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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2011年10月18日(火)

膝内側痛 []

初診日: 平成23年9月12日
西宮市在住 女性 52歳
主訴: 膝内側痛

(現病歴)
2週間前から両方の膝が(特に左)重く痛みだす。特に屈伸時と立ち上がる時はひどく痛み、入浴でましになる。今朝からは、腰中央のつっぱり感も出現する。3年前から始めた料理教室の休暇をとり、ホッとした後主訴が出現。1ヶ月前には回転性のめまいや高血圧(一過性)にもなる。
今月末から海外旅行に行くため、それ迄に治したく友人の紹介にて来院される。

(既往歴)
42歳: 橋本病(甲状腺機能低下)
48歳: 逆流性食道炎

(その他の問診事項)
飲食: 食事は玄米。好きなものは甘い物(ケーキ)とパン。口の渇き有り常温を好む。
ニ便: 旅行など環境が変わると便秘する。夜間尿1回。
その他: 運動なし、入浴20分でスッキリする。雨の日や梅雨は調子が悪くなる。

(主な体表観察)
脈診: 1息4至、滑脈の中に渋脈。脈幅やや無し、脈力有力。押し切れ脈無し。
舌診: 淡紅色、白ニ苔。
原穴診: 左合谷 ・後渓・ 太衝 ・衝陽 ・照海虚。右太白虚。
背侯診: 右肺兪実、左肺兪虚、右胃兪・脾兪虚。

(診断と治療方針)
料理教室での精神的な緊張や多忙な毎日から、肝気が鬱結(うっけつ)しやすい状態にあったと考える。肝気の鬱結(うっけつ)とは、本来、伸び伸びと自由にしていてその気の廻りが順調に働くとされている「肝の臓」が、精神的な緊張が続くと気の廻りが停滞し、鬱結するというもの。

特に肝気は上昇しやすいため、更年期などで下半身が弱ると、更に上へ肝気が昇りすぎてしまう傾向にある。回転性のめまいや、高血圧もそのために起こったものと考える。

また、患者さんは普段から甘もの、パンなどを多く摂取しており、特に膝内側に胃腸と関係が深い脾経の経絡に異常を起こしたものと思われる。
下の方に反応が出るのも上下のバランスの乱れであると考えたほうがよい。
よって、まず肝気を巡らせる治療をし、その後に反応を見て脾の臓を立てる治療をすることとする。

1診目~2診目:後渓穴 2番で15分
3診目:外関穴
4診目:滑肉門穴
5診目:百会穴
6診目:梁門穴

(治療効果)
3診目ごろから初診時と比べて痛みはマシになる。5診目には殆ど良くなっただけでなく、ウエストが細くなり身体が軽くなった。
旅行中も痛みは無く帰国される。

(考察)
旅行の為に早く痛みを取りたいとの焦りがあった中、順調に痛みが無くなったことはご本人の正気(自然治癒力)がしっかりしていたためと思います。正気がしっかりしていると気の廻りが速く回復力もよくなるのです。
旅行先でも一日中歩いていたにも関わらず、帰国後も足の痛みが全くないことも、正気の充実と動くことによって気の廻りが良くなった証拠と考えます。
今後、ご自分で甘いものが非常に欲しくなったり(甘いものは鬱結を緩和しますので、気の廻りが滞っていると必要以上に欲しくなります)、何か身体が詰まった感じ、イライラ感が増してくる。このような状態の時こそ、身体の不調の始まりですので、リラックスし運動していただきたいと思います。橋本病も身体のバランスを調えれば良くなっていきます。

2011年9月9日(金)

生理痛 []

尼崎市在住 35歳女性 営業職
主訴:生理痛
初診日:平成23年7月下旬

(現病歴)
5歳で卵巣嚢腫のため卵巣摘出。同時期に橋本病が見つかり、チラージンを現在まで30年間服用している。
12歳で初潮を迎えるが生理痛がきつかった。就職してから生理痛はややましになったが、夕方に足が浮腫むようになり、肩も凝るようになる。
30歳を超えてから何回かぎっくり腰を起こすようにもなる。
昨年、部署が代わりストレスが過多になった頃から、生理初日における生理痛が酷くなり、キリキリした激痛に苦しむ。また生理時に必ず酷い腹痛とともに下痢になる。2ヵ月連続で7日間生理がダラダラ続き痛みが酷かったため、婦人科にいくと子宮筋腫(1センチ)があるのみで他は異常なしと言われる。8月から生理痛軽減のためピル治療を始める予定にしている。
生理前は、過食になったり、気分が落ち込んだりしやすく、生理前から生理の1日目~2日目まで下痢になる。

