症例

2015年07月15日(水)

パニック症候群、右背中〜腰・股関節痛 [運動器系疾患]

【主訴】パニック症候群、右背中〜腰・股関節痛 60代女性
【初診】平成24年10月中旬
【現病歴】
右腰背部痛は20代からあったが、50代後半から右腰背部と股関節に鈍く突っ張る痛みが出現。10m歩くと増悪し、少し休むとまた歩けるという間欠性跛行になる。

パニック症候群は、40歳時、子宮筋線症のため子宮を全摘してから発症し現在も継続。症状は恐怖感で呼吸困難、ジット出来ない、動悸、不眠等。デパスを服用しながら生活している。

[増悪因子]
(腰部痛)歩行時。
(パニック)ストレス時、ジットしていると、不眠、夜中。

[緩解因子]
(腰部痛)右腰を押さえながら歩く、座る等静止時。
(パニック)服藥。

【その他】
・結婚後から様々悩むことが長年続いたり、周囲から頼られることが多く、常に気が張った状態が続いている。
・大食で野菜嫌い、肉・油物が多かった。
・高血圧(40代から)降圧剤服用中。
夜間尿5回足元冷え易く足首浮腫む(60代から)。


【各種弁証】
八網弁証:
裏(表証所見なし)、虚:(腎虚)、実:(心肝気鬱)

臓腑経絡弁証:
腎虚
腰痛、後屈で増悪、間欠性跛行、夜間尿、足冷え易く夜火照る。
脈右尺位弱、腎経の経穴虚(照海、太溪、腎兪から志室冷)、命門熱感。大巨。

心肝気鬱:
ストレスで不眠・動悸・手足冷・呼吸困難等のパニック、ため息、イライラしやすい、神経過敏、感情の起伏有。
顔面心肝部位色抜け、脈弦脈、舌尖紅刺、神道・筋縮・膈兪〜肝兪・心兪から膈兪(左神門・後谿の反応、心下〜脾募、右肝之相火実。



【弁証】腎虚証〜膀胱経経気不利、心肝気鬱証


【チャート図】下記のチャート図をクリックすると拡大します。

画像(314x320)・拡大画像(629x640)

【病因病理】
様々な七情不和が長びく事により、肝気の上逆が過多になると共に、瘀血が形成し易い状態にあったと思われます。

そこへ、出産、肥厚甘味の大食、継続した緊張により、益々気血の流れを停滞させ、40歳過ぎに高血圧や下肢に静脈瘤を形成したと考えます。

40代で子宮線筋症のため子宮摘出した後、パニック症候群を発症されますが、これは下焦の弱りにより心肝の気鬱が悪化し、恐怖感や動悸、不眠等が起こったものでしょう。

右背部から股関節にかけての痛みによる間歇性跛行も、3回の出産、更年期、子宮や卵巣の摘出等により、下焦が極度に弱っている所、若い時のスポーツや左顔面部の怪我等により左右差(左上強打)が右下の弱りに乗じて(腎經の表裏関係にあたる膀胱の経脈に影響し気血が不足し巡らなくなる。)発症したものと考えました。


【治療方針】
腎、膀胱の気血を補いつつ、心肝の気鬱を解く治療を行いました。

1診目〜2診目:申脉
3診目〜4診目:大巨(右)
5診目から7診目:後谿
8診目から11診目:照海
以後、臨泣、合谷、百会、外関、滑肉門、足竅陰等を使用し、駆瘀血や風寒邪侵入に注意しながら治療。現在84診目。

【治療結果】
4診目で足の酷い痛みは殆ど消失します。また、よく眠れるようになるものの、時々パニックが出るため、配穴を後谿に変更。長年のパニックは28診目を最後に現在まで全く出なくなり、服薬無しでも発症しません。背部から股関節の痛みは、無理をすると痛むため月2回のペースで来院してくださっています。

【考察】
初診時から鍼灸を信頼してくださり(師匠にも治療を受けておられた事もあり)、非常に治療がし易い状況にありました。

長年のパニックに関しては、比較的早く薬も一切使用しなくても起こらなくなりました。ストレスは現在も継続して抱えておられますが、パニックには至りません。これは、心肝気鬱の実が中心であって、体全体の気血の弱りは酷くなかったからでしょう。
しかし、既往歴や年齢的にも腎虚等の下焦の弱りは酷いため、下焦を中心とした治療を継続することで、下肢の痛みも緩和されていくと思います。




2015年05月13日(水)

ヘパーデン結節 [運動器系疾患]

主訴:ヘパーデン結節 50代女性
初診日:平成25年9月下旬

ヘパーデン結節について
第1関節(DIP)の変形、突出、疼痛があり、X線写真で関節の隙間が狭くなったり、関節が壊れたり、骨棘(こつきょく)があれば、へバーデン結節と診断できます。
西洋医学では原因不明の疾患とされています。


