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実千代鍼灸院 Michiyo Acupuncture Clinic

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症例

2022年9月28日(水)

「耳鳴り(左)とめまい(に伴う不安感)」 []

47歳 女性 既婚

【主訴】耳鳴り(左)とめまい(に伴う不安感)

【病歴】18歳の時、大学受験のストレスで、ひどい便秘と共に突発性難聴と眩暈(めまい)を発症。その後、高音の耳鳴りや耳閉感でゴーッとこもった音がし、低音が聞こえづらい。
更に、就職してから多忙な日々が続き、酷い回転性の眩暈により3週間入院。長引く症状に不安感が昂じ、鬱っぽくなり心療内科の薬も併用する。

今年3月初旬、数日酷い耳鳴りが続いた後、朝気持ち悪くなり、頭を動かすとふわーっとなる。今までのトラウマで身体中がこわばり、肩こりや頭痛等も発症し来院される。

 

増悪因子:ストレス、睡眠不足、冷え、就寝前、第一子出産後。

緩解因子:入浴、頭を動かさない。

 

【その他】

・幼少期は、扁桃腺が腫れやすく、時々中耳炎に。また高所・暗所恐怖症。

・ストレスによる胃痛。冷飲食で下痢し易い。

・6年前頸椎ヘルニアに。(左半身痛)

常に自分が頑張らねばと家事や育児を責任をもってこなしてきた。

・スマホで常に健康の事を調べる毎日。

 

【主な体表所見】

舌診:紅舌、白膩苔、舌尖紅点、やや胖大→気が上(首から上)に上がり胃腸に負担がかかってる状態

脈診:滑弦脈、力+、脈幅△、寸口(ℓ)枯弦脈→上に気が傾き過ぎて、疲労してる状態

腹診:(表)右肝之相火、(深)右胃土→胃の気が停滞してる状態

切診:実(三陰交右)、右原穴の多くが虚→左右バランスの乱れ

 

【診断と治療】

証:肝実>肝血虚による、肝気上逆証

頑張り屋さんで几帳面な性格により、肝鬱気滞(気血の巡りが悪く滞り易い)体質と考えます。このような方は過度のストレスで気の流れが常に上へ上がってる所、年齢的にも下半身(特に腎の蔵)が弱り、上下のバランスが乱れ、身体の上部に症状が出易くなります。(肩こり、耳鳴り、めまい、頭痛など)また、頸椎ヘルニア(左)で左右のアンバランスもあるため眩暈や片側の耳鳴りは発症しやすいです。

更に、神経を使い過ぎたり、多忙による睡眠不足も重なり、目の乾燥、爪が割れやすい、腕の痺れ、月経の遅れなど、肝血不足の所見もみられます。このように、血虚(血不足)になり、相対的に気が簡単に上へ上がってしまい悪化したと考えました。

よって、治療は、肝臓の血を補いつつ、全身に気血が均等に巡るようにしていきます。

 

【治療穴】

1診目~4診目迄:肝兪。

5診目~16診目迄:三陰交。その後、肝兪や脾兪、三陰交等どれか1穴を使用。

【治療効果】

1診目の治療で頭が軽くなり眩暈も無くなり、腎蔵の重要穴、照海や太谿の穴も整いました。ご主人にも目が輝いてると褒めてもらったと喜ばれてました。

長年の眩暈だったので、「正直、先生には申し訳ないんですけど…まだ信じられないんです」と何回も言われてましたが、「いいんですよ、病歴(30年)長いですからね~」と、こんなやり取りが暫く続きました。耳鳴りは急には治りませんでしたが、11診目頃に耳鳴りが小さくなってきました。

その後、疲れたり神経を使うと耳鳴りが出現しますが、18診目に耳鳴りが当初10から現在2ですと言われてました。また耳鳴りが消失するときも出てきました。台風時は心配されてましたが、耳閉感のみで終わり、やっと(笑)鍼って凄いですと言って下さってます。

このように速く効果が出る人は、虚(弱り)もありますが、基本的に実証タイプです。気血の流れさえ良くすれば様々な症状は取れていきます。

現在22診目で継続中ですが2週間に一度程度来て下さっています。更年期にもかかってますのでしっかり治療しましょう。軽く済みますので。

 

 

2022年8月29日(月)

『左腕の脱力感』 []