薬:毎月、ロキソプロフェンを服用。

(その他の問診事項)
・小便に何回も行きたくなる。(量少ない)
・ため息がでる。
・冷え性(腰から下)

(特記すべき体表観察)
舌診:紅色、白二苔、滑(舌の表面の潤い)、歯型少し。舌下静脈怒張。
脈診:1息4至半、滑脈で中にギシギシした脈有、やや不整脈、右尺位弱。
原穴診:左太白、太渓、京骨、丘墟、照海、復溜虚。右神門、太白虚。
腹診:心下、右脾募、左肝之相火邪。
背候診:左肺兪~心兪実、右肺兪~心兪虚中実、右肝兪~胃兪実(こそばくて触診難)

(診断と治療方法)
腎虚証・肝鬱気滞証

小さい頃から卵巣のう腫などができていることから、全体のバランスとして、下半身の弱りが見られる。そこへ、ストレスがかかることによって、生理痛が悪化していることから肝気のめぐりが悪くなることが生理痛に関与しているものと大まかに捉えた。肝気のめぐりを長い期間滞らせていたため、お血(おけつ)という病理産物が形成され生理痛になったものと考えた。下半身の弱り(腎、子宮など)を考慮し、その弱りを補うことと、肝気のめぐりを良くすることを同時に行う治療方針とする。

(配穴)
1診目:照海 2番針で15分置針。
2診目から9診目まで:天枢 20分置針。

(治療効果)
ピルを服用することなく、顕著な効果が得られた。4診目に生理がいつものようにきたが薬を服用しなくても痛みはひどくなかった。また生理後はスッキリし調子良い。更に治療後よく眠れるようになり、顔のブツブツも綺麗になってくる。2回目の生理が9診目にきたが全く痛みはなかった。また、生理時の腹痛下痢も全くおこっていない。

(考察)
あんなに痛かった生理痛がこのように短期間で良くなられ、ご本人も大変驚かれていました。東洋医学では、身体全体のバランスを見るため、その不足部分や過剰部分に対して1本の針で調節をしていきます。(少数鍼は北辰会方式の特徴のひとつです)
その時に、虚(不足)と実(過剰)を見分けることが必要です。
彼女は、腎の弱り(虚)と肝気の過剰(実)の両方がみられたため配穴に工夫をしました。(全くの実で使用するツボは選ばなかった)

藤本蓮風著の「臓腑経絡学」の中に、「肝は、五行でいえば「木」の性質を持っている。「木」というのは、上下にのびのびと伸びていく。このことを「条達作用(じょうたつさよう)」という。これは肝の蔵の持つ、自由に伸びようとする、あるいは外へ発散しようとする性質を表したものである。従ってこれらができないと(例えば精神的圧迫等によって)肝の蔵を傷る事になり、肝気うっ血や肝の疎泄障害を起こし、様々な病症を生じていくのである」と言われている。

鍼灸の力は、このような肝気がうっ血し廻りが悪くなるため、精神的に不安定(イライラしたり、悲しくなる等)な状態に対してもアプローチできます。むしろ得意とする分野です。
いくら頭で精神的にコントロールしようとしても中々難しいのが現実です。よって、体から心、更には魂の領域まで善の方向へ回転させていく、それが鍼灸によって可能になるのです。
心と身体を切り離して考えない医療だからこそ出来るのだと確信します。

2011年9月3日(土)

糖尿病 []