【現病歴】
5年前〜右小指DIP関節に、痛み(ジンジン)腫れ・熱感・骨変形が出現。
1年前〜左小指DIP関節と示指DIP関節も上記同様に出現。
現在は、両小指DIP関節(右>左)が一番痛く、触れると痛いため、5ヶ月間仕事でピアノが弾けない状態に。他のDIP関節にも骨変形はあるが痛みなく、リウマチ反応なし。治療方法がない為、経過観察中。


増悪因子:朝・ピアノ発表会前(準備で忙しく、練習で指を酷使する為)

緩解因子:指を使わない・入浴・テーピングすると少しだけマシ。

【その他の症状】
◆小学高学年〜肩こり→頭痛から嘔吐あり、嘔吐後頭痛不変だが、疲れて眠ると治まる。1子目出産後〜ほぼ毎日頭痛出現。睡眠不足が現在も続いている。若い頃から昼寝が出来ない。

◆47歳頃〜更年期症状(ホットフラッシュ)目眩、左五十肩やギックリ腰、頚部の凝り感。

◆51歳頃〜毎日多夢(悩みの夢ばかり)、寝付き悪く眠剤使用するも、口渇と夜間尿で約4回目覚める。頭痛頻度UP。

【各種弁証】
八網・臓腑経絡弁証:裏(表証なし)・実(肝鬱気滞:肩こり、頭痛、便秘)・熱(肝鬱化火:主訴部位の熱感、口渇、口内炎、逆上せ、尿濃黄色)・虚(腎虚:夜間尿、寝汗、ホットフラッシュ、腰痛)

【治療方針】
元来、かなり几帳面の上、多忙で常に気が上昇し、頭痛や嘔吐を繰り返している所に、寝汗、ホットフラッシュ等々の更年期症状と共に、睡眠不足から、上下のバランスを益々崩し、腎と関わりの深い骨、それも手(上焦部位)に症状が出現したものと考えました。

骨の変形までおこしたものは難治ですが、更年期症状や頭痛嘔吐等の随伴症状を改善し、夜しっかり眠れるようになることが先ずは先決です。

【証】
腎虚≧肝鬱化火

【配穴と効果】
初診〜:申脉か照海、風寒が入れば外関に取穴。
31診目頃〜:百会を間に入れる。
41診目頃〜:百会+照海に取穴。
80診目頃〜:手の刺絡+照海に取穴。

【治療結果と考察】
頭痛による嘔吐は、鍼治療を開始してから殆んど無くなりました。30診目ごろから導入剤無しで眠れるようになりますが、仕事等のストレスがかかるとまた不眠になります。それでも、目が覚めても直ぐ眠れるようになってきました。夜中の酷い寝汗も無くなり、指は使用すると痛みますが、使えるようになり、今年の大きな発表会では周りが驚くほど、指が動いて成功されたようです。

この患者さんは、性格上、ゆっくり出来ず常に多忙さに追われているので、良くなっては崩しを繰り返しておられますが、根気良く現在も治療に通って下さっています。

時々ですがお昼寝もできるようになり、治療中も寝息が聞こえるようになってきました。心身がようやく緩んできた証拠です。今しっかり治療をされる事が大きな病気を防ぐ事になりますし、自分自身を客観的に見つめられるようにもなると思います。本当の心身安定です。




2013年02月12日(火)

右殿部痛 [運動器系疾患]

大阪市在住 男性 79歳
主訴:右殿部痛(+ふくらはぎ・足甲痺れと冷え・足裏浮腫み等)
初診日:平成24年8月下旬

(現病歴)
昨年のゴールデンウィーク明けに1週間ゴルフをした後、2日後から右殿部痛、ふくらはぎがジンジンし、足の甲が痺れて冷え、足裏が腫れぼったくなる。500メートル程歩くとこれらが出現する。5〜6分休み殿部を叩くと痛みはマシになる。
整形外科では、神経を痛めたことと、脊柱管狭窄症が原因ではないかと言われる。マッサージや牽引、電気治療を2ヶ月受けるがその直後のみ痛みはましになるがまた元に戻る。薬を服用しても変化は無し。入浴で温めたり、じっとしているとましになり、動くと痛みは増す。
現在治療中のお嫁さんの紹介にて来院される。

