症例

2016年11月14日(月)

眩暈 [神経内科]

65歳女性、平成28年3月中旬2年ぶりに来院。(前回主訴は右臀部から大腿外側部痛)

主訴:3日前の朝から回転性の眩暈で何度も嘔吐。(嘔吐後の眩暈不変)。食べると嘔吐のため食不振。頭を動かすと眩暈で嘔吐になるため3日間寝たきり状態だったが、かなりゆっくりなら歩けるようになりご主人の車で来院。
随伴症状は不眠(眠剤使用)、便秘、腰痛、舌腹ピリピリ、手足厥冷。

現状:船酔い様で頭に重いものが載っている感じ。頭を動かせず。

1ヶ月前から軽い眩暈有り内科の薬を服用。肩こり酷かった。(右>左)
2週間前に酷い風邪を引き、治った直後に孫を預かり、その後好きな裁縫に根を詰めていた。

(体表観察情報)
舌診:紅舌、舌尖紅緯、紅刺多数、両舌辺剥け、中焦から下焦に厚膩苔、
脈診:4至半弦脈、中位に緊脈。有力、幅やや有、実の穴トップ右内関、虚中実の穴(腕骨〜神門〜霊道、照海、申脈、臨泣全て左)、百会右熱。

【チャート図】

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(チャート図上をクリックしたら大きくなります)


(治療と効果)

1診目:申脈(左)25分:頭重感まし、手が温まり頭が軽くなる、弦脈緩む。舌潤に、舌尖赤みまし。

2診目:上向きに寝れるようになる。昨夜から嘔吐無、今朝少し食べれた、船酔
い感まし。横向きになると眩暈がしてしばらくするとましになる。
腹診:左脾募から天枢邪、臍周熱、右肝之相火、左大巨。脈幅力なし。
滑脈。両裏?兌の灸31壮の後、申脈(左)20分。

3診目:裏?兌灸9荘の後、後渓(右)30分。すっきりした顔で来院。食事
出来るようになる。排便有り。

4診目:臨泣(右)5番30分。起き上がって横になると眩暈。空腹感出てくる

5診目:臨泣(右)2番30分。完治。

(まとめ)
当初ひどい状態で来院されました。ベットに横になれなかった為、初診時は
座ったまま治療しました。

激しい嘔吐を伴う回転性のめまいは、東洋医学では「痰濁」という邪気が脾胃(胃腸)を襲った為に発症する場合が多いです。

単純に身体全体を考えてみても、上部に重心がかかり過ぎて、且つ、左右バランスが大きく崩れていれば、駒と同じく回転します。

その身体全体のバランスの崩れと、胃腸の弱りを意識して治療をしました。

舌の状況を見れば、かなり赤く(特に舌先)上部に熱が偏っているのは明らかでしたが、2診目からお灸を使用しました。これは特殊例です。(中途半端に熱に熱を加えると悪化する可能性が高いので要注意です)

しかし、中焦脾胃の湿邪を灸で乾かす意味と、強烈に上へ上った気を引き下げ、左右バランスも整える理由で裏?兌に調えの灸を施しました。

毎日5日間通院され、結果すっきり完治されました。

何かあった時に、それもこのように重症な症状の時に鍼を信じて来て下さる患者さんに心から感謝します。

2016年07月27日(水)

一過性意識障害 [神経内科]

昨年10月に「一過性の意識障害」が主訴で来院された30代女性の症例です。

【症状】
約1年前夏頃から1年の間に突然意識が無くなり外出先で倒れる事7回(数時間意識が戻らず)。加えて、月経前に帰宅直後、玄関先で意識を失う事が毎月のように起こり、月経中(特に一日目)は外出先で意識が無くなる。

【随伴症状】
・立ちくらみ、フワフワとした眩暈(地に足がついていない感じ)と動悸。 

・食欲減退、嘔気(嘔吐なし)

・後頚部の張りがひどく首の回旋不可(左右共)。

・便秘と軟便を繰り返し、排便後栄養が全部出る感じがして疲労感が増す。(以前は便秘傾向)