和泉市在住 58歳 男性 サービス業
主訴:糖尿病
再診日:平成23年4月初旬

(現病歴)
高校を卒業時点で体重82キロ。24歳で緑内障になり、鍼灸治療(実千代鍼灸院の先代)にて眼圧が下がる。食事は油物が好きな上、ジュースをよく飲んでいた。
ある日、運転中ハンドルを握っていると両方の指先がしびれてきたことがあった。50歳のころ胆石のため胆嚢を摘出。この頃タバコを止めたが10キロ更に太る。食生活は、油物に加え、ご飯、おかき等塩分が多かった。この頃から便秘、夜間尿、尿切れが悪い、腰痛、ばね指(右)なども起こった。現在も右手は握りにくい。
昨年あたりから、夏の暑さが堪えるようになり、疲れが増すようになる。
ジムで運動したりウォーキングに挑戦するようになるが、今年、自分で尿糖検査薬でしらべたところ、陽性反応が出る。病院にて血糖値240、HbA1c12で糖尿病といわれる。
仕事は、長年営業職。99パーセント外まわりで、気を使う仕事。帰宅時間もばらばらで生活は不規則。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅色、白膩苔、舌が腫れぼったい、舌下静脈怒張が酷い。
脈診:1息3至、滑脉、尺位弱、脈力有り、脈幅なし。
原穴診:虚(右合谷・京骨・丘墟・照海、左陽池・太白)実(左太衝・衝陽)
背候診:圧痛(巨闕兪・神道・霊台・筋縮・懸枢・腰陽關)、左厥陰兪、心兪虚中実、右心兪から腎兪まで虚。
腹診:左脾墓から肝相火。

(診断と治療穴)
東洋医学では、糖尿病を消渇(しょうかつ)といい、飲食の不節制(過食や油物の摂取過多)、情志の失調(ストレス)、房労による傷腎(セックス過多や仕事過多による腎の弱り)、先天的な虚弱、身体を温める薬の過服用などをその病気の原因としてる。
この患者さんも、飲食において油物が多いだけでなく、年齢的に腎の藏が弱る頃に塩分過多などで、更に腎を弱らせていることが考えられる。下に位置する腎の臓の弱りはストレスにより簡単に肝気を上昇させる。(肝気を高ぶらせイライラするなど)
その上、ストレスがかかると余計に好きなもの(油物など)を欲するようになり飲食に節度がなくなってくる。
大本は、ストレス過多による飲食の不摂生であったところ、どんどん胃腸を弱らせたために発症したものと考え、まずは、胃腸の代表ツボである公孫を選穴した。同時に風邪によって(風邪を引くと、風寒邪が体表にある毛穴を塞いでしまうため)身体の中にある邪熱を閉じ込めてしまい、糖尿が悪化する。よって風邪に効果があり反応が顕著だった外関穴を使用し、後に肝のツボなどでストレスを緩和させていく方法とした。

(配穴)
初診から2診目:公孫、外関。15分
3診目から4診目:滑肉門。25分
5診目から10診目:太衝。25分
11診目から16診目:後溪。25分
17診目から19診目:滑肉門。25分
20診目から25診目:梁門。25分

(治療効果)
治療当初から尿の回数が少し減少し、脈の状態、舌の状態(苔が薄くなるなど)反応が顕著に見られた。2週間後の検査にて、血糖値240から150に数値が下がる。HbA1c12は変化なし。しかし、14診目ごろからヘモグロビンは7.7に減少、19診目で6.5になり、23診目に5.9になりほぼ正常値になる。血糖値も120代まで下がる。体重は、9診目でマイナス6キロとなり、ズボンを買い換えないといけないほど細くなる。

(考察)
日本の糖尿病及び糖尿病予備軍の数は、前回の調査(3年ごとに調査)から250万人増加し、計1870万人と推定されています。(厚生労働省平成18年調査から) 40歳から74歳の中高年男性では32.2パーセント、女性は31.5パーセントが糖尿病患者、及び予備軍です。しかし、初期段階では自覚症状がないため治療を受けている人は患者数の10分の1とのことです。口渇、多飲、多尿という典型的な症状が出たら要注意なのですが、ご本人はあまり気づいていない場合が多いのが現状です。
上記の患者さんは、かなり数値が悪かったにも関わらず、薬も服用せずに改善に向かいました。これは、奥様の食事(1800カロリーに抑えた)の努力と適度な運動が良かった事は勿論ですが、このように早期に改善した事は、遠方から鍼灸治療に熱心に通われたことが効を奏したのだと確信します。
治すんだとの患者さんの意思と、その心にお応えしようとの施術者の思いあってこそ達成されたのだと嬉しく思います。糖尿病は生活習慣病です。生活習慣の改善は簡単なようで非常に難しいのが現状でしょう。しかし、身体からバランスをとっていけば、無理なく食事の改善や運動などに挑戦しようとの意欲も出てきますし、それらが鍼の効果を更にアップさせるという好循環が生じます。58歳、まだまだ第一線です。この年齢に病気をされる人が多い中、ますますお元気で若々しく人生を謳歌して頂きたいです。