(既往歴)
48歳時:腸閉塞手術。
53歳時:胃悪性ポリープのため3分の2胃切除。術後も腸閉塞数回。
60歳頃:両耳鳴り。
65歳時:前立腺肥大。

(その他の情報)
飲料:冷飲を冬でも好むが潤す程度。
尿:尿勢・切れともに悪い、夜間尿3回。
寝汗:有り。
睡眠:入眠に30分かかる。

(特記すべき体表観察)
顔面診:心・肝・腎の部分が色抜けている。
舌診:紅舌、白二苔(白い苔が張り付いている)、やや舌に力なし。
脈診:1息4至、脈幅力ともまあまあ有り、両尺位弱。
原穴診:虚:左太淵・神門・外関・照海・申脉。
虚中の実:右太衝。右天井冷え。
腹診:左大巨、胃土、右肝之相火、右少腹急結。
背候診:左肺兪〜督兪虚中実・肝兪〜三焦兪まで実、左志室虚、右胃兪〜大腸兪まで実。17椎下周辺の黒ずみ。

(診断と治療)
証:腎虚・足太陽膀胱経の経気不利。

60歳頃より低音の両耳鳴りや、その後前立腺肥大が見つかり、現在尿勢・尿切れともに悪く夜間尿も3回に及ぶ。これは、東洋医学的にみれば腎の臓の機能が低下している事が原因として考えられます。
実際に体表を観察していくと、腎の臓のツボが非常に虚(弱い)しています。それが腎と表裏関係になる膀胱の腑にも影響を及ぼし、膀胱経絡上の気血の流れが悪くなり痛みや浮腫が起こったのではと考えました。

治療は、初めは大巨(右)等を使用し腎を補っていき、5診目ごろから外関と臨泣の2穴を使用していきました。
10回の治療で、痛みも緩和されゴルフにも行き楽しまれておられます。

(考察)
患者さんは、実年齢とはかなり違って本当に若々しく背筋もピンっとされ、様々な事にも挑戦なさっておられます。

私の師匠はよく年齢より若く見えることは非常に大事な事だと言われています。それは、その方の「神(しん)」を見ることに通じているからと考えます。古代から神の有る者は生命力が盛んだと言われている通りです。

神(生命力)を見るのは、姿、顔だけでなく舌、脈などにおいても同様です。この患者さんは全体的に神がしっかりしておられるので治りも速かったのでしょう。

半面、細かく探っていくと、動くと痛みが増すという事や、その他の所見から虚(弱り)も見られましたので虚、特に腎の虚を意識し治療をしていきました。

100歳までもどうかお元気で若い人たちに希望を与えていただきたい心から思います。

2012年07月23日(月)

膝痛 [運動器系疾患]

神戸市在住 63歳 女性
主訴:膝痛
初診日:平成24年5月初旬

(主訴について)
2ヶ月前から右の内膝痛が起こり腫れて重だるく曲がらなくなった。正座も不可。ホームを走った時、ぐねって立ってられなくなり整形へ行く。膝の水を27cc抜くも不変。2回のヒヤルロン酸注射するも不変。注射後右の大腿部が怠くなる。
歩くと膝が腫れてくる。ロキソニン薬を2回使用するが2〜3時間で効果は無くなるため、友人の紹介にて来院される。

(既往歴)
9歳ごろ小児喘息になるが、麻疹で鼻血が多量にでてから喘息が治る。働き出してから飲酒の翌日に身体全体に痒みの酷い湿疹が出るようになる。
結婚してからは油物をよく食しチョコが大好きで現在も多く食べてしまう。
30代の時、風邪薬を服用して急性肝炎になる。50代は母親の介護に疲れ一過性の脳梗塞に。現在の仕事場は一年中寒い所で気も使う。60代に回転性のめまいに襲われたことがある。

(その他の特記すべき問診)
・環境の変化で便秘する。
・目が乾燥してかすむ。
・運動後は身体がスッキリする。

(特記すべき体表観察)
・舌診:紅色、舌尖紅、中央部が乾燥して剥げている、右の舌辺の剥げ、力は入る。
・脈力:有力、幅有り。
・原穴診:左後溪穴、右太淵穴、右太衝穴、右丘墟穴反応有り。
・背候診:右厥陰兪・心兪、左胆兪〜胃兪、神道、脊柱、志室反応あり。
・腹診:心下、胃土、右肝相火反応有り。

(診断と治療方針)
麻疹で鼻血が多量にでてから喘息が治った事や、飲酒の翌日に身体全体に痒みの酷い湿疹が出る事、舌の先の赤さなどから身体に熱を篭らせている状態にある所、職場の寒さなどから肌表が閉じ熱が身体の内に篭っている状態と思われる。そこへチョコレートの過食やストレスなどで胃に負担をかけてしまい、それが脾経の経筋に影響し膝痛になったものと考えた。膝に水が溜まるのは膝が熱化しているため、その熱を冷まそうと水が集まっている姿なので、水を抜くのではなく炎症を抑える治療が必要と思われる。