17歳 高2 女性

【主訴】左腕の脱力感

病歴:来院1週間前、授業中に急に両腕に力が入らなくなる。当日は早退し以降は学校休む。来院時は右腕は改善、左腕のみの脱力感。更に、左下肢外側に筋肉痛に似た違和感もあった。

発症の1ヶ月前に学校でプレッシャーがかかる事が起こり、その状況は現在も継続。内科・整形を受診するも問題なく心療内科を勧められた為、鍼灸治療を希望し来院。

 

【主な体表所見】

舌診:淡白舌

脈診:1息4至、滑弦脈、力あり、幅△

腹診:全体的にくすぐったく、腹部、背部共に触れられない

切診:実(厥陰兪、心兪、肝兪左等)、左原穴の多くが虚。

 

【その他の症状】

・幼少期は便秘で3~4日に1回刺激し硬めの排便。現在は普通便。

・小学校低学年頃まで毎年インフルエンザに罹患。

・中高校では、部活で特に腕を使う競技をしている。時々肉離れ(左大腿前面)右シンスプリント。

 

【診断と治療】瘀血<気滞による痿証

元々頑張り屋さんで緊張型便秘傾向のため、肝気実(気が停滞し易い)と思われます。このような人は、緊張することが続くと、気逆がおこり易く、上部に症状が出やすくなります。実際、高音耳鳴り、上半身多汗、歯ぎしり、肩こり等々、上部の気の停滞症状がみられます。

最近学校で急なプレッシャーが重なり、心神(東洋医学での精神)が不安定に。これが心血(心臓の血流)に影響し、動悸、寝つき悪く多夢などの症状が発症。

心血と肝血は連動してますので、血不足が更に気の停滞を引き起こし、その停滞が、普段からあるスポーツで使っている腕や大腿部に影響が及んだものと考えました。

気の停滞を取ることによって緩和されると思い、気を巡らせる特効穴、肝兪(8割使用)を中心に使用しました。

 

【経過】

一回目の治療により、舌の色褪せが改善し、腹部や背部の酷い拒按(くすぐったい感覚が酷く、触られる事を拒否)がましになり、酷い気の停滞が改善するのは速かったです。

3診目には腕に力が入るようになり、更に、起きた時、ぼーっとすること(頭に血流が行きにくい状態)が無くなったと言われてました。学校に行くのが不安でしたが現在は元気に学校に通われてます。

2018年8月3日(金)

無月経 []

41歳女性 平成29年5月下旬初診
主訴::無月経

【主訴】
5年前の夏ごろストレスから突然月経が来なくなる。約半年間様子を見ていたが兆候もなく、一度も来潮しなかった為、婦人科を受診。女性ホルモン2種類の内服を続け、4年半は毎月順調に来潮。(無月経時の半年間の随伴症状は胃もたれ、食欲減退、体重減少、便秘、痔等)。今年、月経3か月連続微出血となり(初診の約半年前~)、女性ホルモンを強めに処方されるも月経不順が続き、閉経の不安から当院を受診される。

増悪因子:5年前のストレス
緩解因子:薬(女性ホルモン)

【既往歴】
・小学生時 肺炎
・中学生時 急性腎炎の診断を受け2年間激しい運動禁止。

【病因病理】
5年前(36歳)の突然のストレスから主訴が発症している事から、強烈なストレスが肝の疏泄作用を抑え、それが衝脈へ影響し、無月経を引き起こしたのではと思われます。東洋医学では子宮を女子胞といいます。この女子胞は、肝経、腎経と関係が深いだけでなく衝任脈や督脈とも密接です。特に、腎と衝任脈の異常は妊娠、月経等に大きな影響を及ぼします。
患者さんは、小学生時代何らかの原因で急性腎炎を発症されています。減塩等行い完治はされているものの、現在も特に下半身が多汗、下焦を表す顎に湿疹が出来やすい、尿切れや尿勢が弱く、また体表観察からも腎気の弱りが認められます
強烈なストレスは肝気の疏泄を滞らせ、その影響は必ずと言っていい程、弱い部分に影響を及ぼします。

患者さんは無月経になってから4年半という期間、ホルモン剤で月経を起こしていました。子宮が自分で働く能力を停止してしまいます。その上、更に強いホルモン剤を服用しても微量の出血や無月経になり、腎虚から陰血不足に迄進行していると考えました。