2011年8月29日(月)

アトピー性皮膚炎 []

主訴:アトピー性皮膚炎
西宮市在住 34歳 女性 会社員
初診日:平成23年2月下旬

(現病歴)
生まれたときから喘息で、2歳からアトピー発症。12歳のときマイコプラズマ肺炎にかかり高熱で一週間入院する。
大学を卒業してから一人暮らしになり、食事は油物が多く、野菜不足、お菓子類(チョコなど)が多くなり、この頃から便秘になる。アトピーの性状は、平で大きなブツブツ。喘息よりアトピーの方が酷く、ステロイドで一時的に良くなり、睡眠不足などすると悪化する等を繰り返していた。
西宮に引越ししてから、外食やストレスが多くなりアトピーは最悪に悪化する。食事を野菜中心に変え、薬を使用し緩和してきたため病院へ行くのをやめた。しかし、ここ2週間前から初めてアトピーがふくらはぎに発症。以前の顔(口周り)、鎖骨あたりのアトピーも出てきた為、前に使用していた薬を塗るが変化が見られなかったためホームページにて来院される。

(その他の問診事項)
・寝付きが悪く1時間半かかる時がある。
・足首がむくむ。
・手足がむくむ。
・口内炎が出来やすい。
・汗が少ない。

(特記すべき体表観察)
舌診:暗紅色、舌先に紅点多数、白二苔、やや腫れぼったく歯型が有り。
脈診:1息4至半、滑脈、脈力幅有り。
原穴診:虚(右太淵・神門・大陵、照海、太衝、左太白、京骨)
背候診:左肺兪から心兪まで実、右虚中実、右肝兪から三焦兪まで実、右腎兪・志室虚。
腹診:左胃土邪、右肝之相火邪。

(診断と配穴)
元々、肺の蔵が弱いところ、ストレスからの過食や油物、チョコレートの摂取多量で身体に熱をこもらせていたものと考える。肺の蔵が弱いためその熱が皮膚に停滞しアトピーになったと思われる。(肺は皮毛と関係が深い)また、アトピーの出ている場所が、唇の周りにでていたり、浮腫みがある、口内炎が出来るなどを考え、身体の中の過剰な「湿」も関与していると思われるが、肝気のめぐりをよくすれば湿もめぐるため、肝を中心としたツボを選穴した。

初診~3診目:百会(10分から15分)
4診目~11診目:後渓穴か太衝穴のどちらか。
12診目~16診目:天枢

(治療効果)
初診の日からよく眠れるようになる。3診目には、かゆみがましになる。顔の色もどんどん白くなってくる。7診目には赤みが引くなど顕著に良くなってくる。薬も全く使用せず。

(考察)
アトピーは東洋医学(北辰会)では、肝の暴走によって少陽枢機に異常を起こして発症する(臓腑経絡学説:アルテミシア出版 藤本蓮風著)といわれています。肝の暴走とは、ストレス過多のため、ブレーキがきかない状態です。少陽枢機に異常をきたすと、専門用語で詳しい説明は避けますが、発汗がしにくくなり更に邪熱が身体にこもり、内熱が盛んになってしまいます。かゆみ疾患は基本的に熱なので、発汗するなどし、身体に変な熱を貯めないことが重要です。油物の食事も熱を篭らせます。

また、喘息とアトピーは表裏の関係で、アトピーが酷いときは喘息がまし、喘息が酷いときはアトピーがましという関係にあります。つまり肺の蔵が弱いためストレスなどで身体に熱を溜め込むと、喘息や皮膚に症状が現れる結果になってしまうのです。

アトピーは現代病ともいわれ、その原因も様々にいわれています。しかし、肝の暴走である限り、リラックスの時間をもち自分でブレーキをかけることも大切です。実際は自分でブレーキをかけれない人が殆どです。
是非鍼灸治療でお手伝いさせていただきたいと思います。
患者さんのようによく眠れるようになったこと自体、ブレーキをかけリラックス出来ている証拠です。元来アトピーの人の肌理は細かく美しい(デリケート故ひどくなる)その肌になられ本当に嬉しく思います。

2011年8月8日(月)