・往復40分の徒歩通勤で疲労感。ビタミン剤を服用してお昼動ける。

・無汗(入浴時、運動時も)。入浴後息切れ。

・寝つき1〜3時間かかる、多夢。

【増悪因子】
肩こり〜頭痛時、疲れすぎた時(月経前と月経後1週間に疲労感増悪)

【緩解因子】
肩こりに関して:1〜2時間横になる、頭頂部の指圧。

【病因病理】
この患者さんは、様々なストレスがあっても中々発散することが苦手で内にこもってしまうタイプです。発散できないと、(肝)気の巡りが停滞してしまいます。

彼女の場合は、慢性肩こりが悪化してから発症していますので、肝気の停滞が体の上部に起こりやすい傾向にあります。地に足がついてないと感じるのもこのためです。

更に、悶々とした悩みが継続すると、脾胃に影響がでます。それは、食欲不振や便秘や軟便からも分かります。

脾胃は気血生化の源と言われているように、脾胃の弱りが継続すると栄養不良になり気血が不足し、貧血症状等が現れます。月経中の動悸や疲労感等からもわかります。

そして、血が不足すると、精神が不安定になったり、不眠になり易いです。不眠になると血を養えず更に不安感が増すという悪循環に陥ります。

月経中に発症するのは血虚(不足)のためで、月経前に発症しているのは、子宮に血が集まって髄海(脳)に血が不足するためと考えました。脈や舌、その他ツボにもそれらの反応が表われていました。

よって、証は、肝気上逆<心血虚証による意識障害として治療していきました。

【治療と経過】
1診目は打診を使用して、上に上がった気を下す治療をしました。2診目以降は、後渓を中心に、血を補いつつ上の気を下げ精神を安定するように治療していきました。
時々、配穴を三陰交に変えたり、脾兪を補ったりしていきました。

4診目ごろからよく眠れるようになってきました。強いストレスがかかると不眠になり、胃痛(空腹時痛は胃酸過多傾向→胃気逆)が生じます。

現在まで週1回の鍼治療を始めて2か月後の年末と春3月の2回倒れましたが、春は月経前でしたので、月経前には詰めて治療するようにすると、倒れなくなりました。

現在治療継続中です。経過は良好で多少のストレスがかかっても月経時でも倒れなくなりました。

【まとめ】
一過性の意識障害を東洋医学では「暈厥(うんけつ)」と言います。
『症状による中医診断と治療』では、「突然に意識が消失して四肢(手足)が冷え、一定時間の後に覚醒して、失語・顔面神経麻痺・半身不随などの後遺症を伴わないこと」とあります。

このような意識障害の症状には、鍼治療の効果大です。ただ、弁証分型も上記の著には6つ程挙げられており、多面的観察をしっかりして総合的に判断する必要があります。

また、その時点での証だけでなく、病因病理を把握して病の流れをつかむことが重要です。

実際この患者さんも、初めは虚>実を中心に治療していきましたが、治療過程で右内関というツボに熱を持って張ってきたり(沈んでいたツボが浮いてきたと考えます)、細脈が弦脈に変化したりしてきましたので、

治療戦略を変える(実>虚)必要があります。よって百会や督脈等実側のツボを時々使用しています。

身体からしっかり治療していけば多少のストレスにも強い心神になり根治できると考えます。









2015年11月21日(土)

動悸 [神経内科]

【主訴】動悸
(その他の随伴症状)過呼吸、手足のしびれ、めまい。

【初診】平成27年7月下旬、39歳 女性。

【現病歴】30代前半、第一子出産直後に1回目の発作、突然の動悸、手足のしびれ、揺れる様なめまいが現れる。出産前の5か月間大きなストレスがあり睡眠不足が続いていた。抗不安薬で上記の発作症状は消え、その後8年間発作は出現しなかったものの、
第二子、第三子を出産し、育児、家事、仕事で多忙な中、2回目のひどい発作が出現する。動悸、過呼吸に加え、頭痛も出現し救急搬送される。ここから毎晩寝入りばなに動悸がして不安と緊張が増すようになる。