治療方針として、初診時と2回目は後溪穴に置鍼。3診目から百会穴の置鍼と第2?兌穴からの刺絡を3診継続。その後百会穴に治療。


(効果判定)
1診目の治療にて楽になりよく眠れるようになる。4診目で痛みが10から5に減る。9診目で腫れが略引いてくる。その後旅行で歩きすぎたため、膝痛再発するも、治療度ごとに回復する。現在24診目。腫れも熱感も消失し改善される。

(考察)
初診時はかなりの腫れと熱感が膝にありましたが、どんどん改善されていきました。膝痛の原因を探っていくことが如何に重要な事でしょうか。

患者さんは様々な病気をされてますが、小さい頃、麻疹で鼻血を大量に出したことを機に喘息が改善されています。喘息にも様々な原因がありますが、この事は鼻血が身体の中の熱を取り除いたためと考えます。よって喘息時の痰は黄色で粘っていたのでは等々推測もできるのです。(東洋医学では、便、尿、汗、痰等の排泄物に色や臭いがあるものは熱と考えます)

膝も熱化していたため、その熱を冷ますために水が集まってきたのでしょう。ですから、その水をいくら抜いてもダメで、熱化の原因を叩かないと治らないのです。

また、患者さんは、とても鍼灸を信じて受けてくださっていた事も早い改善につながったのではと思います。まだ、今までの生活習慣による体質改善が必要ですし、正座も難しいようですので治療を継続してくださっています。

これからも益々お元気で充実の人生を楽しんで頂きたいと心から願っています。


2011年11月09日(水)

頚凝り、めまい、偏頭痛 [運動器系疾患]

神戸西区在住 43歳 女性
主訴:頚凝り、めまい、偏頭痛
初診日:平成23年8月下旬

(現病歴)
社会人になり運動不足になってから肩こりを感じ始めるようになる。
30歳頃、パソコン作業が増え更に肩こり悪化、偏頭痛もおこるようになる。
多忙な毎日で神経を使う日々が続いた去年の冬頃、頚が懲りすぎてめまい(フワフワした感じ)になる。その症状が一週間継続する。
その後、夏にも同症状が出現し、加えて息が吸いにくく炭酸水など飲んでスッキリさせていた。偏頭痛は、ストレス時や疲れたときや、生理前、排卵前、雨が降る前に、額あたりがズキズキ痛む。
今年の夏も同様の症状がおこり中々眠れない時があるため、紹介にて来院される。

(特記すべきその他の問診事項)
飲食:昼は外食、夜遅い食事が多い、油物で胃もたれするので野菜と魚中心の食事。間食は生理前のみ甘いものを欲する。
冷たい飲み物を好む。
二便:生理前に便秘するが普段は順調、尿は1日8回から10回。

(東洋医学負荷試験)
入浴時間:適温5分でスッキリ、長湯すると動悸がする。
運動後の主訴の変化:ゴルフ、ウォーキング、体操などをしスッキリするが主訴の変化は無し。

(主な体表観察)
舌診:紅色、舌先から舌辺にかけて紅点多数で剥けている、右に舌が傾いている、乾燥。
脈診:1息4至半、細・緊脈、両尺位弱、脈幅無し力有り。
原穴診:左)虚(太淵・神門・照海)実(衝陽・臨泣)
    右)虚(太白・陽池)実(後渓)
腹診:右肝之相火実、胃土


(診断と治療方針)

ストレス過多により、上焦(上部)に気が偏りそれを長期にわたって継続
したため発症したものと考える。特に偏頭痛は、ストレス時や雨の前など
肝気が上がりやすい状況下で発症し、運動しても緩和されないことからて
いることからも長期の気の偏りが考えられる。酷いときは、息が吸いにく
いことは一種の小さなパニックで肝が高ぶりすぎるとしばしば起こる現
象なので、肝気の高ぶりをおさえる治療方針とする。

(治療配穴と効果判定)

1診目から9診目まで:後渓(左右どちらか)10分〜25分の置鍼。

★5診目ごろから頚の凝りがかなりマシになり、偏頭痛の回数も減少して
くる。冷飲より温かいものを好むようになる。

(考察)
長年の頚肩こりや偏頭痛などが10回ほどの治療にてかなり良くなってきていることに鍼灸の効果を実感していただけたと思います。

しかし、年齢的に徐々に下半身の腎の臓などが弱ってきますので、神経ばかり使わずに、ゆっくり散歩するなど下半身を強化されると、肝気が簡単に上へ昇らなくなります。

40代50代で運動しているかどうかで、その後の健康状態や若さなど大きく差が出てきます。
一番働き盛りの年齢ですが、将来のために今を賢明に過ごされることを望みます。







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