潰瘍性大腸炎 []

主訴:潰瘍性大腸炎
西宮市在住 39歳 男性 会社員
初診日:平成23年4月初旬

(現病歴)
3年半前から血便が出るようになり、一日の排便は10回以上。病院の検査にて潰瘍性大腸炎と診断される。
当初は、みぞおちや胃が気持ち悪い上、ピリピリするほど頚に熱感があった。身体もだるくなり、夜11時頃になると38°ほどの熱がでる。
冷飲を欲するが、身体のために気を付けている。肉も控えるようにしているが、血便など調子が悪くなると病院へ行き、薬を服用し治まる。
このような状態を3年半程繰り返している。現在ペンサタを服用し出血はおさまっている。
今年の4月の終わりに次の検査をする予定。

(既往歴)
幼少期:扁桃を腫らしよく高熱を出す。中耳炎、夜泣きなど。
高校2年:腎結石(薬で完治)

(その他の問診事項)
・痰が出る、目やにあり、怪我をすると膿みやすい。
・目が充血し疲れやすい。
・仕事は経理担当でほぼ一日中パソコン作業で神経を使う。
・仕事から帰って子供2人の世話や遊びで多忙。
・運動不足、排便後スッキリする。

(主な体表観察所見)
顔面気色診:心・肝が特に白く抜けている。
脈診:1息4至半、弦脈、右の尺位に枯弦脈。脈力有り。
舌診:紅色、白厚二苔(中央から舌の奥)、右の辺に紅点が多数有り、舌の中央に割れ目有り。
原穴診:左(太淵、合谷、太溪、照海虚)、左(臨泣、内関熱実)
背候診:右肺兪から心兪まで虚、左肺兪から心兪まで虚中実。
腰陽関、神道の庄痛、胞膏の冷え。

(診断と治療方法)
肝気上逆証(内熱)、腎虚証。

高校生の時に腎臓結石や扁桃の熱をよく出していることから、ひとつは腎の機能の弱りが考えられる。下部の腎が弱っているところ、経理の仕事で気を使う上、一日中パソコンを使用し運動不足状態。これでは肝気を容
易に上昇させてしまう。つまり肝気上逆となり、下が冷えて上が熱化する状態となりやすい。上部を示す内関穴や百会穴などに酷い熱感が見られることからも明らかである。
また、下部の状態を示す太溪穴や腎兪、志室穴などのツボに冷えや弱りも見られる。このように下部が弱ることによって、更に肝気を昂らせる結果となってしまう。
潰瘍性大腸炎は、腎など下部に弱りがあったため、大腸に邪熱が下注し潰瘍になったものと思われる。しかし、排便後にスッキリすることや、脈力有力などから実証と考える。(体力が充実しているということ。)

(配穴と治療効果)
1診目:百会穴5番 10分
2診目~8診目:後溪穴 2番 20分
9診目~10診目:申脈穴
11診目:百会穴
12診目:滑肉門穴
13診目~14診目:後溪穴

★3診目ごろから、身体が軽くなってきたように感じる。検査の結果は良好で8診目には薬の量が減る。便通は正常便で睡眠も良くとれている。
10診目から薬は服用していない。14診目ごろには食べ物も気にしなくても調子が良くなってくる。

(考察)
潰瘍性大腸炎は現在では難病の範疇に入りますが、非常に多くの方が罹患されておられます。
胃潰瘍の大腸版で、文字通り大腸に潰瘍ができる病です。精神的なものが大きく症状に作用し、繰り返すのが特徴です。完治が難しいため、難病と言われる所以もあります。

北辰会代表、藤本蓮風先生は、著書「鍼灸医学における実践から理論へパート4」の中で、潰瘍性大腸炎の出血のメカニズムについて述べられています。その中で、虚実、寒熱を的確に判断しなければ危険であると言われています。(特に出血している場合は)邪熱が身体の深いところを襲えば、夜中に発熱し朝に下がっているのが特徴とされています。

また何故邪熱が篭るようになったのかを、ご自分でも自覚していくことが再発を防ぐことになると思います。
ストレス過多、また、ストレスからくる過食(油物、甘いものの摂取過多)、運動不足などは容易に邪熱を身体にこもらせてしまいます。
無理をせず養生し、鍼灸治療を継続していけば、このような難病でもこの患者さんのように再発はしなくなります。

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