマスクの着用によって気血の巡りが悪くなったため、もう一つは、胃腸の弱りも多少あるものの、口の周囲は顔面気色診では、腎の蔵が関与します。生理時の腰痛や扁桃腺が脹れやすいこと、中耳炎や外耳炎等、耳に関する疾患によくかかる事、腎のツボの反応等から腎の弱りを考えます。

更に、仕事による夜勤等不規則な生活も腎を傷めます、血の不足も招きます。また、コロナで好きなライブに行けなかったことで、肝鬱(肝の気が停滞)し発散できずに悪化したものと思われます。

 

肺は皮毛と呼吸器と関係してるため、皮膚にアレルギーが出たり、反対に喘息が出たりします。このような方は、乾布摩擦や、山登り、水泳等、皮膚又は呼吸器を鍛えると共に、ストレスを上手に発散していくとアレルギーは治っていきます。

 

 

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