【治療と経過】
陰血を増し気を巡らせ本来の子宮胞の機能を取り戻すように治療を開始する。

★1診目~3診目迄:太衝穴。
陰血を補いつつ肝気の疏泄を巡らせるため、肝経の原穴「太衝」を使用。

★4診目~11診目迄:申脈穴。
足の浮腫みが顕著なため腎経の裏、膀胱経の「申脈」で調節。

★12診目~21診目迄:太衝か申脈どちらかを使用。
11診目ごろから月経出血量が増える。

★22診目~43診目迄:三陰交
34診目ごろにホルモン剤をストップする。
30日経過しても月経が来ないが、様子をみるように勧める。
40診目で自力で月経来潮。(普通量)

★44診目~現在迄:照海
2回目も順調に来潮。

【まとめ】
数か月間、しっかり陰血を補いつつ気を巡らせる事に重点をおいて治療を続けました。すると、月経量が増え、足の浮腫み等も改善されてきました。22診目から三陰交を使用し、気血も補いつつ衝脈の気を通じさせていくことに重点をおきました。
34診目頃からホルモン剤をストップしたものの、1ヶ月間月経が来ず本人はかなり不安になってましたが、5年もホルモン剤を使用した為、子宮も中々本来の機能を取り戻すのに時間かかります。「待ってあげたら?」とアドバイスしました。
その後、月経が来た時の喜びはいうまでもありません。お会いするたびに晴れやかなお顔になっていく患者さんにこちらも嬉しさでいっぱいです。

2018年4月14日(土)

起立性調節障害 []

【主訴】起立性調節障害 11歳 男子 135cm、25kg

【症状】寝つきが悪く朝起きれない、易疲労、じっと座っていられない等。

【経過】小学校4年生から塾に通い帰宅が夜10時になる。その頃から寝つきに1時間以上かかるようになり、学校や塾で頭痛から嘔吐を繰り返す。学校も塾も無い土日には起こらない。病院で起立性調節障害と診断。学校にも塾にも全く行けなくなり来院される。自宅では読書とゲーム(1時間)をして過ごす。食欲もなく(普段から)痩せている。

【七情】真面目で正義感が強く、集中力があり感情の波が殆ど無い(母親談話)。問診中も爪を噛んだりソワソワと落ち着かない様子で口数はかなり少ない。

【その他】多汗(頭、足底と手掌)、1歳からアトピー、よく風邪(発熱のみ)を引く、副鼻腔炎。

【診断】幼いころから神経過敏の上、感情を内に込めるタイプのため、肝気(発散できないストレス)が脾胃(胃腸)の働きを抑え食欲不振を起こしていると考えました。
また、若い男子(陽体)、アトピー(熱性疾患)等体内に邪熱を篭らせ身体を潤す陰液も消耗している所、塾等のストレスでそれらが更に助長され入眠困難(陽過多陰不足)が発症したと思われます。
この様な症状が一年以上継続すると、肝の臓から心の臓(心気の巡りが悪くなり心血の不足の悪循環)の異変が生じ易くなります。

【治療方針】心血を補いつつ気鬱を緩解し心身に緩みを与える治療を施す。神経過敏の為かざすだけの古代鍼を使用。

【治療】18診中15診は公孫、2診は百会、1診は太衝にそれぞれ翳す鍼を施す。

【効果】初診時から顔色が明るくなり3診目には寝つきがよくなる。7診目には塾の算数の試験が受けられる。9診目頃は朝も起きやすくなり体重も増え体力が出てくる。15診目には塾に通えるようになり学校にも週3回程行けるようになる。現在、毎日学校に通えるようになる。

【考察】
公孫の古代鍼で顕著な効果が現れました。乳幼児や敏感な人(鍼が恐い人や肌理が非常に細かい人等)にはこのように刺さない鍼を用いています。
体表を守っている衛気というのは気の動きがとても速いです。況してや敏感な男の子です。反応のあるツボに翳しただけで全身の気血が素早く巡り効果が現れるのだと思います。

公孫は、藤本蓮風著『経穴解説』には、衝脈が関与し血に関わる、気が衝きあがるものに有効、心腹五臓の病を治す、腎経寄りに取ると腎の絡脈の気もうける等々言われています。