【増悪因子】
寝入りばな、乗り物等閉塞された環境、生理前、疲労時。
【緩解因子】
運動、集中時、食事量減らす。

【その他の問診】
・小さい頃よく行事前発熱していた。
・胃もたれ。
・下肢のむくみ。
・第一子出産後から生理痛が消失。
・妊娠時(三人共)貧血診断受ける。
・月経後身体は楽になる。(主訴に変化なし)

【弁証】心肝気鬱>血虚証。

【各種弁証】
八綱弁証:
裏(表証所見なし)
虚(血虚)
実(心肝気鬱)

臓腑弁証
(心肝気鬱)
肝気鬱:イライラ、月経後身体楽になる、喉が詰まる、(体表所見)顔面肝色抜け、両舌辺剥げ、左関上枯弦脈、太衝・肝兪の反応)
心気鬱(閉塞された所や緊張で呼吸困難、動悸、不安感(体表所見)顔面心部位色抜け、舌尖紅刺、両心兪反応、後谿の反応、心下〜脾募の邪)

気血弁証
血虚:貧血、爪が割れ易い、月経過少、舌質色あせ、光が眩しい、心兪、脾兪、太衝等の虚の反応等。

正邪弁証
夜になると疲れてくる事や、脈幅も無い事からも正気の虚はあるものの、入浴後、生理後、運動後等に身体がすっきりする、動悸、過呼吸は運動後に変化しない事等から邪実が中心と考えます。ただ、血虚の所見が顕著に見られることや、寝入りばなに動悸が打ち、不安感が増すことから、バックには心血不足があり、血不足により気鬱が更に増すと考えました。(陰陽に分けると、気は陽で血は陰になり、血が減ると相対的に気が勝ち気血の陰陽バランスが乱れます。)
よって、心血を補いつつ気鬱を緩解するように治療をしていくことにしました。


【病院病理】
患者さんは、三人小さいお子さんを育てながら仕事もこなすという超ハードな生活を送られていました。その上 第一子出産前に寝不足が続き、出産後に身内を亡くされるという大きなストレスがありました。肝鬱気滞から、寝不足と心神に大きなショックを与えたことから心肝気鬱となり、動悸、不安感等の症状が発症したものと考えました。


【治療方針】
心肝解鬱
1診目〜15診目まで:後谿穴 (2診目のみ申脈)

【治療結果】
1診目後から動悸は10→1〜2に激減。3診目には動悸が気にならなくなり、電車の中などの緊張時も寝入りばなにも動悸は起こらなくなる。胃もたれや足の浮腫みも余程不摂生をしない限り解消された。

【考察】
現在も治療継続中ですが短期間でお元気になられました。この後渓のツボの効能がこの患者さんの証(今の時点での身体の状態を東洋医学的に一言で表現したもの)にピタリと一致したからだと思います。(心肝気鬱証<血虚証)

このツボは北辰会代表の藤本蓮風氏が半世紀にわたる臨床を積み重ねる中で、見出された重要穴です。同じ後渓でもそのバリエーションは様々ですので、この証のみに使用するツボではありません。(藤本蓮風著『経穴解説』参照)
またこの動悸は、緊張状態が続いて発症したものです。その緊張状態が少しの緩みもなくマックスに達した時、過呼吸を伴い救急搬送になっています。

更に、寝入りばなの動悸は、ホッとして意識する事なく気が緩んだ状態の時の発症と考えました。それは、この動悸は反対に気が張っていると、ある程度は抑えられるという事でもあります。実際そのようでした。

そこで、血虚の度合いはさほど酷くなく、抑え込んでいる気鬱のレベルが酷いと考えました。ただ、この患者さんの場合は、気鬱を解く事を中心に瀉法(気鬱を除くために邪をたたく事)をするより、少し血を補いつつ、心肝の気鬱も同時に緩解するという方法がいいと思い後渓を使用しました。これは功を奏したと言えます。

鍼の効果はこのように本当にシャープです。弁証を間違えず患者さんに安心感を持ってもらってこそ効果も倍増すると日々の臨床の中で改めて感じた症例です。







2013年06月08日(土)