上焦(上部)特に心の臓に衝きあがった気を引き下げながら、全身に気血を巡らせる心持ちで古代鍼を使用しました。

御家族も元気になっていく姿に驚かれています。体重が増え笑顔も見られるようになりました。体から心へ働きかける鍼が奏功し嬉しい限りです。

最近同症状の思春期の子供達が急増しています。この男の子をみていても学校に行かなくなってから「ゲーム1時間」と上記にありましたが、1時間で止めれるのが驚きです。親が決めたか本人の意志かは分かりませんがいずれにしても「真面目で優しく我慢強い」が過ぎてしまって「反抗出来ない子」に多いように感じます。

反抗は発散でもあります。自立しようとする時期には反抗はつきものです。反抗出来ない性格や状況にある時、バランスが偏り逃げ場が無くなって発症するようにも感じました。

2017年2月24日(金)

月経不順から不妊症が治癒した症例。 []

30代女性。
初診:平成28年3月下旬初診。
主訴 月経不順、不妊

【主訴】
20代半ばに初潮(初潮が来ないことをおかしいと思いながらも誰にも言えなかった。)
以後、3ヶ月又は半年ペースで来潮(出血量は普通、痛経2日目に左下腹部痛)。
31歳結婚後、婦人科で多嚢胞性卵巣症候群と診断、ホルモンで毎月月経をおこすが(1年間)、身体が怠くイライラや体重増があり薬中止。通院もやめ仕事復帰する。
基礎体温、高温期・低温期は安定せずバラバラ。

【その他の症状】20歳ごろ不整脈といわれる、ストレス時に逆上せ・心下部痛・動悸あり。
便秘で仕事中は排便するとこは皆無。お酒を飲むと翌日快便。
夢が多く追いかけられる夢や高いところから降りていく夢を見る。

【七情】
幼少期から気を使い過ぎて言いたいことが言えず、緊張する事が多く、感情を内に溜め込むことが長年続いていた。

【病因病理】
衝脈・任脈・督脈は胞中(子宮)から起こるといわれてるように、これらの諸脈に病変が生じると気血の過不足が生じて生殖機能に障害をもたらします。特に任脈は、胞胎を主とし生殖機能、月経周期と密接な関係があります。

彼女は長年の感情鬱積により肝鬱気滞が長引いたことが任脈に影響し、生殖機能に気血の不通がおこり月経が来なかったと思われます。

また気血の停滞が気血を巡らす心の臓にも及んだことにより多夢・動悸・顔色淡白、舌淡白等の所見がみられたと思います。

【正邪弁証】
上記のように心血不足傾向はみられますが、脈力がある事や、ツボの実(特に合谷左や太衝右、厥陰兪や心兪等の反応顕著)、または、負荷試験で休日に散歩4時間後もスッキリして気持ちが楽になる事から、邪気の実>正気の虚と考えます。

【証と治療】
証:任脈不通証

初診~3診目:胆兪(右)2番鍼20分置鍼。
4診目~11診目:後渓(左)
12診目:申脈
13診目~20診目:公孫
21診目~現在45診目:後渓、太衝、外関、申脈のいずれか1穴。

【治療効果】
初診の治療後、脈幅、脈力が復活し、舌色が紅に変化。3診目で快便になりました。4診目から心血を補いながら気実を瀉す事を11診目まで続けました。

6診目で月経が来て心身がスッキリし、月経前の過食が無くなった事に大変驚かれていました。(かなり酷かったようです)
更に、2か月続けて月経がきた時は本人と家族もびっくり。その後も順調に月経が来るようになり、25診目に妊娠陽性反応がでました。

妊娠後も治療を継続していますが、つわりもなく浮腫みや便秘等の症状も全くなく仕事を続けながら母子共に順調です。

【まとめ】
このように速く鍼の効果が出て、妊娠にまで至った事は虚証ではなく実証体質だったからだと思われます。長年、誰にも言えなかった無月経をここで話が出来たことも心が緩んだと思いますし、初期に実を胆兪というツボで瀉したことが功を奏したのではないかと思います。

初めにお会いした時に、ご自分の症状までもしっかり蓋が出来る程かなり我慢強い女性だと直感しました。

彼女との信頼関係も初めから自然に流れるように出来ていましたし、治療はとてもし易かったです。彼女が素直だったため心がどんどん鍼によって解放されていった結果だと思います。

どれだけ可愛い赤ちゃんに会えるのかと心から楽しみです。