亜昏迷様状態(頭がぼ〜っとする)・頭痛 [神経内科]

西宮市在住 30歳 女性
主訴:亜昏迷様状態(頭がぼ〜っとする)・頭痛
初診日:平成25年2月中旬

(既往歴〜現病歴)
幼児期から肩こりがあり偏頭痛(眉間)から嘔吐することがよくあった。10歳の頃、急性腎炎発症。中学になり生理が始まると、生理前に必ず過食になり頭痛(こめかみと目の奥)が起こる。生理後、過食は治まり、頭痛もやや楽になる。
風邪も引きやすく、風邪を引くと扁桃腺炎、高熱、中耳炎になっていた。
職場ではパソコン作業が殆どで、肩こりや冷えのぼせが酷くなり、腰もだるくなるが、ヨガやダイビングなど運動をしてストレスを発散していた。

昨年、秋、ダイビングに行って軽い減圧症になり関節痛やめまい、耳鳴り等が出現。特に、この後から、頭に酸素が届いていない感じで、頭に膜が張ってるようで、思考が回らなく頭がぼ〜っとするようになる。

ヨガにいっても身体はスッキリするものの、頭はぼ〜っとして頭と身体が分離しているように感じる。それは、蒸し暑さや飲酒、油物の摂取過剰の時に悪化し、寒い時や休日はマシになる。この症状は病院でも治らず、ホームページにて来院される。

(その他の問診事項)
・今まで入浴で身体はスッキリしていたのが主訴発症後スッキリ感はなくなる。
発汗後、運動後疲れるようになる。
・月経2〜3日前から2日目ごろまで経痛有り。主訴に変化は無し。
・よく胃が痛くなる。

(主な体表観察情報)
顔面診:青白色で非常に肌理が細かく光沢あり、肝・腎色抜け。
舌診:老舌(しっかり出せる)、紅舌 若干色褪せ、白〜黄膩苔(中焦から下焦)、両舌辺剥けと紅点多数、舌腹紅色。
脈診:1息4至、枯弦脈、幅脈力共に有り。
原穴診:全体的に左が虚でトップは太溪と照海、神門。右は実が多く合谷、太衝の順。
背候診:巨闕兪と神道の1行、2行線左きつい実でその反対が虚、右の肝兪から胃兪実。右の腎兪から志室の繋がった虚。
腹診:心下虚、左脾募実、右肝之相火実、左天枢虚。

(診断治療と考察)
幼児期からの嘔吐や偏頭痛、また生理時に頭痛になることなど、全て上部に症状が現れています。その上、会社でのパソコン作業で更に気が上に上がっている状態です。
元々遺伝的にも腎の蔵が弱いこともあわせて下半身が不安定になり、上下のバランスが崩れていたと思います。上下が崩れれば、左右にも影響がでて全体のバランスが乱れていきます。

体表観察と照らし合わせても、左右、上下のバランスが崩れている事が分かります。
よって、左右を整えながら上下も調える治療方法を意識しました。

初めは、足の照海で下部を補いながら上下左右を整え、次に手の後溪を使い、上部を中心に上下左右を調節していきました。これで、胃痛が良くなり気分も楽になってきました。

しかし、12診治療をしても頭のぼ〜っとした感じがとれず、偏頭痛が出てきたため、鍼を刺さない打診治療に切り替えました。
すると、たまに出ていた偏頭痛もなくなり、頭がぼ〜っとする感じもかなりマシになってきました。ご本人も、「あのコンコンは何ですか?すごい・・・」と言われるほどです。

現在、22診目です。仕事が多忙な時など頭が痛くなる事もありますが、かなり回復が速くなり打鍼の効果を実感しています。上下左右が大きくバランスが崩れているとき、かつ、実もあるものの虚にウエートががより傾いている時、更に、精神的な疲労度合いが大きい時などを考えると打鍼の方が効果があると思います。

鍼灸治療と共に、好きな運動をして、上手に発散しながら日々のストレスを悠々と乗り越えていっていただきたいです。



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